97.商業連合
初めて見るガラテアの冷たい目に俺は驚きを隠せない。それはノアも一緒だったのだろう。ガラテアを見てぶつぶつとつぶやいているのが聞こえた。
「ああ……普段優しいガラテアさんがあんな目をするなんて……私もあんな風にみられてたらどうなってしまうでしょう♡」
うん、大丈夫そうだな。こいつは放っておこう。
「それで、マスター。商業連合が一体どうしたのでしょうか? あらためて聞くということは先ほどのお手紙以外にもなにかあったのでしょう」
「ああ、そうだな。エドワードさんの情報だが、うちにやってくる予定らしいんだ。それでどう対応すべきか二人の意見を聞きたいなって思ってさ」
「なるほど……今更ですね」
何かを考えこむようにうなづくガラテアを見て俺は違和感を覚える。手紙を見せた時の表情が硬かったが、再度話を振ったらこのありさまだ。
アスガルドと商業連合は何かがあったのだろう。
「彼らと当時のアスガルドはどんなかんじだったんだ?」
「はい……かつての商業連合は、小規模な商会でした。こちらにやってきた父が初めて商売をした商会であり、アスガルドの製品の売買を独占することによって、急速に発展していったのです」
「今のうちとエドワード商会とみたいな感じか……」
「確かに異世界の技術を使った発明品は売れますもんね。私もはじめてきたときは驚きましたし……」
今のアスガルドが発展できたのも異世界の技術と組み合わせた発明品があるからだ。俺以上に異世界に精通しているソウズィがいれば余裕だろう。
「確かに関係性は似てますね……ですが、彼らは損得でしか物事を考えることができないのです。父が亡くなった後に彼らは私たちを助けることはしませんでした。彼らがやったのは父の葬儀のあとに、あの人の子供を引き取るとともに遺品を奪っていくだけでした。それに対して私は反対したのですが子供にこそ正当な権利があると聞いてはくれませんでした」
「……確かに法律的には問題はないと思いますが……ひどいですね……」
「……」
ガラテアはソウズィがいない間もがんばってアスガルドを守ろうとしたのだ。彼ら商業連合が力を貸してくれれば結果は変わったんじゃないだろうかと思う。最初にきたような廃墟にはなっていなかったかもしれないのだ。
そう考えるとムカついてくるな……
俺は崩壊していた村を見つめていたときの彼女のつらそうな顔を思い出して、未だ見たことのない彼らに嫌悪感を覚えた。
「ガラテア……俺を信じてくれてありがとう。それだけのことをされてさ、もう一度人を信じるのはすごい決断力のいることだったろ?」
「マスター……そんなことはありませんよ。だって、あなたは私を領民として……父の娘として扱ってくれたじゃないですか」
こちらを見つめてくるガラテアの瞳には冷たさが消えむしろ熱を帯びている気がする。
人間離れしている美しさの彼女にこんなふうに見つめられるとちょっとどきっとしてしまうが、うちなるヴィグナを思い出して平静を保つ。
「むーーー、お二人とも私もいるんですよ!! 私だってガラテアさんを友人だと……いえ、むしろそれ以上の存在だと思っているんです」
「ああ、そうだな……」
「……私は友達としか思っていませんが……?」
「あ、でも友達とは思ってくれているんですね、うれしいです」
ノアの歓喜の声に一瞬あった変な空気は霧散した。まあ、彼女のおかげで助かった。
そして、さらに詳しいことを聞こうとした時だった。ノックの音と共にノエルがやってきた。
「ご主人様、来客です。商業連合の方が貸していたものを返してほしいとやってきたのですが……」
その言葉に俺たちは顔を見合わせる。なにも借りた記憶はないんだけどな……




