現在の夫である彼と出会えたことは私の人生において最も幸運なことだったと思います。なので今でも感謝しています。
「おはよう、エリー」
「えっ、もう起きたの!? おはよう。今日はまた一段と早いわね」
私は今、夫婦で、一つの屋根の下に住んで暮らしている。
夫は資産家の息子で善良かつ紳士的な人物だ。
名はオーレンという。
「うん目が覚めちゃって」
「そっか」
彼と出会うまで、私の人生には災難が多くあった。けれども、たくさんの災難を越えて、彼に巡り会うことができた。そして、彼と出会ってからはもう災難には出会わなかった。彼と共に歩んできた日々、それはとてもあたたかで幸福な優しいものだった。そうしてやがて彼と結ばれ、今日に至っている。
「エリーこそ早起きだね」
「まぁそうね。何となく」
かつて私はオーレンではない男性と婚約していた。
しかしその関係は悲しい終わりを迎える。
というのも、彼が裏で浮気をしていたことで揉め事になり、その結果理不尽に一方的に婚約破棄宣言をされてしまったのだ。
しかも婚約破棄宣言をするついでに彼は暴言を多数吐いてきて。
それによって私の心は破壊された。
気にしても仕方がないと思いながらも流しておくほどの能力もなかった私は病んでしまった。
「あ、ちょっと待っていて。飲み物持ってくるわ。フルーツジュースでもいいかしら」
「え、いいよそんなの。迷惑だろうし」
「いいの! 気にしないで! あと、迷惑なんかじゃないないわ」
「そう? ありがとう。感謝するよ」
両親や友人が支えてくれて何とか生き延びられたけれど――あの時周りに誰もいなかったとしたら私はきっと死を選んでいたことだろう。
あの頃は自分に価値がないように感じていた。
生きていたら迷惑がかかる。
こんな人間はさっさと消えるべき。
……そんな風に思ってしまっていた。
「はい、どうぞ」
「わぁっ! これ! すっごく美味しそうだね!?」
「上手く混ぜられたわ」
「うわぁ、早く飲みたいなぁ」
「飲んで飲んで」
「ありがとうエリー、本当に嬉しいよ。じゃあいただきます」
でも周囲に支えられて徐々に回復。
そしてちょうどその頃にオーレンと知り合いになって。
そこからは急速に元気になっていった。
オーレンと出会えたこと、それが何よりもの薬だったと今振り返ると思えてくる。
「美! 味!」
「口に合ったなら良かったわ」
オーレンに出会えて良かった。
それ本当に強く思う。
出会いからかなりの時が流れた今でも彼との出会いには感謝することばかりだ。
「うんうん! めちゃくちゃ美味しいよこれ! 美味の極みだよ!」
「……あとでちょっと飲んでみよ」
「いやいや、後でと言わず、今飲んでみようよ!」
「えっと、ちょっと……テンション高くない?」
「美味しいから興奮してるっ」
「えええー……」
ちなみにかつて私を傷つけた元婚約者の彼はというと、婚約破棄後浮気相手だった女性と交際するもまた別の女性と浮気したそうで激怒した交際相手の女性が雇った暗殺者に夜道で襲われて殺められてしまったそうだ。
結局、彼は、自分の悪しき行動のために命を落とすこととなったのである。
でも自業自得。
だから可哀想とは思わない。
……そう、欠片ほども。
他人の心を弄ぶ罪を重ねていた。そのために落命した。でもそれはある意味この世界の理の通りであろう。なんせ彼は何度も他人の心を傷つけたのだ。他者を傷つけておいて自分だけが幸せに好きなように暮らせるなんて、そんなことがあるわけもない。罪を重ねればいつかは報いを受ける、それは当然のことだしそうであるべきだろう。
◆終わり◆




