173.グレイスの悩み
ガラテア(人)と改めて勝負の約束をしたあと、メモを前に色々と考えていたがお世辞にも順調とはいえなかった。
「だめだ……なんにも思いつかない……」
そう、宿に引きこもって色々と発明品のアイデアを探しているが全然思い浮かばないのだ。領主の性格からして生活に役立つものや娯楽用品がよいとはわかるのだが……
お茶を持ってきてガラテアにも心配そうな顔で話しかけられてしまった。
「どうですか、マスター。なにか良いアイデアをえることはできたでしょうか」
俺の目の前の真っ白いノートが彼女の問いへの答えを全て物語っていた。今回はガラテアの父であるソウズィの子孫との戦いである。絶対負けられないというのにふがいない。
「大丈夫だ。今はちょっと悩んでいるがすぐに思いつく。安心してくれ」
「マスター……」
笑いかけるがガラテアの表情は硬い。むしろ逆効果になっているような気すらする。
「マスター……私のために考えすぎないでください」
「いや……でも……」
「マスターが何かを作るときはもっとワクワクとした表情でした。なのに、いまは辛そうな表情でいます。私のためにそんな表情をしてほしくはないんです」
「ガラテア……」
申し訳なさそうなガラテアの表情を見て、思う。確かに俺はこれまで義務感ではなく生活を改善するために発明をしてきた。
だけど、どうすれば……
「もう、何をやっているのよ。あんたは頭がいいくせに悪いわね。グレイスは何のために発明してたの?」
「え?」
いきなり口調の変わったガラテアに困惑していると、彼女の顔がカーッと真っ赤になっているのに気づく。
だが、彼女はそのまま続ける。
「私の知っているグレイスはいつも楽しそうに自分の好奇心のためだったり、誰かのために発明をしていたわ。ガラテアには悪いかもしれないけど、この勝負もいつものようにたのしみになさいよ。そうすればあんな連中にまけないって知ってるもの」
「……」
どう反応しようか悩んでいるとガラテアが真っ赤になった顔を隠しながらぼそぼそとつぶやく。
「その……ヴィグナさんだったらこういうと思いまして……ロボジョークです」
「あー、確かにそう言いそうだな。だけど、ガラテアの伝えたいこともわかったよ。発明って言うのはむりやり何かをかえようとってことじゃないもんな」
「はい、マスターはいつも私たちの領民のことを考えてくださっていました。そこには勝ち負けよりも領民の笑顔を考えていたからというのがあったと思います」
最初に作ったクワだって領民のためだったし、守護者の鎖だって生活をよくするためだったのだ。
ああ、そうだ……俺は誰かを助けるためだったり、不便を便利に変えるために様々な発明をしていたのだ。
確かに今回の発明には勝ち負けがある。だけど、何かをつくるのはそのためだけじゃないはずだ。だったら、こんなところにいても何かアイデアがでるはずがないのだ。
「ガラテア……街を散策しようと思う。よかったら一緒についてきてくれるか?」
「はい、もちろんです。マスター!!」
そうして、満面の笑みを浮かべたガラテアと共に街へと繰り出すのだった。
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「悪役転生して世界を救ったけど、ED後に裏切られて追放された俺、辺境でスローライフしようとしたのに、なぜかかつての仲間が病んだ目をしながら追いかけてきちゃった……」
幼馴染曇らせの追放物となります。よろしくお願いいたします。
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