80.カインの正体
「くっそ、あいつがグレイス様が言っていた自我が強い個体ってやつか!!」
ニールは目の前の信じられない光景に思わず絶叫をあげていた。ミスリルの体すらも貫くはずの魔法銃剣はすべてはじかれるうえに、急所を狙っても体を逸らされて交わされてしまうのだ。
こうなったらこの蒸気自動車で……
「待ちなって、君のそれは最終兵器だぜ。肝心な時に使うべきだ。おそらくやつを覆っているのは超ミスリル合金じゃないかなぁ……どこかで銃を拾って食べたんだろうねぇ……」
「そんな魔法銃剣は完全に管理を……」
カインの言葉に反論をしようとして……ワーグナーの事を思い出す。彼はもしかしたら、このアリに襲われたんじゃ……
「ふぅん……何か覚えがあるようだねぇ。だけど、僕には関係のないことだ。そんなことよりも、こいつが街に来たらルビーが危険な目にあう。それだけは阻止をしないとねぇ!!」
カイルの魔法銃剣から放たれる圧倒的なまでの魔力の込められた弾丸が周りの鉱山アリたちを射抜きその命を奪っていく。
「ほらほら、君は知能が高いんだろう? このままじゃ君は大丈夫でも、お仲間はみんな死んでしまうぜ!!」
「---!!」
カイルの挑発に答えるように鉱山アリが鳴いて、元来た道を戻ろうとした時だった。鉱山アリの足元が凍てついていく。
「カインなんで……?」
あのまま逃がしていれば鉱山アリは逃げてくれるはずなのに……そんなニールの疑問には答えずにカインは鉱山アリをあざ笑うように挑発する。
「おやおや、そっちは女王アリの巣じゃないよねぇ……大切な大切なママを守らないでどうするつもりなのかな?」
「--!!」
「それともその先にはもっと大事なものでもあるのかな? 例えば……新しい女王様とかさ!!」
その言葉に反応したわけではないだろうが、鉱山アリが氷を引っぺがしてすさまじい勢いでカインの方へと向かってくる。
「カイン!!」
「いいから君らはそっちへ行けよ!! 新しい女王アリを殺せ!! 氷の蔓よ、拘束をせよ!!」
再度鉱山アリを束縛しようとした氷の蔓だったが、今度はそれを強靭の力をもつ腕ではじく。そして、はじかれた氷がカインの仮面にぶつかり砕くとその素顔があらわになる。
「カイン……いや……カイル……?」
「はっはっはー、マジか!! 魔法に対抗したっていうのか!! 二回目は効かないんだな……だけど、相手が悪かったね……僕のスキルは『魔聖』……ありとあらゆる魔法を使えるのさ!! 大地よ、我らが敵を埋葬せよ!!」
カインの正体を知ったニールは言葉を失っていると……地面が隆起して、まるで牢獄のように鉱山アリを囲んだ。
だけど、それも長くはもたないだろう。そもそも魔法自体鉱山アリの動きを止めることには成功しているがダメージを与えているようには見えない。
「ああ、ばれちゃったか。まあ、今は君らの仲間だから安心しなって……それよりもさっさと行けよ。君たちを巻き込んでしまうし、グレイスたちが女王アリを倒してもまた新しい奴が現れたら意味がないだろ」
「カイル……でも……」
「ふふ、君は僕のことが嫌いなはずだろ? 死んだらちょうどいいじゃないか? それに一度言ってみたかったんだよね。ここは僕に任せて先に行けってさ!!」
カイルは決め顔でそういった。そして、魔法に対抗する魔物を目の前にワクワクしている彼の顔はどこかグレイスに似ている。そんな風にニールは思うのだった。
カイル君はどこまでやれるのか……
新作を投稿しました。
ギロチン刑に処されタイムリープした皇子が、処刑から逃れるために周りに優しくして言ったら、なぜか皆に理想の王とあがめられるようになる勘違いものです。
自信作です。よろしくお願いします。
『嫌われ悪役皇子のやりなおし~人の心がわからないとギロチン刑に処され、死に戻った俺は、保身のために『善行ポイント』を貯めていたら、なぜか皆に慕われ『理想の聖王』と呼ばれるようになっていました~』
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