86.宴会
「それでは鉱山アリの討伐を記念して宴をはじめるぞ!!」
「「おーーーー!!」」
ドワーフの王であるアルヴィスが乾杯の音頭をとると、皆が歓声をあげる。そして、ドワーフもアスガルドの兵士たちも関係なく酒を飲んで騒ぎ始める。
「フライドポテトも今たくさん作ってますからね――!! 焦らなくてもなくならないから大丈夫ですよーー!!」
「お前らちゃんと並ぶんだぞー!! ポテトは逃げないぞー」
「おおおーー!!」
ガラテアが声を張り上げながら料理をしてルビーが給仕をしている。この子はお姫様なんじゃ……と思ったが、本人が楽しそうだからいいだろう。
そんな風なことを思いながら、その光景を俺は少し離れていたところから見ていた。
人とドワーフが種族関係なく騒いでいる。これが本来のこの国の在り方だったのだろう。またこんな風に戻るといいな……と思うが、まだ問題は色々と残っている。
ドゥエルの人間たちはドワーフを切り捨てたのだ。そんな彼らにドワーフたちはこれからどうするのだろうか?
「なーに、険しい顔をしているのよ。せっかくの英雄様がこんなところで辛気臭そうにしていたらみんな騒げないでしょう。これでも飲んで元気出しなさい」
「ヴィグナか……ありがとう」
俺はヴィグナから出来立てで湯気のたっているフライドポテトと並々と液体の入った木製のコップを受け取った。確かに今くらいは騒いでも良いかもしれない。
「そうだな、俺たちは女王アリを倒してドゥエルを救ったんだもんな……」
今回の戦いで色々と犠牲はあったが、今くらいは騒ぐべきだろう。そうおもってコップの酒を一気に煽ると……
「うげぇぇ、なんだこれぇ!!」
「ちょっと、グレイス!! 一気に飲んだらダメでしょう」
喉を焼き尽くすような熱さが襲ってきた。なにこれ、アルコールの味しかしねえんだけど!!
「これ、ドワーフの酒じゃねえかよ!!」
「もう、ドワーフの街なんだから当たり前でしょう。水もあるから飲みなさい」
俺が苦しみながら水を飲み干すとヴィグナが楽しそうに笑っている。もちろん宴会には人間用の酒も用意されている。ぜったいわざとだな……その顔はちょっと赤く彼女も酔っているのか、いつもよりテンションが高い気がする。
「だけど、ちょっとは気分転換になったでしょ?」
「ああ、まあな……」
ちょっと複雑だが彼女は彼女なりに俺を心配してくれていたようだ。いや、絶対俺の反応を楽しんでいる気がするが……
じとーっと睨むとヴィグナが楽しそうにほほ笑んでいる。
「グレイス様探しましたよ。お話がありまして……」
「お前さんは主役なんだから、もっと真ん中にこんか!!」
そんな風に話しかけてきたのはアインとギムリである。アインは普通だがギムリの方の顔は真っ赤でありもうすでに出来上がっているのがわかる。
まあ、他のドワーフたちも同様に顔を真っ赤にして騒いでいるから問題はないのだろう。
「主役は俺じゃない。お前らドゥエルの民だよ。俺たちはあくまで手伝いに来ただけだからな」
「ふふ、あなたのそういうところ素敵だと思います」
アインとギムリが微笑む。その目には確かな尊敬の念がこもっており、少し気恥しさもあり話題をかえる。
「それでいったいどうしたんだ?」
「その……私たちの今後なのですが、ドウェルに残ろうと思います」
「そうか……」
元々二人はドウェルまでの道案内を頼んでいるだけだった。だから何の問題もないのだがやはり寂しいと思ってしまうのは我儘だろうか?
「そんな顔をするでないわ!! わしらドワーフとてせっかく新しい道へと進もうとしているんじゃ。色々と考えているんじゃよ。そこでお前さんに話があるんじゃ」
「新しい道……?」
聞きかえすと視線を感じ、そちらを振り向くとアルヴィス様が歩いてくるところだった。
「少し別室でお話をさせていただいてもいいかな?」
そして彼は俺に微笑みながらそんなことをいったのだった。
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