その日、婚約者とお出掛けする約束だったのに、彼は来ませんでした。
その日はよく晴れた日だった。
婚約者オーレンとお出掛けする約束だったのに、待ち合わせ場所に彼は来なくて、仕方がないから帰宅することにしたのだが――その途中で、見知らぬ女性とキスをする彼の姿を目撃してしまう。
「オーレン……何をして……」
「げっ」
声をかけたら、彼は気まずそうな顔をした。
なぜそんなことをしているの?
なぜそんな馬鹿げたことができるの?
まったくもって理解できない。
「うげげ、お前が通るなんて」
「何をしているのか説明してください」
すると彼は。
「しーらんぺっ」
そんなことを言って走って逃げる。
――が、交差点のところで馬車とぶつかり、撥ねられた。
そうしてオーレンはこの世を去った。
「えええー……」
私はそれだけしか発することができなかった。
なんにせよオーレンとは終わりだ。
なんせ彼はもうこの世にはいないのだから。
こんなお別れになるとは思っていなかったけれど……。
◆
――数年後。
「今日の朝食はエビフライエッグよ!」
「え、本当に!?」
「そうなの。美味しそうでしょう? 早く目が覚めたから作ってみたの」
「キター!!」
私はあの後金持ちの家の出の青年ルリーフと結婚した。
彼はちょっぴり子どもっぽいところのある人。
でも悪人ではない。
むしろ逆。
善人だと個人的にはそう思う。
無邪気さにいつも魅了されている。一緒にいると楽しいし。
◆終わり◆




