104.パーティー会場
さっそく会場についた俺とヴィグナはエミリオと別れて、あてがわれた部屋へと向かう。
「こういう格好をするのも久しぶりね」
「ああ、ドワーフのところではパーティーとかなかったからな」
用意してあった礼服に着替えを終えて振り向くとヴィグナがドレスのスカートの裾をひいて貴族令嬢のように礼をする。
いまだ見慣れない格好と普段の鎧とは違う女性らしさが目立つ服装に思わずドキリとするがポーカーフェイスを貫く。
「どう? 久しぶりの恋人のドレスなのよ。なにか言葉はないのかしら?」
「ああ、とっても似合ってるよ。今日のダンスも楽しみにしてるぞ」
「つまらない反応ね。最初に見せたときはもっと照れてくれたのに……」
俺の恋人かわいすぎるぅぅと叫びたくなるのをおさえてあしらうとヴィグナは不満そうにほほをふくらます。
あんまり弱みをみせると調子に乗るからな。
「当たり前だろ、俺はクールな領主と定評があるからな。これくらいでいちいち……おお?」
「いちいちなにかしら? クールとかいうわりには情けない声をあげるのね」
露出のあるドレスでいきなりだきついてきたものだから、彼女の胸のやわらかい感触と香水をもとったヴィグナの甘い匂いに思わず声をあげてしまう。
「随分と甘えん坊じゃないか? どうしたんだ?」
「そりゃあドルフから帰ってあなたはいろいろ忙しそうだったんだもの。たまには甘えたいのよ、悪い?」
「いきなり素直になるのはずるくないか?」
いとおしくなってしまいしばらくぎゅーっと抱きしめると彼女は俺の胸に顔をうずめ満足そうに吐息をもらす。
かわいらしい彼女に思わず笑みをこぼしているといきなり首筋をものすごい勢いで吸われた。
「いってぇぇぇぇ、肺活量やば!!」
「ふー、こんなんものかしらね。マーキングもできたし、そろそろ行きましょう」
「マーキングってな……」
俺が抗議の声をあげるとヴィグナは複雑そうな顔でほほを膨らました。
「あんたは、技術力のあるドワーフとの協力を結び様々な発明品をしているアスガルドの領主なのよ、今日のパーティーにくる商人や貴族が婚姻と結ぼうとしてくるに違いないの……ってサラが言ってたわ」
「いや、俺はヴィグナ一筋だから……」
「わかってるけど、牽制は必要でしょう。私はほかにも準備があるから先に行っててもらえるかしら」
アクセサリーなど色々と準備があるのか、彼女とわかれてパーティー会場へと向かう。
するとだれかが口論しているのが聞こえた。
「貴様らの甘言に騙されたせいでうちがどれだけ損したと思っているんだ」
「ちゃんと説明はしたはずですよ。この商売にリスクはあるものだと……それなのに成功した時はだんまりで、失敗したときには文句を言うのはどうかと思いますが?」
小太りのおっさんと、黒髪の二十歳くらいの女性である。おっさんに一方的に絡まれているようだが……まあ、いい方は悪いが俺は部外者だ。商売のことならば放っておいた方がいい……そう思った時だった。
「うるさい、お前らのような詐欺師は……」
「あら……」
「さすがにそれはやりすぎだろうが!!」
おっさんが拳銃を取り出したものだからとっさに胸ポケットから取り出した銃で狙い撃つ。
偽善かもしれないけれど、自分の作ったものが、目の前で使われるのはあまりいい気分じゃないし、ここは戦場ではないのだ。
「いったい何が……」
「大丈夫ですか?」
そして、銃声に気づいた兵士たちに事情を説明して去ろうとすると、黒髪の女性に話しかけられる。
「助けてくれありがとう」
「いや、気にするな。だけど、恨まれそうな仕事をしているんだったら、あんまり一人にならないほうがいいんじゃないか?」
「うふふ、大丈夫よ。その時は慰謝料をもらうもの」
こちらの忠告ににやりと笑った彼女が胸元をひらくと一瞬見えたのは黒い下着とその上に身に着けている鎖帷子だった。
あの光沢からして超ミスリル合金だろう。
確かに市場に回っている銃弾ならば耐えられるだろうが無傷ではいられないはずだ。
「私は商人ですもの。稼げるときは稼ぐの。だけど……あなたのような善意も嫌いじゃないわ。商売するときがあったら声をかけて。損はさせないわよ」
「お誘いありがとう。だけど、俺はすでに専業の商人がいるんだ」
そんなふうなやり取りをしてわかれる。商人はやはり変わった人間が多いな……
★★
「ガラテア様、ご自分の身を危険にさらすのはおやめくださいといったはずです」
「あら、あなたたちの身を犠牲にするわけにはいかないでしょう?」
絡んでいた男はリスクが高いと警告したにもかかわらず金をかけて損をしていたのだがこちらに絡んでくることは予想できたのであえて挑発していたのだ。
そして、身柄をおさえて借金を回収するつもりだった。
だが、意外な救世主にあらわれてしまった。
「ガラテア様どうしたんですか? なにか機嫌がよい様ですか?」
「うふふ、面白い人間にあったの。この商売人ばかりの集まりに損得を考えずに人を助ける人間がいるなんてね」
部下の言葉にガラテアは満面の笑みを浮かべながら先ほどであった金髪の少年のことを思い出して笑みを浮かべる。
「このパーティーグレイス=ヴァーミリオンにしか興味はなかったけど楽しくなりそうね」




