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95.アスガルドとドワーフ

「お久しぶりですね、エドワードさん」

「変わらず元気そうでなによりです。クリスはちゃんとやっているようでなによりです」



 仕事がひと段落したという事で俺と話したいことがあるというエドワードさんと一緒にアスガルドを歩いていた。

 会議室で話すべきかと思ったが、最近のアスガルドを見たいという彼の提案で散歩に変更したのである。



「あれはドワーフですな……流石はグレイス様、ドウェルからも難民を受け入れたと聞いておりましたがさっそく順応しているようですね」

「いや、あいつらなにやってんの?」



 どこか尊敬の念で見つめてくるエドワードさんの反応をよそに俺は間の抜けた声を上げていた。無理もないと思う。

 だって、サラの食堂の前には屋台があり、そこで呼び込みをしているメイド服を着ているドワーフには見覚えがあったからだ。



「フライドポテトだぞー。とっても美味しいぞー!! 火酒とのセットだとお得だぞー」

「何をやっているんだルビー」

「おお、グレイス!! サラに言われてなー。暇なら働かないかって雇われたんだぞー!! せっかくだから食べてくかー?」



 そう、ルビーである。彼女は何人かのドワーフたちと屋台で売り子をしているのだ。まあ、ドワーフは可愛らしく、豊かな胸が一定の層の男性に直撃するので大人気なので需要はあるのだが……仮にもお姫様だぞ……

 まあ、本人が楽しそうだしいいのか……?

 ドワーフの女性はドゥエル以外で見るのは珍しいので、人通りの多くなってきたアスガルドでの客引きには適任なのだろう。サラも商売上手である。



「グレイス様……あれは珍しい料理ですね。ちょっといただいてきても良いでしょうか?」

「ええ、別に構わないですよ」



 さすがは商人というところか見慣れない料理を間にいてもらってもいられなくなったらしい。気に入ったらレシピを売るのもいいかもしれない。



「ふふ、可愛らしいドワーフさんですね。それでは一ついただけますか?」

「おお、いいぞー。ドワーフ特性の火酒もあるけどどうだー?」

「ありがとうございます。火酒も興味があるので仕事中なのでまたの機会にお願いします」



 エドワードさんがルビーからフライドポテトを買って、口にすると目を大きく見開く。



「ほう……あげたての馬鈴薯を小さく切っただけだなのになんと美味なのでしょうか? 確かにこれはお酒とあいますね……」

「ああ、最近はこのポテトにつける調味料の開発もしているんだ。楽しみにしていてくれ」



 ガラテアからもらったアイデアを元に今頃サラがいくつか候補を考えている。商品名はフリフリポテトというらしい。確かに塩以外の調味料にも無茶苦茶あいそうである。

 そして、俺たちが最近作られた工房地区に足を踏み入れるとキンコンカンコンという音が響いている。



「ここはドウェルからの移民用に作った工房です。超ミスリルの改良と、新素材の開発の実験をしています」

「ほう……ドワーフの技術とソウズィの遺物が合わさればなにができるか……楽しみですな」

「ええ、アスガルドはさらなる発展をするでしょう」



 そんなことを話しているとドワーフの一人と、アグニが何やらドワーフと話しているのが目に入った。彼はドワーフの要望を色々と聞いて、建物をつくっていたのでその時に仲良くなったのだろう。そして、彼は俺と目が合うとまるで「やっべ……」みたいな顔をしてそのまま走って逃げて言った。



 なんか無茶苦茶嫌な予感がするんだけど……あいつドワーフと手を組んで余計なものを作っていないよな……


 そして、一通り工房街を歩き終えるとエドワードさんが真面目な顔をして口を開く。



「グレイス様、アスガルドはこれからもどんどん発展していくでしょう。そうすればこれまで以上に警戒する相手も増えてきます。特に『商業連盟』にはお気をつけてください。彼らはおそらくソウズィの遺物を再現に成功したアスガルドの技術を狙っていると思います」

「なるほど……彼らはそっち側なのですね……」



 その言葉を聞いて俺は思わず考え込む。となるとあの手紙は下見と言ったところか……だが、商業連盟の考え自体は俺の思い描いていたものと近いから手を組めると思ったんだけどな……

 まあ、敵になるというのならば仕方ないよな。


 それなら戦うしかないか……



「グレイス様……なぜ、笑っているのですか?」

「え……?」



 エドワードさんの言葉に間の抜けた声をあげてしまう。今俺は仕方なく戦う選択肢を選ぼうと……いや、なんで俺は戦うことが真っ先に入ったのだ? それじゃあ、くそ親父や、くそ兄貴たちと同じじゃないか?



「いや、ちょっと思い出し笑いをしただけだよ」

「それならばいいのですが……」



 俺が慌ててごまかすとエドワードさんは少し言いにくそうにお願いしてきた。



「それでですね、もしもよかったらドワーフのお姫様と会う機会をいただけないでしょうか? ドウェルのドワーフたちの技術は私とてしても魅力的なので顔を売っておきたいのです」

「え? それならばもう会っているじゃない?」

「は……?」



 今度はエドワードさんが間の抜けた声をあげるのだった。

グレイス君闇落ちフラグ?

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