番外編 漫画をつくろう2
「すごい応募の数ですよ、マスター」
「ああ、確かにな……」
募集を開始してから一週間でたまった書類の束を見て俺は頭を抱えたくなる衝動に襲われた。何せすごい数なのだ。ドゥエルでの戦いのストレスからか兵士たちからも多い。それは妄想でしかない英雄譚だったりするがせっかく書いてくれたのだ。読む必要があるだろう。
気合を入れようと思った瞬間だった。乱暴なノックと共に扉があけられる。
「間に合ったかしら」
珍しく息を切らして入ってきたのはヴィグナである。その手には何枚ものノートが手ににぎられている。
「おまえも応募するのか……?」
「ええ……悪いかしら? 私にだって応募する資格はあるでしょう?」
「まあ、そうだけどさ……わかっているとは思うが俺が審査するんだぞ」
「知っているわよ、何をいまさら……ちゃんとみなさいよ」
なんというか幼馴染兼恋人にそういうのを見られるのって恥ずかしくないか? と脳内でツッコみつつもこいつがいいなら問題かと受け取る。
心なしかヴィグナの顔が赤かったのはきのせいだろうか? そして、時間になったので選定を始めることにする。審査員は俺と貴族として教養をうけているノアである。
「うふふ、なんだかこういうのって面白いですね。アスガルド初の漫画本にふさわしい立派な作品を選びましょう」
「ああ、そうだな……」
こんなまともなことを言っている彼女だがガラテアとの濃厚な百合?作品を提出してきたが、ガラテアによって速攻却下されている。
万が一オッケーなったらどうするつもりだったんだよ……
「やっぱり戦闘者が多いな……あとは……これとか単なる発明品のメモじゃないか……」
ボーマンのやつが書いたであろうメモを手にしてうめき声をあげてしまう。あいつは何かかんちがいしているのではないだろうか?
「あ、これはなかなか良いですよ。サラさんの『放浪ごはん旅』可愛い女の子が世界中のご飯を食べるだけの話ですが、こういうのが疲れた人にうけるんです」
「俺はニールの『悪徳領主に転生したので爆乳ハーレムをつくることにした~ヒロインたちにエッチなことをするために動いているだけなのになぜかやたらと慕われるんですけど……救国の英雄? それは主人公でしょ!!』が気になったな……」
「なるほど……グレイス様もハーレムを作りたいってことなんですね!! ヴィグナ様に報告です!!」
「いや、男はこういうものが好きなんだよ」
ノアがなんか恐ろしいことを言いだしたので慌てて止める。俺にはヴィグナがいれば十分だしな。そういえば……
「ヴィグナも応募してきたんだよな……どんなものだろう」
「あ、ちょっと興味があります。ヴィグナ様はどんなお話を書くんでしょうか? 魔物を殺しまくる話でしょうか……」
二人してヴィグナの原稿を読ませてもらう。こちらに顔をのぞかせるノアから甘い匂いがしてちょっとドキドキしたのはここだけの話である。
それは孤児の少女と幼馴染の貴族との恋愛譚だった。少女はずっとその貴族のことを想っていたが、鈍感な貴族はその気持ちに一切気づきもしないのにイライラさせてくる作品だった。
なんか胃が痛くなってきたんだけど……
「これは……」
「おそらく実体験を元に書いているのでしょうね……今度デートでもしてきたらどうでしょうか?」
仕方ないだろ、わかるかよ……まあ、最後はハッピーエンドになっていたので良しとしようと言い聞かせて、あとはガラテアを読んで最終候補を決めて相談し漫画の作成を始める。
「そこそこ売れているようね」
「ああ、おかげさまでな。これで漫画が普及すれば、他の作品も作ってみるかなって感じかな」
結局ガラテアにかいてもらったのはノエルの書いてくれた『外れスキル「世界図書館」による異世界の知識と始める『産業革命』』という作品である。
恥ずかしいことにまあ……どう見ても俺がモデルである。俺は反対したが他のみんなが賛成したので決まったのである。
「それにしても自分をモデルにした作品を広めるなんてすごい度胸ね」
「お前にだけは言われたくないんだけどな!!」
「何か言ったかしら、鈍感男さん」
涼しい顔で放たれる一言になにも言えなくなってしまう。
「あの……今度恋愛譚にあったようなデートでもするか? 最近アスガルドばかりだったし」
「しょうがないわね、つきあってあげるわ」
そうして俺たちはデートをするのだった。
というわけでコミカライズがはじまりました。
水曜日のシリウス様で連載開始です。
ニコニコ静画で無料で読めますので是非読んでくださると嬉しいです。




