169.ノアの提案
ボーマンとガラテアの後押しもあり、俺はガラテア(人)の提案になることにした。
手紙を送ったあとは、貴族に詳しい人に相談すべく、ガラテアを引き連れてノアの部屋を訪れる。
「ノア、今いいか?」
「はい、構いませんよ。最近なにか悩んでいたようですが、一つの答えを得たようですね」
笑顔のノアが見つめているのは俺だけではない。ガラテアもだ。ソウズィの血縁の登場によって動揺してた彼女だったが、力をあわせてみかえすということで納得してくれたらしい。
それは俺が絶対負けないという信頼の元の安定だ。絶対に負けるわけにはいかないだろう。
「ああ、商業連合からちょっと挑戦状をたたきつけられてな……発明品で勝負することになったんだ。相手が貴族らしいんだがどんなものがいいと思う?」
「なるほど……それで貴族令嬢である私の知恵を拝借しようというわけですね。もちろん協力するつもりなのですがご褒美がほしいのですが……」
チラっとガラテアを見つめるノアに、俺たちはため息をつく。まあ、通常の仕事に加えて余計な仕事を振ったのだ。
ガラテアが嫌がらないならいいだろう。
「ガラテア……」
「わかりました。マスター……私はあなたのためならばどんな目にあっても構いません……ロボットですから」
今生の別れのような雰囲気を出していると、ノアが涙目で声をあげる。
「ちょっと待ってください!! なんで、生贄にでもされるような雰囲気を醸し出してるんですか!! そんなひどいことはしませんよ?」
「ご安心を、ロボジョークです。ノア様のことはかろうじで信頼しているので大丈夫です」
「じゃあ、遠慮なく……ぎゅーっとさせてもらいますね。えへへへへ。この謎の金属の冷たい感触が癖になりますね……」
破顔したノアに抱き着かれ、てへぺろと舌をだしているガラテア。エミリオと出会った時はやばかったけどジョークを言えるようになっているということに安堵の吐息を漏らす。
「それで……本題に入っていいかな?」
「はい、貴族が喜ぶ発明品ですよね。ズバリその貴族によります!!」
「「……」」
どや顔のノアに俺とガラテアは冷めた目で顔を見合わせる。
「マスター……時間の無駄でしたね。いきましょう」
「ああ、そうだな」
「待ってください!! 最後まで聞いてくださいぃぃぃ!!」
ガラテアがあっさりとノアを突き放すと、必死の形相ですすがりついてきた。ちょっと怖いんだけど……
「なんでしょうか? 期待だけさせて当たり前のことをいうなんでぎゅー-泥棒ですね」
「同じ泥棒だったら恋泥棒になりたいな、なんて……あ、ごめんなさい。真剣に話しますね」
ガラテアの視線が冷たくなるのに気づいたノアがあわてて咳払いをする。
「貴族次第というのは、その貴族の性格ですよ。民衆思いならば彼らの生活が楽になるものが好まれるでしょう。自分のことを第一に考える貴族ならば、それこそ多少は高くとも貴族たちの生活が楽にになる商品が好まれるでしょう。アスガルドの王とドルフの王でほしがるものが違うのと同じですよ」
「なるほど……」
ノアのたとえは嫌というほどよくわかった。クソ親父が欲しがるのは、おそらく強い武具で、ドルフの王が欲しがるのはドワーフの皆が喜ぶ炉などだろう。
まずは相手をよく知ることか……当たり前のことだけど大事だ。
とはいえ……情報に関しては商業連合の方が強いだろうな……
どうするかと悩んでいる時だった。
「そこでですね、なんとうちの父は他国の貴族とも結構交流があるんですよ。うちの派閥の人間を名乗ってちょっと調査ついでに旅行するのはいかがでしょう?」
「いいのか? また、領主の仕事をまかせることになるぞ」
「うふふ、構いませんよ。私はそのためにいるんです。それにガラテアさんはちゃんと自分の過去に向き合うべきだと思っています」
「……」
涎を垂らしてガラテアに抱き着いていたノアの表情が優しいものに変わり、ガラテアもその意図を察っしたのか険しい顔をしてからうなづいた。
「ありがとう。いくぞ、ガラテア。俺たちで商業連合に目にものみせてやろうぜ!!」
「……はい!!」
相手の貴族は商業連合と仲良くしているのだ。不利な戦いになるかもしれない。だけど、俺には『世界図書館』とガラテア……そして、アスガルドのみんながいる。負けるわけにはいかないだろう。




