婚約者に暴言を吐くなんて酷い人ですね。そんなに私を見下したいですか? 器の小ささが出てしまっていますよ。
婚約してすぐから、婚約者である彼ローゼンガーは心なかった。
「お前なんてなぁ、俺が婚約しなかったらぜってぇ余りもんの行き遅れになってたぜ?」
婚約したその日からそんなことを言い始め。
「お前みたいなん相手できるのは俺くらいしかいねぇだろーな。はは。なんせ魅力ねーもんな」
会うたびにそんなことを平然と言ってきて。
「俺に感謝しろよ? 俺のおかげでお前は結婚できるんだからな。だから、さ。機嫌とれよ、ちゃーんと。な? 感謝と奉仕心を忘れんな。分かるか? 俺が仕方なく拾ってやったんだからなぁ。お前が行き遅れにならずに済んだのは俺の心が広かったからなんだからな? そこを忘れんなよ」
さらには徹底的に見下すような言葉を並べてきていた。
彼には無礼という発想がないのか?
あるいはいくら失礼なことを言っても構わない存在だと私のことを思っているのか?
……恐らく後者だろうな、なんとなく想像がつく。
ローゼンガーは私を下に見ている。それはこれまでの言動からも明らかだ。とすれば、彼がどこまでも失礼な言動を繰り返してくるのは、私を下に見ているからというのが答えなのだろう。
そんなローゼンガーだったが――ある夏の日に突然死亡した。
何でも、朝は元気だったそうなのだが、正午ごろ急に倒れ落命したのだそうだ。
……あまりにも呆気ない最期であった。
人の運命とは分からないものだ。
あれだけ威張り散らしていた彼が死に、あれほど馬鹿にされていた私が今も生きているのだから。
誰が長く生き延びるかなんて分からないものだ。
改めてそう感じた。
もっとも、それが運命というもので、そここそが人間には決して操作できない領域なのだろう。
だからこそ、誰が長生きするかなんて誰にも分からない。
ちなみに私はその後親の知り合いが紹介してくれた男性と結婚し穏やかで幸せな家庭を築くことができた。
◆終わり◆




