79.ニールとカイン
「いやぁ……暇だねぇ。なんか世間話でもしようか?」
そんな風に話をふってくる目の前の青年の力にニールは驚きを隠せなかった。何匹かやってきた鉱山アリをこの男は魔法銃剣によって瞬殺していたのだ。
その出力はほかの兵士が使った時よりもはるかに高く、彼の魔法の才能を証明していた。
下手したらヴィグナ様より強いんじゃ……
そんなことすら思えるほどに圧倒的だったのだ。ただものではないと本能が訴えている。そして、何か見覚えがあるかのような……
「僕はメイド服が好きなんだけど、君は何が好きかな? あの服をきればどんなに気の強い少女も、貴族の令嬢だって、僕の愛しい使用人になるからね。奉仕をするという気持ちが具現化したあの服を着ているのを見ると僕の味方だと思えるから安心できるんだよね」
「そうですね……俺は美人な女性に痛めつけられるのが好きですね。何とかいうか、自分が生きているって思えるんですよね」
嘘はいけないなと思い性癖をカミングアウトすると、カインは仮面越しにクスリと笑う。
「はは、君もなかなか良い趣味をしているねぇ。そして、その目は活き活きとしている。アスガルドは……グレイスの統治下での暮らしはどんなかな?」
「それは……」
一瞬どうこたえようか迷ったが、相手が冒険者ということを思い出し本音で語ることにした。それにこの人はグレイス様が推薦してくれたのだ問題はないだろう。
「俺はグレイス様にアスガルドで住ませてもらって毎日が楽しいです。そもそも俺は難民でしたからね……本来だったら妹と一緒に飢え死にをしてもおかしくはなかったんです。感謝しかありません」
「ふぅん……その結果がこんな僻地で戦わされているんだよ。それでも感謝しているのかな?」
仮面越し目を細めるカインの言葉にニールは少し考えて……頷いた。
「もちろんです。今回だってドゥエルの人々を守るために戦っているんです。誰かを傷つけるだけよりもよっぽどグレイス様らしくて俺は好きですよ」
「そうか……誰かを守るために戦うか……それだけで生きていけるのは何かを作り出すことができるからなんだろうねぇ……それがグレイスのアスガルドなのか」
「カインさん……?」
ニールの言葉にカインは何かをかみしめるように言った。その様子は先ほどまでの軽薄さは消えており、少し心配になる。
そんなニールの様子に気づいたのかカインは話題を変えた。
「ちなみに君の妹さんは何をやっているんだい?」
「ああ、グレイス様の屋敷でメイドをやっていますけど……」
「ほう、今度紹介して……」
「なんかこわいんで絶対嫌です!!」
「蟻がきたぞーーーーー!!」
軽口は終わりとばかりにニールとカインはそれぞれの武器を構える。相手は数匹か……大した敵ではないなとおもっているとそのうちの一匹がやたらとでかいことに気づく。
「なんだあいつ……攻撃が効かないぞ!!」
そして、仲間の言葉に目を見開いた。その大きな鉱山アリは魔法銃剣の弾丸をはじいたのだった。
メイド萌えとドMはどうなってしまうのか……




