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87.ドゥエルの課題

 アルヴィス様に別室に呼ばれた俺とヴィグナは、彼を正面に見据えながら座る。飲み物も出されたがさすがに酒ではないようだ。

 他のドワーフと違って酒も飲んでいないようだし……この人だけは欲望に強いのだろうか? まあ、そうでもなければ王は務まらないのだろう。



「まずは改めてドゥエルを救ってくれて感謝する」

「いえいえ、私たちは救援の要請を受けただけです。気にしないでください」



 開口一番に頭を下げてくるアルヴィス様に俺は笑顔で答える。今回の騒動は元々クソおやじの命令だったし、ボーマンの故郷を救うためにやったことである。

 これでアスガルドにちょっかいを加えるやつも減るだろうし、ドワーフの協力を得やすくなったのだ。こちらとしても損はしていない。



「そして……また借りを作ってしまうことになるが、いくつかお願いがあるのだ。良いだろうか?」

「はい……今のドゥエルには様々な問題がありますからね……」

「問題……? 女王アリは倒したし鉱山アリももう力は持っていないでしょう」



 きょとんとした顔をしているヴィグナに俺は苦笑しながら説明することにする。



「わが護衛に説明してやろう。アルヴィス様、私の考えに間違いがあったら指摘してください」

「ええ、頼むわ」

「うむ、私としてもあなたの意見を聞きたかったのだ。助かる」



 いつものテンションで行きたかったがさすがに他国の王がいるので自重する。俺たちは冒険者ではない。あいにく魔物を倒しましたーでは終わらないんだよな。

 むしろここからが本番ともいえるだろう。



「まずは鉱山の鉱石の残量が問題ですね。鉱山アリを倒したときに見たのですが、あちこちだいぶ掘られていた上に、この奥も鉱山アリたちに荒らされているでしょう。あいつらの一部は魔物も食ってましたからね。食糧危機だったのかもしれません」

「うむ……その通りだ。おそらくこの鉱山の鉱石は枯渇しかけているのだろう」

「とはいえ……ドワーフの技術力は優れていますし、しばらくは鉱山アリたちを素材にすればもつと思います。その間に新しいパートナーを探すことをかんがえているのでしょう?」



 本来ならばそのパートナーはドゥエルの人の王がやっていたはずだが、今回のことで信頼を失っている。もはやドワーフたちはドゥエルの人間を信じないだろう。

 


「ああ、そこでそれをあなたたちにお願いしたいのだ。あそこにはボーマンも住んでいると聞く。アスガルドはドワーフへの偏見は少ないだろう?」

「なるほど……移民ですか……。こちらとしてはうれしいですが、元々ドゥエルに残っていたドワーフたちはここに愛着があったから残っていたのでは……?」



 そもそも、ドゥエルに限界を感じた人間たちはアインたちの様に冒険者になったり他国で鍛冶の仕事をしているのだ。素直に彼らが移民に応じるだろうか?



「それならば問題はない。移民を渋っていたドワーフの大半は移民先に生活の不安があったからな。貴公らは今回の戦いでドワーフに偏見なく接してくれた上に雄姿を見せてくれた。貴公ら以上にドワーフの信頼を得ている人間はおるまいよ」

「ありがとうございます。幸いにもアスガルドには鉱山もあります。ドワーフたちの移民をうけいれさせていただきます」



 他国の王に真っ向から褒められるというレアな経験にちょっと照れながらもお礼を言う。これでアスガルドの生産力は一気に上がるはずだ。



「移民たちの先導も我々に任せてくれ。優秀な人材に二人ほどあてがあるのだ。」

「ああ……アインたちですね!! 確かに彼らならば旅慣れていますし、ドワーフのことも理解しています。道中も安心ですね」



 先ほどの意味深なセリフはこういうことだったのだろう。これで確かにドワーフたちが新しいところを移住先を見つけることに成功した。

 でも、まだ解決のしていないことがある。



「それで……ここに残る方々はどうするのでしょうか?」

「……」



 馬鈴薯によって食糧問題もある程度は解決した。だけど、肝心の産業がなければドゥエルという国は終わってしまうだろう。

 加工する技術があるとはいえ、その技術もドワーフ何人も外に出て行ってしまったため、他国にも広まっていくはずだ。ましてや若いドワーフはアスガルドに来るのだ。これまでのようなアドバンテージは望めない。



「貴公は優しいな……だが、それもまたドゥエルの運命だ。数多くのドワーフが助かるだけでも感謝すべきことなのだよ」



 そのどこか寂し気なアルヴィス様の言葉で俺は彼がここに残るのだと悟った。何とかする方法はないだろうか?

 ここはボーマンの故郷なのだ。彼が育った街や工房はここにしかないのだ。昔楽しそうに語ってくれた彼の幼少期の思い出の地なのだ。何とか守りたいと思う。良い発明品はないのだろうか?



「失礼いたします」

「今は客人と大事な話をしているのだぞ!!」



 考え事をしていると扉が開けられて焦った顔をしたドワーフがやってきた。アルヴィス様が渋い顔をするが、それでも彼は続ける。



「ですが、緊急事態なのです!! 下層に謎の巨大なゴーレムが訪ねてきたそうです!! どうやら我々ドワーフと話したいと言っています!!」

「なんだと……また、厄介ごとなのか……?」



 ゴーレムという単語に俺とヴィグナは思わず顔を見合わせる。


「ねえ、グレイス……」

「絶対ノアたちだな……何をやっているんだ?」



 まじで嫌な予感しかしないんだけど!!


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