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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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婚約者が自室に女を連れ込んでいちゃついている、だとッ……!? ~意味不明ですが取り敢えず関係を続けてゆくのは無理そうですね~

 婚約者である彼アーベンハイドが他の女と愛し合っているところを目にしてしまったのは、ある夏の日であった。


 その日私はちょっとした用事で彼の家へ行った。彼に話すことがあったのだ。もちろん浮気を疑っていたわけではない。本当に、純粋に、用事があったから訪問しただけだったのだ。


 ――けれどそこで目にしたのは。


「アーベンったらぁ~、大胆過ぎるぅ~」

「いいだろ? 俺のこと好きなんだろ?」


 アーベンハイドの自室にて薄着で四肢を絡め合うアーベンハイドと見知らぬロングヘアの女性。


「まぁそうだけどぉ~……」

「なら愛させてくれよ」

「んもぉひどぉ~い」

「好きなら愛し合えるはずだ」


 二人の艶やかな姿を目撃した時、私はただただ衝撃を受けた。


 まるで雷が落ちたかのように。

 一瞬にして視界が白く染まる。


 ……それでも何とか自分を立て直して。


 ここで固まっていてはいけない。

 こういう時は落ち着いてするべきことをするべき。


 そう自分に言い聞かせて、証拠を確保するべく写真を撮った。


 ……幸い二人は写真を撮られていることには気づいていない。


「まぁそうだけどぉ、もっとぉ、優しくしてほしいのぉ」

「何言うんだよ」

「アーベンもあたしのこと好きなんでしょお?」

「もっと愉しませてくれ」

「ええ~、もぉ、アーベンったら困ったちゃん~」


 そして一旦帰宅する。

 あんな風にいちゃつく二人の前へ出て冷静ではいられそうになかったからである。


 その後私は両親にこのことを報告。

 そうして親からアーベンハイド側へアーベンハイドの問題行動の件について伝えてもらった。

 また、私が彼との関係を終わらせたいと考えていることも伝えてもらう。

 自分で言えないのも問題かと思ったのだが、両親と話し合った結果その方が良いという話になって、婚約破棄についても親から伝えてもらうという形をとることとしたのである。


 話が向こうへ届いてからはアーベンハイドから何度も連絡があって、そのたびに「勘違いだ!」とか「おかしなこと言うな!」とか色々言われてしまったけれど、私の心が変わることはなかった。


 だって彼はいちゃついていたのだ、堂々と自室に女を呼んで。


 そんな人が何を言ってももう信じられはしない。


 当たり前だろう?

 どこに信じられる理由があるというのか?


 彼の信用度などとうに地に堕ちたのだ。


 ……もはや彼を信じる理由がない。


 私は様々な面で両親に援護してもらいつつ彼との婚約を破棄した。



 ◆



 婚約破棄後数週間が経ったある日、アーベンハイドは私の家へ押しかけてきて、奇声に近いような暴言を何度も吐いてきた――その際驚いた隣人が治安維持組織へ通報してくれて、その結果、アーベンハイドは拘束された。


 ――そしてその後アーベンハイドが世に出てくることはなかった。


 アーベンハイドは牢屋に入れられてからもかなりやんちゃだったようだ。


 とにかく言うことを聞かない。

 ことあるごとに見張り係に暴言を吐いたり殴ろうとしたりする。


 そんな感じだったようで、アーベンハイドは処刑されることとなった。


 本来他者に暴言を吐いたり他者の家へ押しかけ騒いだくらいでは処刑にはならないものだ。牢屋送りになったとしてもしかるべき償いをすれば数年で世に出ることができるというもの。しかし犯罪者として捕らえられている間に指示にも従わず好き放題していれば話はまた変わってくるものだ。それでも処刑されるというのは珍しい事例だけれど。急遽処刑という話になったということは、牢内での態度がよほど悪かったのだろう。


 ……ま、すべて自業自得か。



 ◆



 ――数年後。


「今日はよく晴れたねぇ」

「ええそうね」


 私はもうすぐ結婚する。

 結婚する予定の相手は資産家の息子で自身も複数の事業を立ち上げている人物だ。


「忙しかったんじゃない? 今日大丈夫だった?」

「大丈夫だよぉ」

「本当に?」

「うん。忙しい日も多いけど、僕みたいな状況だとわりと自由に休めるから。会いたかったからさ、会いにきたんだ」


 彼は仕事面では優秀だが人柄は比較的ゆったりおっとりした感じ。


「ありがとう」

「それを言うべきなのは僕のほうだよ」

「じゃ、行きましょっか」

「うん! 今日はどんな発見があるか、楽しみだね!」


 彼と共に歩む未来はきっと明るい。

 少なくとも今は真っ直ぐにそう信じられている。


 前を向いて、希望を見据えて、突き進む。


 それが多くの幸運をこの身にもたらしてくれることだろう。



◆終わり◆

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