89.
「おお、これはまさか……」
「炉ですか……?」
アグニが運んできたものをみせると、アルヴィスを含めた数人のドワーフが困惑の声を上げる。まあ、いきなりこんなものを持って俺がどや顔をしているのだ。気持ちはわかる。
「ええ、そうです。そして、これがドゥエルを救うアイテムになるんです」
そして、俺がこの新しい炉に触れると『世界図書館』が情報を教えてくれる。
-----------------------------------
ボーマンの炉
アスガルドにあるソウズィの炉を元に作っている。超ミスリル合金をふんだんに使っている上に理屈はよくわかっていないが、ノアの魔法による強化と職人の経験と勘にて作成したもの。
通常の炉よりも高温にも耐えることができて、加工しやすいが、その分扱いが難しい。
---------------------------------------------
そう、これはいわばソウズィの炉のような本来ならばこの世界の文明レベルではつくられることのない炉である。
ボーマンという職人とミスリル超合金に、ノアの魔法によって完成したアイテムである。
「これを使ってあなたたちは、これまでは作れなかったものもいろいろと作ることができるようになるはずです。例えばミスリルや鉱山アリたちを加工したりすればここでしか、作れない素材も作れるようになるかもしれません。。まずは、我々の友好の証に『超ミスリル合金』の作り方を教えましょう」
ボーマンがつくったこれをドワーフたちが使いこなすことができれば、ドウェルでしか加工できないものだってできるだろう。
技術者は何人も出て行ってしまったかもしれないが、高性能な炉はアスガルドとここにしかない。そして、技術力の高いドワーフならば、俺が想像もできなかったものだって作り上げることができると思う。
「本当にいいのか? ドウェルを救ってもらっただけでなく、こんなことまで……」
「もちろん、ただではありません。そうですね……技術の使用料としてこの炉で発明したもので稼いだ5パーセントの金銭と、我がアスガルドと定期的な技術者の意見交換会をお願いしたい」
驚愕の声をあげるアルヴィスにほほ笑みながら答える。本当は無料でもいいが、それでは彼らの気がすまないだろうし、こういう風な約束事があった方がお互い頑張れると思うのだ。
それにこちらとして、ドワーフの技術者たちとの情報交換は助かるのは本当である。
「ありがとう……これでドウェルは真の意味で救われる。ああ、もちろん、当初通りの移民は変わらずお願いしたい。若い人間には別の世界もみせてあげたいからな」
「わかりました。彼らの未来は俺が保証しましょう」
そうして、細かい話を終えて俺は彼らの部屋を後にする。アルヴィスもドワーフだからか、扉を閉めると炉に対してあーでもこーでもないという話し声が聞こえてきて思わず苦笑する。
「お疲れ様、これでなんとかなりそうね」
「ああ、そうだな。まったくボーマンもこんなもんつくってるなら教えてくれればいいのにさ」
「まあ、まったく男のツンデレはめんどくさいわね」
「お前な……」
「なによ、女のツンデレは可愛いでしょう?」
お前がいうなよとっつこみを淹れようとすると、ヴィグナは先を読んでいたかのようににやりと笑った。くっそ、可愛いな!! と思ったがちょっと負けた気になるので言ってやらない。
そして、俺たちはもう一つの目的地へと向かう。
「さて、最後の問題を解決するか……」
「あいつならばなんとか一命はとりとめたそうよ。そのうち意識を取り戻すんじゃないかしら?」
「まあ、ルビーのやつがつきっきりで看病していたからな……」
そんな風な話をしながらカイルが眠っている病室へと向かった俺たちはそこで信じられない光景が広がっていた。
なぜならば彼が眠っていたはずのベッドにはだれもいなかったのだから……




