176.ガラテアの策略
商業連合の倉庫にて俺はガラテア(人)と二人っきりで対峙していた。エミリオ? あいつは睨まれたらすぐに出ていったよ……
頼りにならない奴である。
「私たち商業連合の発明品に興味をもっていただいて幸いよ。何か気になったことがあったら遠慮なく聞いてちょうだいな」
余裕に満ちた笑みを浮かべながらガラテア(人)は使用人に持ってこさせていたワインを開けて飲み始めると、こちらにも注いできやがった。
酒で口を軽くしようという作戦だろうか?
「あなたとエミリオがここで話しているのをたまたま見ていた部下が言っていたの。随分と熱心に質問をしていたようだって。あいつに聞くよりも私の方が詳しいわよ」
「全てお前の手の上だったってことか……」
「何のことかしらね?」
ガラテア(人)の言葉に観念した俺は注いでもらったワインに口をつけて、そのまま疑問を口にする。
「お前が作っているのはおもちゃばかりだな……確かにアスガルドの技術に比べれば劣るかもしれないが、ここの炉を使えば他のものだって色々と作れるだろう?」
「そんなのは簡単よ。うちの領主様は平和主義者でね、ああいうものの方が受けがいから作っているだけよ」
そう言いながらにやにやと笑って、リバーシ―の駒をいじるガラテア(人)。ならば俺も今回はおもちゃを作ればいいのだろうか?
罠な気がする。倉庫には何か巨大なものを作ろうとした痕跡もあるのだ。そして、異世界レベルが上がった俺にはうっすらと何を作りたいかがわかる。
それは自転車という乗り物だったり、コンロというキッチン用品だったりと様々である。
共通していることは一つだ。
「お前は……武器とか人を傷つけるものは一切作っていないんだな。銃は作れなくても強力な弓とかは作れたはずだ。なのにそれらを作った痕跡すらない。だから、ソウズィの知識を使って戦争の道具を作った俺に敵対心を抱いているのか?」
一瞬だが、彼女の眼が大きく見開かれたのは気のせいではないだろう。だがすぐに楽しそうな笑みを浮かべる。
「……なにを言っているやら。私にとってソウズィは遠い先祖に過ぎないわ。別に気になんてしてないわよ。ただ、あなたの炉が欲しいだけですもの」
「そうか……」
「ええ、それにこの国では武器よりも日常品の方が売れるのよ。それより、今回はエミリオの顔に免じて侵入したことも許してあげるけど、次はないわよ」
「ああ、わかっているよ、ありがとうな」
その一言共に俺はウィッグをかぶり直し席を立つ。侵入はばれたものの優勝に選ばれる発明品の傾向はわかった。
あとは頭を悩ませて相手よりもすごいものを作ればいい……とか、俺が考えると思っているのだろうな……ガラテア(人)は。
宿の一室に戻った俺はさっそくガラテアに質問する。
「それでどうだった? 面白いものはあったか?」
「はい……離れの一室に研究施設がありました。おそらくあれが本命でしょう」
「そうか……予想通りだな」
「彼女はマスターが罠にひっかかったと思ってくれたでしょうか?」
「どうだろうな、多分半信半疑ってやつだと思う」
今回の計画はそもそもガラテア(人)にばれないなんて思っていなかったのだ。というかこの状況下でエミリオが客人をつれていけば必ず怪しむと思い、自ら囮になったのである。
今頃彼女は俺が倉庫で見たものを基準に何を作るかなやんでいる……と思っているはずだ。
「はい、予想通りマスターたちが商業連合の施設に入ったと同時に出ていった人間をつけていったところ、あの女のいる場所へとむかっていました」
「やっぱりな……あいつらは何を作っていたんだ?」
「気球というものです……空を飛べる移動物ですね」
「なっ……」
ガラテアの言葉を聞いて『世界図書館』で検索すると予想よりもスケールの大きいものに俺は驚きの声をあげる。
おもちゃで対抗しようとしたら負けていただろう。
「ちょっと、面白くなってきたな。そろそろあいつらもくるだろう?」
「はい、明日には到着すると思います」
俺はガラテアとの勝負のために色々と準備をするのだった




