婚約破棄されましたので……舞います! ~そう、これは、呪いの舞いです~
「エリーミネラ、貴様との婚約は……破棄とするッ!!」
婚約者である彼リィーットはある日突然そんな風に宣言してきた。
「え……っと、その、それは本気で仰っていますか?」
「ああ」
「ええーっ……」
「当たり前だろ。婚約破棄するんだ、婚約破棄」
こうして私は理不尽に捨てられた。
「では……舞いますね」
私にとってリィーットはもう大切な人ではなくなった。
だからこそこの舞いを解放できる。
「てぃったらたったてぃったらたったてぃってらとったらてぃってらとったらとったらとったらてぃってらたったてぃってらたったてっとらてったらてぃってらたったてぃってらたったてぃったらてぃたらたらったらてぃとぅらったらてぃったらてぃったらてぃったらてぃとらてぃらっとれてぃとれられらとぅららてぃらっとれ」
私は身体を動かす。
身と心を一つにして。
翼を得たかのように、天の加護を受けているかのように、どこまでも自由に。
するとリィーットは突然右足の指の痛みを訴え、泡を噴き出して倒れた。
「さようなら、リィーットさん」
天罰だと思ってほしい。あんな風に、身勝手に、婚約破棄なんて言ったからだ。身勝手なことをしたから。そもそもの原因を作り出したのは外の誰でもない彼であり、決して私ではない。私はあくまでやられたことに対して仕返しをしただけのこと。
◆
冬が来た。
穏やかな、どこか寂しげな、そんな凍りつくような季節が。
私は先日一人の商人の青年と結婚した。
今は商人である彼に付き添って各地を転々としながら暮らしている。
環境がたびたび変わる生活というのは時に苦労もあるもの、だが、それ以上の幸福があるからこそ彼と共に歩める。
そう、私はもう過去は振り返らないのだ。
ただ前へ進むのみ。
◆終わり◆




