「お前との婚約は破棄とする」婚約者からそう告げられたのは平凡な夏の日でした。
「お前との婚約は破棄とする」
婚約者からそう告げられたのは平凡な夏の日だった。
「ていうのもさ、お前と生きても絶対面白くないだろなーって思ったからなんだ。一度きりの人生、楽しく過ごしたいのが普通だろ? その時にお前が妻でいいのかなーってな。ま、そういうことだから」
彼は極めて自己中心的な理由で婚約を一方的に破棄した。
――もう嫌だわ。
どうしてこんな目に遭わなくてはならないの。
あまりにも理不尽だ。
こんなことをされては何もかもが嫌になってしまう。
だから私はその足で森の魔法使いのところへ向かった。
そして。
「私を鳥にしてください」
そう頼んだ。
お金ならある、一応そう言ってみたけれど、彼は「お金はいいよ、そのくらいのことならお安いご用さ」と言って私を白い鳥に変えてくれた。
翼を得た私はもう何にも縛られない。
人にも。
環境にも。
こうして私は鳥として生きることを選んだのだった。
……ちなみに元婚約者の彼はというと、後に別の女性と婚約するも何回も浮気されたために関係は壊れまた彼の精神もそれによって破壊されきってしまったそうだ。
彼は今、酷い無気力状態らしい。
一度きりの人生、楽しく過ごしたい――あの時彼はそう言ったけれど、その願いは叶いそうにない。
でも自業自得ね。
だって手にしていたものを自ら捨てた結果なのだから。
◆終わり◆




