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裏切ったあなたに、さよならを告げるわ。~あの夜は遠い過去に消えてゆく~
どうしてだろう。
わたしはもうあなたがいなくても寂しくも悲しくもない。
かつて婚約していたわたしたちは、確かに、互いを想い合っていたはずだった。
でもあなたは裏切ったわね。
あの夜。
わたしではない女性をその瞳は見つめていた。
抱き合って。
唇を重ねて。
そうやってあなたはわたしを裏切ると同時に傷つけた。
だからさよならしたの。
……当然でしょう?
あんなことをされて、あんな姿を見せられて、それでもあなたを愛せると思う?
もしそんな人がいるのだとしたら馬鹿ね。きっとそう。少なくともわたしにはそうとしか思えない。あるいは呪われているか洗脳されているかよ。そのくらいの大問題だったの、あの一件は。
けれどももうどうでもいいわ。
わたしはあなたに縛られ続ける気なんてないのだもの。
だからすべてを過去にする。
そうやって前を見つめる。
でなければわたしは幸せにはなれないのだもの。
だからね?
はっきり言うわ。
――さよなら、あなた。
◆終わり◆




