82.ワーグナー
「ニールなのか? くっ……」
こちらに気づいたワーグナーが体を動かそうとするも激痛が走ったのか、辛そうに顔をしかめる。その体はもちろんのこと、足の傷が特にひどく血だらけになっている。
鉱山アリの一撃をうけてしまって逃げれなくなったところを囲まれたのだろう。それよりもだ……
「持って行ったはずの魔法銃剣はどうしたんだ? その銃はグレイス様があえて市場に流した旧式だろう?」
「それは……」
気まずそうに顔をそらして押し黙るワーグナー。どうやら言いたくないような事情があるようだ。ニールはため息をつきつつも、彼に声をかける。
「いいから蒸気自動車に乗れよ。そんな傷じゃ歩けないだろ?」
「いいのか? 俺はお前らを裏切ったんだぞ」
「それでも……お前は一時的には仲間だったろ、こんなところで死なれたら寝覚めが悪いんだよ。あ、念のため武器は全部俺によこせよ」
ニールとて甘いという事はわかっている。だけど、放っておけなかったのだ。一時的とは言え仲間だった彼を見捨てるなんてできなかったのだ……
「……魔法銃剣は俺の上司に奪われて……そいつは一回り大きい鉱山アリに殺されて奪われちゃったんだよ……」
「な……!?」
その言葉を聞いたニールの脳裏に先ほどカイルと一緒に対峙した鉱山アリのことが思い出される。あの頑丈な体は超ミスリルを食べたからではないだろうか? そう考えればあの頑丈さも納得がいくというものだ。
超ミスリル合金は魔法への耐性もミスリルよりもはるかに硬い。カイルは大丈夫だろうか?
「ああ、ニールの想像通りだと思う……そして、あいつはグレイス様の資料の通り新しい女王を見つけて自分だけの巣をつくろうとしているんだと思う。俺はせめて防ごうと思って女王アリを倒そうしたんだが、このざまだ……」
後部座席からワーグナーの悔しそうな声が響いてくる。ぼろぼろの彼はなんでこんなところに一人でいたのだろうか?
「何やってんだって顔してるな……だけど、俺だって別にドゥエルに恨みがあるわけじゃないんだよ。ドワーフや皆が危険になりそうなのに放っておけるかよ」
「そうか……お前は……」
ワーグナーがなんでグレイス様を裏切ったのかなんてわからない。彼は貴族で自分は平民だ。色々としがらみもあるだろうし、ひょっとしたらお金に目がくらんだのかもしれない。
だけど、今彼がここで命をかけて戦っていたのは真実なのだ。
「なあ、お前は新しい女王アリの居場所がわかるのか?」
「ああ……だいたいだけどな」
「だったらそこに案内してくれ。手柄はお前にもわけてやる。そうすれば、ゲオルグのもとに戻った時もやりやすいだろ?」
どんなことが正解かなんてニールにはわからない。だけど、今は女王アリを倒すことがベストだろう。ワーグナーは少し黙っていたが、ようやくうなづいた。
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『処刑フラグ満載の嫌われ皇子のやりなおし~ギロチン刑に処され死に戻った俺ですが、死にたくないので民に善行を尽くしていたらなぜか慕われすぎて、いつのまにか世界を統べる王になっていました~』
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ギロチン刑に処されタイムリープした皇子が、処刑から逃れるために周りに優しくして言ったら、なぜか皆に理想の王とあがめられるようになる勘違いものです。
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