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180.いざ会場へ

 朝焼けが工房の窓を淡く染める頃、俺たちの蒸気飛行機はついに安定して浮かび上がることに成功した。ヴィグナの魔法のサポートもあり、何度も失敗を繰り返した末の快挙だ。ボーマンは嬉しさのあまり、ひげをぶんぶん振り回しているし、ガラテアも満面の笑みで俺たちを見ていた。


「よし、これなら大会に出せるな!」


 俺がそう言うと、ヴィグナは少し照れたように目をそらしつつも、「……まあ、悪くない出来ね」と小さく呟き。ボーマンは「これぞわしらの合作じゃな!」と胸を張り、ガラテアが嬉しそうにニコニコと笑っている。



「じゃあ、そろそろ発明大会のエントリーに行こうか」



 俺たちが機体を丁寧に箱へと収めると、書類一式をガラテアに手渡した。彼女は手際よく確認しながら微笑む。



「マスター、必要な書類はすべて揃っています。あとは会場で提出するだけですね」

「よし、みんな行くぞ!」



 俺たちは工房を後にし、発明大会の会場へと向かった。ちなみに蒸気飛行機の入った箱はガラテアが持ち上げていった。

 さすがはロボットである。



 会場はすでに多くの発明家や見物人で賑わっていた。各地から集まった発明品が所狭しと並び、奇抜な機械や魔法道具が目を引く。俺たちは受付のテントに向かい、列に並ぶ。


「おお、見るんじゃグレイス。あれは魔力で動く自転車かのう」

「向こうのは……? な、自動で浮くホウキだと? 人は乗れないようだがかっこいいな!!」


 ボーマンにつられてみると、アスガルドでは見られない発明品の数々に思わず興奮気味に周囲を見渡してしまう。ヴィグナもあきれた表情でガラテアがニコニコとしているが気にはしていられなかった。

 そして、やがて俺たちの番が来る。受付の係員がにこやかに声をかけてきた。


「ご参加ありがとうございます。チーム名と発明品名をお願いします」

「えーと……チーム名は『アスガルド・ワークス』、発明品は『蒸気小型飛行機』です」

「飛行機……ですか?」



 係員は聞きなれない言葉に眉をひそめていたが手際よく書類に目を通し、機体の確認を求めてきた。俺は箱を開け、慎重に機体を取り出す。



「これは……かなり大きいものですが本当に飛ぶのですか?」

「はい、魔法と蒸気の力で浮上します。実演も可能です」


 係員は感心したようにうなずき、エントリー完了の証明書を手渡してくれた。


「エントリー完了です。午後の審査までに準備をお願いします。実演の順番は後ほどお知らせしますので、会場内でお待ちください」

「ありがとうございます!」



 受付を終えた俺たちは、控室の片隅に陣取った。周囲には他の発明家たちが自分の作品を調整したり、最終確認をしたりしている。ボーマンは機体のネジを再確認し、ヴィグナは魔力の残量をチェックしている。ガラテアは俺の隣で、静かに応援の言葉をかけてくれた。


「マスター、ここまで来たのです。きっと大丈夫ですよ」

「ありがとう、ガラテア。……みんな、本当にありがとう」


 俺は深呼吸をして、会場のざわめきを胸に刻む。いよいよ、俺たちの発明が世に問われる時が来たのだ。


「絶対、優勝してやろうぜ!」

「うむ!」

「……ま、まあ、頑張りなさいよ」

「ふふ、みなさんらしくて素敵です」



 エントリーを終え、控室で機体の最終調整をしていると、ふいに周囲がざわめいた。振り向くと、洗練された衣装に身を包み、堂々と歩く女性――ガラテア(人)が現れた。彼女の後ろには、商会の部下たちが従っている。


「久しぶりね、グレイス。あなたたちの発明品とやらも一応一応できたみたいね」


 ガラテア(人)は、俺たちの前で足を止め、意味ありげな笑みを浮かべる。その瞳は、どこか楽しげで、同時に挑戦的だった。


「おや、これはこれは。商業連合のご令嬢自らご挨拶とは、光栄の極みだな」


 俺が軽口を返すと、ガラテア(人)は肩をすくめてみせる。


「まあ、あなたがどんな“おもちゃ”を持ち込むのか、気になって仕方なかったのよ。アスガルドのドワーフまで引っ張り出して、大層なチームじゃない」


 ボーマンがむっとした顔で腕を組むが、ガラテア(人)は気にも留めず、俺たちの機体を覗き込む。


「……ふうん、この鉄の塊が発明品なの? 面白そうじゃない。これがあなたたちの切り札?」

「まあな。そっちはどうなんだ? 随分と自信ありげな顔をしているが」


 ガラテア(人)は意味深に微笑み、控えめな声で囁く。


「うちの発明品は、今までの常識を覆すわよ。あなたたちがどれだけ頑張っても、今回は勝たせてもらうから」


 その目は真剣そのもので、商人としての誇りと闘志が滲んでいる。


「ふふ、でも……あなたたちの挑戦、楽しみにしているわ。せいぜい、審査員たちを驚かせてみなさい」


 そう言い残し、ガラテア(人)はくるりと踵を返し、部下たちを従えて去っていった。その背中は、まさに女商人としての風格と自信に満ちていた。


「……やっぱり、あの女は感じ悪いわね。でも、すごい自信だったわ。まるで負けることはないとばかりに……」


 ヴィグナが小さく呟き、ガラテア(妖精)は「でも、マスターならきっと大丈夫です」と微笑んでくれる。


 俺は改めて気を引き締め、機体を見つめた。ガラテア(人)に勝つ――そのためにも、絶対に成功させてやる。

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― 新着の感想 ―
思ったより多種多様な発明品が集まるコンテストだった。 はたして優勝できるのか! そして各々の発明者と顔を売る機会でもあるから目ぼしい人材とりこんどきたいなぁ…まあ、商業連合とかも似たような事考えてそ…
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