73.ゲオルグとイレギュラー
ゲオルグたちの部隊は兵士をいくつかの隊にわけて進んでいく。密偵が手に入れた地図はとても優れたものであり、彼らの部隊は特に問題もなく鉱山を進行していた。
「この地図の制度はなかなかですね、ゲオルグ様」
「ああ、そうだな。グレイスのやつもたまには役に立つようだな」
予想よりも楽な進行に部下の騎士が安堵の吐息と共に地図を称賛するのを聞いて適当に返事をする。確かにこの地図はとても役に立っている。だが、グレイスがそれを作るのにどれほど苦労したかは想像もつかない。
まあ、俺たちはそれを何の努力もしなくても手に入れることができる。そう……力があれば、簡単にな!!
今回の援軍の報酬として手に入れた強力な魔力を秘めた金属であるオリハルコンで作られた剣を手に取ってにやりとわらう。
結局力のあるものが最後は勝つのだ。この名剣も、本来はドゥエルを建国した時に人とドワーフがお互いの手を取った記念として作られたものだが、力なきドウェルの王は手放すこととなり、自分の手に渡った。欲しいものがあれば奪えばよいのだ。ゲオルグは……父の考えが正しいという事を確信する。そして、それに反抗しているくせに、父に自分とおなじ命令を下されているグレイスの顔を思い出して不快な気持ちになる。
「アリだぁぁぁ!!」
そのタイミングでちょうど前の方から悲鳴が上がった。どうやら鉱山アリと遭遇したようだ。この地図にも間違いがあったということだろうか?
「落ち着け!! 訓練通り、隊に分かれて進め!! これからは鉱山アリどもとの戦いは避けられないと思え!!」
「は!!」
ゲオルグの一言で一瞬浮足立ちそうになった部下たちが落ち着きを取り戻す。伊達に実戦経験が豊富なわけではないのだ。
五人で一隊を組んである程度戦ったら後続の部隊と交代を繰り返して、ゲオルグの部隊は鉱山アリを倒して進んでいく。狭い坑道では一気に大人数で進むことはできない。だから、ゲオルグは隊をわけて疲労したり、誰かが死んだら元気な部隊を常に交代させてすすませているのである。
「ふん、狭い坑道で大人数で戦う不利は知っている!! それに、指揮をするのは俺の親衛隊だ。魔物ごときに負けるはずがない」
彼が指揮を任せている連中はゲオルグにこそ劣るものの戦闘豊富な親衛隊である。その実力はカイルすらも三人いれば差し違えることはできるとゲオルグは想定している実力者である。
そして、現にゲオルグたちはグレイスの想定外の早さで進んでいた。そのまま快進撃が進むかと思われたが、その終焉はいきなり始まる。
「ぎゃぁ!!」
それは突然降ってきた。いや、おそらく天井に張り付いて彼らを待ち伏せしていたのだろう。一匹の鉱山アリが突如空から降ってきて、ゲオルグの兵士たちの間に落ちてきたのだ。
その鉱山アリは通常よりも一回り大きく、その瞳にはどこか知性のようなものを感じる。そして、好き勝手暴れてどんどん部下たちを切り裂いていき……斬りかかった親衛隊の一人すらもころされる。
「お前ら道を開けろ!! 俺がやる!!」
その一言で部下たちが道を開けてそこをゲオルグは駆けて、鉱山アリに斬りかかる。
きぃん!!
という金属音と共に、彼の一撃が鉱山アリの硬い腕によって受け止められて……そのまま切り裂いた。
「ははっ!! これがオリハルコンか!!」
ミスリルでできた鉱山アリをまるで紙のように切り裂く剣に思わずゲオルグは感嘆の声を漏らす。
腕で受け止めたおかげで、わずか剣速がにぶったこともあり、鉱山アリはその身を引いて直撃は避けたが、ぼとりと剣を受け止めた腕が地面に落ちる。
とどめを差そうとゲオルグが再び剣を構えると、その鉱山アリは彼の部下たちを蹴散らしながら一目散に逃げだして、他の鉱山アリの群れの中に紛れてしまった。
「巨大な鉱山アリを見つけたら警戒せよ!! 場合によっては俺は呼べ!!」
自分の身を優先するという他の鉱山アリとは違う行動に、ゲオルグは違和感を覚えながらも、進軍を再開する。そして、今度は彼も前線に紛れて鉱山アリを切り刻む。
この時彼は新しい武器の強さに高揚していたのだろう。戦場でのイレギュラーを放置することは危険だと戦闘豊富な彼ならばわかっていたのに……
この見逃したアリが何をするのか……
あとゲオルグさん戦いに関しては結構有能だったりします。まあ、政治はできるかわからないですが……
また、新連載を投稿しました。読んでもらえると嬉しいです。
『レベルダウンから始まる召喚無双〜俺だけ使える『マイナス召喚』は経験値を対価にあらゆるものを召喚するチートスキルでした。『英雄』『神獣』『聖剣』『魔王』を召喚し最強へ至る~』
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よろしくお願いします。




