91.
「これは……懐かしい名前ですね」
カイルが治療を受けていたベッドの上に置いてあった手紙をアインに渡すと彼女は大きく目を見開いた。宛名には聞き覚えがなかったが、ドゥエルの人間に渡してくれと書いてあったので、アインに一応見せてみたのだが、案の定知り合いだったようだ。
「グレイス様、これはどこで……?」
「ああ、カイルのベッドに置いてあったんだよ。なんであいつがドゥエルの人間と知り合いだったかはわからないが……その縁でここにきたのかもしれないな……」
「そうですか……不思議な縁ですね。まさか、ここで兄の名前を聞くなんて……」
アインは手紙をみつめてクスリと嬉しそうに笑う。何が書いてあるのだろう? だけど、プライベートなことを聞いてもいいものだろうか? と迷っていると俺の視線に気づいたアインが内容を教えてくれる。
「これはドウェルを去って冒険者をやっている兄の手紙です。いつも定期的なお金を送ってくれているのですが、そのことと胡散臭い魔法使いを預けるが、役に立つのでこき使ってやってくれと書いてありました」
「いや、絶対カイルのことじゃん……あいつ雑用が押し付けられるのが嫌でこの手紙を隠してやがったな……」
おおかた怪しまれたら出そうと思ったが、ルビーの護衛に収まったから隠していたってことだろう。ちょっと呆れならも苦笑する。
「お兄さんも冒険者をやっていたんだな? 同じパーティーを組んだりはしなかったのか?」
「はい……兄はドラゴンを自由に使うのスキル持ちなんです。それに人よりもドラゴンを大事にするのでよくトラブルをおこすんで、基本はソロ活動なんです。でも、アスガルドならそんな兄も楽しく過ごせるかもしれないですね」
「ドラゴンを使うだと……」
アインの言葉にカイルと一緒にドラゴンを使って攻めてきた冒険者のことを思い出す。あいつドゥエルの出身だったのかよ!!
まあ、だからこそカイルがここに置いていったのか……
「どうしました……? まさか兄を知っているのですか?」
「いや、ドラゴンを使うなんてすごいなーって思ってさ……」
まさか君の兄がアスガルドを攻めた上に、大事にしていたドラゴンたちはガラテアたちに退治され、肥料になり俺やアインが美味しく食べた馬鈴薯になったよなどとは言えず適当に誤魔化す。
「グレイスいるかーー、みんな出発の準備はできてるぞー」
「おお、ルビーか、その、カイルのことは……」
一方的にきまずい雰囲気をどうにかしようとしていると今度はルビーがやってきた。彼女はなぜかカイルがプレゼントしにきたであろうメイド服に身を纏っている。それを見て胸が痛むのを感じる。
いや、なんで俺があいつの後始末ばっかりしなきゃいけないんだ?
「それならな、気にしてないぞー。元々あいつは旅人だったからなー。いつかどこか行く気はしてたぞー」
いつものようにこちらも元気がもらえるような笑顔を浮かべるルビーだが、その目には涙の跡がある。とはいえそれを指摘するのは野暮というものだろう。
彼女は彼女なりに俺の知らないところでカイルとの別れと向き合っているのだろう。もしかしたらきざなあいつのことだ。彼女には手紙でもおいていったのかもしれない。
「そうか……なら、そろそろアスガルドへ行くか!!」
「おお、楽しみだぞーアスガルドにくれば最新の炉があるって聞いてるぞー!!」
「そうですね……アスガルドは本当に良いところです。そrねい、美味しいものやお酒もありますよ」
二人の表情に笑顔が宿る。こうして俺たちは新たな住人たちをつれてアスガルドに戻るのだった。
ドラゴンライダーの伏線もっといれとけばよかった……
新連載をはじめました。
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