170.隣国の市場
「どうです? 同じ都でもだいぶ雰囲気は違うでしょう?」
「亜人の人達もいらっしゃいますね……ドワーフが工房を経営しているのも先ほど見ましたよ、マスター」
「ここはアスガルドと違い他国の人間の入国を積極的に許可しているからな。ゆえに商業都市と呼ばれているんだ」
あの後善は急げということでガラテアとエミリオを連れて俺は隣の国の貴族がおさめる商業都市へと足を運んでいた。
『世界図書館』によるとこの国は貴族たちの力がつよくそれぞれが自由な法律の元に領地を運営しているらしい。というのも元々小国が魔物や隣国の脅威にそなえるために合併したことによって生まれたかららしい。
「貴族への面会は夕方からか……それまでどう時間をつぶすか……」
蒸気自動車から降りると周囲からざわりと声があがる。その反応ににやりと笑みを隠せない。
例の発明品好きの貴族への手土産はいくつか持ってきたが、このように未知の発明品は彼らの知識欲を誘うだろう。さっそくのアピールには成功したようだ。
「私は貴族様にも顔がききます。何なら順番を速めてもらうこともできると思いますが……」
「いや、大丈夫だ。それよりも市場を見ておきたい。案内してくれ」
エミリオについていき、ひときわ騒がしい一角へと向かうと、そこには古びた絨毯の上に荷物がおいてある簡易的なお店がいくつも広がっているのが目に入る。
「ここはフリーマーケットといって安価な値段を払い一日から一週間の間出店することができるんだです」
「へぇー。面白い。初めて聞く販売形式だな」
念のため世界図書館で検索してみると、さっそくヒットする。フリーマーケットというらしい。ソウズィの知識を使った異世界の販売方法なのだろう。
「マスター、あれを見てください」
「へぇ……こんなところで売っているんだな。異国への輸出は一応禁止しているはずだが……」
ガラテアが指さした店に足を運ぶと、笑みを浮かべた商人が声をかけてくる。
「お客さん、これに興味を持つなんてお目が高いねぇ。これは異国の武器で銃っていうんだよ」
「へぇー。面白いな。ここの領主様はこういうのがお好きなのか?」
ヴァーミリオンの国内や、同盟国であるドゥエルには流通していて当たり前だが、こんなところでしかも質の悪い偽物がつくられているとはな……
「いえいえ、これは発明家のセグルが作ったやつなんですよ。発明品コンテスト目当ての観光客さんですか? だったら、この前回のガラテア様の発明した優勝作をみますか? こちらですね、リバーシを超える戦略性をもったゲーム『チェス』というらしいです」
リバーシーとやらがなんだかわからないが、『チェス』とういうやつは象牙と漆黒が交互に配された8×8の正方形のマス目のかかれば盤に馬や騎士を模したコマを置いて遊ぶらしい。
「これは……父がよく遊んでいた遊具です。まさかここで見るとは……」
「姉さんの命令で特殊な技術がなくてもつくれるものをリストアップされたものです。『デンカセイヒン』とやらはつくれませんがこれくらいならばうちの職人たちでも真似できますからね」
「なるほどな……ありがとう。色々と勉強になったよ」
どうやら商業連合はソウズィの知識をそれなりに活用しているらしい。それに関しては別に咎めるつもりもないし、
だけど、なんだろう、胸の中のきもちに何かが燃え上がってくる。
「俺の方がソウズィの発明品をもっとちゃんと作れるんだけどな……」
「ふふ、マスターは負けず嫌いですからね」
「まあな、そろそろ約束の時間だ。いくぞ」
思わずぼそりとつぶやいてしまったが、ガラテアには聞かれていたようだ。ちょっと気恥ずかしさが残るが、俺たちは城へとむかう。
「あら……グレイスにエミリオ、そちらのゴーレムは噂のガラテアかしら。奇遇ね」
城についた俺が出会ったのは今もっとも会いたくないガラテア(人)だった。いや、タイミングが良すぎるだろ。
エミリオを睨むが彼は必死の表情で首を横にふった。
「ふふ、ここは商業連合の本拠地よ、よそ者の動きなんてわかるにきまっているでしょう。実は私も同じ時間によばれているのよ」
驚く俺たちを見てにやりと笑うのだった。




