74.鉱山アリ
それは唐突に現れた。ワーグナーはゲオルグのつれてきた兵士と合流し、鉱山を進んでいた。ゲオルグとその親衛隊が率いている本体とは違い、彼の部隊は側道の偵察が任務なことと、彼のもってきた地図がかなり正確だったようで、大した戦いもなく進んでいく。
「はっはっは、この地図は素晴らしいな。それにこの魔法銃剣とかいうやつもいい。この力があれば俺が手柄を立てられそうだぜ!! やはり、俺の判断は正しかったなぁ」
「はい、そうですね……」
むかつく上司によって、手柄と魔法銃剣を奪われたワーグナーは複雑な感情を押し隠して答える。そう、彼がグレイスの所から持ってきた魔法銃剣は目の前の男に見つかり彼に奪われてしまっているのだ。
文句はあるが、力があるものこそが正義のこの国では、戦闘力も権力も上である彼に逆らうことはできなかったのだ。ほかの人間に相談しようにも、目の前の男はワーグナの派閥でも上の貴族でもあるのだ。余計なことをすれば彼の家族にも迷惑が掛かると思うと何も言えなかった。
「はは、固いとはいえしょせんは魔物だな。俺様の敵じゃねえ」
はぐれていた集団か、三匹の鉱山アリが遠くで鉱物を掘っているのがみえた。舌なめずりをしながら彼は魔法銃剣で一匹の鉱山アリの急所を射抜いて、近づいてきた一匹を銃剣の剣で貫く。
その間にワーグナー残りの一匹を倒す。ヴィグナの元で受けた訓練は伊達ではない。
「うおおお。すげえ、隊長もだけどワーグナーも強くなってるじゃねえか!!
「本当だぜ、急所をちゃんと貫いたもんな」
ほかの兵士たちが称賛するのを聞きながら、ワーグナーは隊長の戦いっぷりを見て、つばを飲み込む。この男の性格ははっきり言ってくそだ。
だが、戦闘のセンスは本物である。現に大した訓練もなく、彼は魔法銃剣を使いこなし、鉱山アリの急所を射抜いているのだから……
「このようすなら楽勝だな。よし、もう少し奥に進むぞ」
「ですが、我々の任務はここらへんを見回って、街に鉱山アリがこないようにすることでは……?」
「はっ、そんなこと言っているからお前はいつまでも出世できないんだよ!! そんなもの結果で覆せばいい。大量の鉱山アリを倒せば、結果的にドゥエルを守ることになるだろうが!!」
部下の制止も隊長には聞く耳をもたない。そのことがわかっていたワーグナーは黙って、彼についていこうとして、通路をすさまじい速さでかけてくる片腕が欠損している鉱山アリを見て違和感を覚える。
「隊長!! あのアリはおかしいです。気を付けてください!!」
「あ? なんだあいつ。でけえな。ボスか?」
その鉱山アリはまっすぐにこちらに向かってきたのだ。ほかの鉱山アリはこの距離ならばまだ鉱物を得ることを優先するか、女王を守ることを命令されているはずなのに……
「まさかこいつはグレイス様のいっていた自我の強いっていう個体じゃ……」
「今度は俺が倒すぜ!!」
先ほどの戦いを見て、高揚していたのか兵士の一人が鉱山アリに斬りかかって……そのまま無事な方での腕であっさりと首を狩られて吹き飛んでいく。
「な……、なんだこいつは!!」
あっさりと部下が殺されて、隊長が魔法銃剣を放つも、鉱山アリはわずかに体を動かして、急所から攻撃を逸らす。
その行動には明らかな知性を感じられる。
「こいつ、強い!! 隊長ここは一旦引いて……」
「バカ言ってんじゃねえ。こういうのを倒してこそ、戦争だろうが!!」
それが最後の一言だった。隊長の鋭い突きを残った腕で受け流し、そのままの流れで首を掻っ切ると、そいつは血をまき散らしている隊長から魔法銃剣を奪い取いとった。そして、悶えてる隊長に興味などないかのようにして、後退していく。
「大丈夫ですか!? だれか治癒魔法かポーションを!!」
ワーグナーは慌てて隊長にかけよるも、おそらく助かりはしないだろう。そして、あの魔法銃剣には超ミスリル合金が使われていることを思いだし……ワーグナーは嫌な予感を覚えるのだった。
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