106.グレイスともう一人のガラテア
「なるほど……お前が商業連合のリーダーか」
目の前の女性を前に俺は思わず好戦的な笑みを浮かべる。それも無理はないだろう。こいつがアスガルドを狙っているのは知っているからな。
エミリオのやつは会わない方がいいと言っていたが俺は会いたかったのだ。敵の顔は知っておいた方がいいからな。
「へぇ、あなたがグレイス=ヴァーミリオンだったのね」
そう言ってこちらを見つめるガラテア……紛らわしいな。ガラテア(人)と呼ぼう。
ガラテア(人)はまるでごちそうでもみつけたかのように獰猛な笑みを浮かべた。そして、俺たちの視線はもう一人へと向かう。
「こいつはパーティーにはこないんじゃなかったのか?」
「あなたはアスガルドを説得しに行ったのよね? なんでこのパーティーに参加しているのかしら?」
「え……あ……う……」
矛先がいきなり向けられて変なうめき声を上げるエミリオ。なるほど……俺たちに手を貸すのは本気だったようだなとわかり、視線を目の前の女へとずらす。
「それで、商業連合のお偉い様がこんな僻地までいったい何の用だ? 観光だったら、うちよりも王都がおすすめだぞ。女だろうが躊躇なく身ぐるみをを剝いでくれるぜ」
「あらあら、グレイス様はご冗談がお上手ね。自分の国をまるで、蛮族の国のようにおっしゃるなんて……私はもちろんアスガルドに用があってやってきたのよ。ねえ、一般的な常識と法律で考えてほしんだけど、親の残したものって誰のものになるかしら?」
「そういうことは親孝行した人間がいうものだぞ? さんざん放置して他の人間が手入れをして使えそうになったら持っていこうとする。それって俺の国では泥棒かハイエナって言うんだが知ってるか?」
俺が返せばあちらも負けじと言い返してくる。お互い笑顔で罵倒しあうのはちょっと楽しかったが、ふと視線を感じまわりを見回していると、いつの間にかダンスのための演奏は止まり、周囲の視線がこちらに集中しておりエドワードさんが頭を抱えているのはわかる。
「このままでは平行線ね。だったら私と勝負をしましょう」
「勝負だと……どうせ、まともな勝負ではないだろう?」
こちらが疑問の声をあげるとガラテア(人)はまるで事前に用意してあったかのようにスラスラと説明を始める。
「隣の国の貴族にね、物珍しい物好きなのがいるのよ。そこの貴族が満足するものを用意出来たら勝ちってのはどうかしら? ソウズィの後継者を名乗っているんですもの。それくらいはできるでしょう?」
「確かに面白そうだが……うちにその勝負に乗るメリットがないな。アスガルドの者はすでにすべてをうちのものだから」
「もちろん、そこでかけるのよ。あなたはソウズィの炉を!! そして、私は商業連合がいまもっているすべての遺物を渡すと誓うわ!! あなたがコレクションしているのは知っているのよ」
ざわっと周囲が騒がしくなるのも無理はない。これは実質の宣戦布告である。そして、ガラテア(人)だけではなく周囲の人間たちも俺がどうこたえるか見届けようとしているのが分かる。
それに俺は……
「ガラテア様、おやめください。今日はうちのパーティーですよ。勝手な真似はひかえていただきたい」
エドワードさんの言葉で人々はちりふたたび音楽の演奏がはじまる。どうやら助け舟をだしてくれたようだ。
だけど、俺の頭にはよぎるのだ。もしもソウズィの遺物が大量に手に入れば俺は様々なものを発明できるだろうと。そして、それはとてもたのしいことではないのだろうかと




