99.エミリオとアスガルド
「これが……私の先祖がいた街か……」
ドワーフが売っていた芋料理を食べながら、エミリオ=スズキはアスガルドの街を見て回っていた。
大浴場というものがあり、特殊な効果を持つ野菜や果物、そして、スライムから採ったゴムというものなど様々な物珍しいものが目に入る。
「私が……私たちが、この地を支配していたらこのように発展しただろうか?」
自問して即座に笑ってくだらない思考を放棄する。結局自分たちはソウズィの作ったもののほとんどの再現することはできなかったのだ。
その代わり、ソウズィから習った貸し付けなどによる新しい商売方法や簿記という名の技術などを引き継ぎ、魔法による商品の宣伝や高名な騎士や貴族に商品を渡しコラボすることによって自分たちの物を有名にする方法をこの世界に持ち込み、興味をもった豪商の娘に取り入って自分たちは成り上がったのだ。
「グレイス=ヴァーミリオンは純粋な現地民だ。だからこそこのようなものを発明できたのだろうな」
鏡に映るエミリオの表情は悔しそうだ。それも無理はないだろう。結局のところ、彼の先祖は元の世界とはおなじものがないというソウズィの言葉を聞いてあきらめてしまった。
ソウズィ自体は特殊な能力をもっていたが彼の子孫は受け継がなかったのだ。だからこそ、このアスガルドに早々に見切りをつけたのだ。
「別に私とて先祖の判断が間違っていたとはおもわないがな……」
だが、自分たちが見捨てた地が、自分の血族の知識を使って発展しているのを見て何も思わないほどエミリオは大人ではなかった。
今回の交渉は見事に失敗だった。だが、商売というのは根気強く続けるものである。
それに……
「グレイス=ヴァーミリオンは領主というよりも、技術者としての欲求が強いと聞く。ならば珍しい何かを提供できれば、懐柔できないだろうか?」
そこまで考えて、独り言をぶつぶつとしゃべっているからか注目を浴びてしまったようだ。
不審げにこちらを見つめている衛兵に、もう一つの用を済ませるためにエミリオは笑顔を浮かべながら話しかける。
「申し訳ない。ここにソウズィの墓があると聞いたのだがおしえてはいただけないでしょうか?」
「ん? ああ、それなら街のちょっと外れたところにあるよ。だけどなにしにいくんだ?」
「ありがとうございます。ちょっと発明のアイデアを探しておりまして、ご利益がないかなと」
十五歳くらいの衛兵だが、姿勢からそれなりにできることがわかる。そして、何よりもホルスターに挟まっている銃が目に入り、最近流通し始めたものよりも高性能だなとおもいながら、このアスガルドの技術レベルの高さを実感し、かつてソウズィがいたときに近づいているのではないかと胸をよぎり再びモヤるのだった。
ソウズィの墓は町はずれの建物の跡地にあった。あたりには人がおらず、少ししんみりとした気持ちになる。
「あなたはニホンシュとやらが好きだと伝わっております。似たものを作ってお持ちいたしました」
彼の墓に備えるとエミリオは両手をあわせて頭をさげる。きっとこれから先の未来はソウズィが望んだようなものではないだろうからだ。
だって、身内同士で争うことを望む先祖はいないと思うから……
「今更罪滅ぼしのつもりですか?」
「……ああ、君が噂のロボットか」
振り返ったエミリオは表情を変えずに目の前の存在をみつめるのだった。
この作品のコミカライズの一巻が五月の九日に発売されます。
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