72.
ゲオルグたちが動き出したという話を聞いた俺たちは大急ぎで準備を始める。やつらが中核に攻め込むタイミングで俺たちは手薄になるだろう女王アリの元へと目指すのだ。
「じゃあ、ニールは万が一敵が来たときはここの防御は頼むぞ」
「はい、任せてください。こいつさえいれば鉱山アリが来たって敵なんかじゃないですよ!!」
ニールが得意げに蒸気自動車を指さして答える。奥に行けば行くほど狭い道が増えることもあり、彼にはドゥエルの防御を頼んでいるのだ。
万が一鉱山アリが防御よりも攻撃を重視した時に備えてのことである。
「それでワーグナーは……」
「ああ、もしも、あいつが帰ってきたらその時の態度で決める。場合によっては……あきらめてくれ」
「はい……わかってます」
俺の言葉にニールが険しい顔でうなづく。まあ、こいつはワーグナーともそこそこ仲良しだったのだ。情が移っているのもわかる。だけど、俺にも守るべきものがある。もしも、帰ってきたときのあいつの心理状態や、またスパイをしようとしたらシルバと同様の目にあってもらう必要がある。
だって、俺はアスガルドの領主なのだから……
「やあやあ、辛気臭い顔をしてどうしたのかな? こういう時はリーダーは元気な顔をすべきだよ。そうでもなければみんな不安になっちゃうぜ」
おどけた声を上げているのはやってきたのはカイルである。こいつはニールを見ると一瞬目を見開いてにやりと笑った気がする。
そういえばカイルはニールをぼこしていたんだよな……
「心配かもしれないけどさ、グレイスも君も元気そうにしなきゃ。負け戦に行くわけじゃないんだ。兵士たちの士気にかかわるぜ。それに……そういう心配は勝ってからするもんだ。だって、今君たちが気にすべきは密偵君の事じゃなくて、鉱山アリなんだからさ。足元をすくわれちゃうぜ」
カイルはかつての自分を思い出したかのように自虐的な言った。それよりもだ……
「お前俺たちの聞いていたのか?」
「ふふ、魔法を使えば風が声を運んでくれるのさ。さて、少年。君はその蒸気自動車とやらで戦うのだろう? ならば僕にその魔法銃剣を貸したまえ、誰よりも……それこそ、ヴィグナよりもうまく使ってみせようじゃないか」
「えっと……グレイス様、俺はどうすれば……?」
どこか芝居がかった様子のカイルにニールが助けを求めてくる。正直カイルの力は魅力的だ。そして、こいつはルビーに大きな借りがあるようだし、女王アリを倒すよりも街を守る方が一生懸命戦ってくれるだろう。
だけど、俺はこいつを信じられるか?
そう考えてこいつがルビーと一緒に過ごしていた時の優しい笑顔が……俺の知らないカイル=ヴァーミリオンという男の表情が思い出される。
「いいだろう。そのかわり、お前はニールの部下として働け。それで構わないならば魔法銃剣も貸そう」
「ふふ、そんなの当たり前じゃないか。僕はただの流れの冒険者だからねぇ。兵士様の下で働くなんて、お手の物さ」
そんな風に皮肉気に笑う彼に握手をして嘘をついていないか試す。
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元王族
カイル=ヴァーミリオン
年齢:23歳
得意分野:全属性魔法
スキル:魔聖
情報:ヴァーミリオン王家の次男であり、天才的な魔法の使い手。彼のおかげで国の魔法の研究は十年は進んだとまで言われる。
魔法を使えない人間を見下してたところはあったが、本当に有能な人間には魔法を遣えなくても手を差し伸べる能力を基準とした選民意識が高い人間だった。
敗北により、プライドは砕かれて、今はルビーのために何かをできないか考えている。メイド好き。
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まあ、この様子ならば大丈夫だろう。
「ニール……こいつに魔法銃剣を渡してやれ。ルビーのためにも頼むぞ。カイン」
「ああ、もちろんだ。ここは守るよ。それこそ自分の命に代えてもね」
そして、俺たちはドウェルの守りを彼らに託し戦場へと向かうのだった。
カイル君敵にしたら厄介ですが仲間にすれば心強い……
また、新連載を投稿しました。読んでもらえると嬉しいです。
『レベルダウンから始まる召喚無双〜俺だけ使える『マイナス召喚』は経験値を対価にあらゆるものを召喚するチートスキルでした。『英雄』『神獣』『聖剣』『魔王』を召喚し最強へ至る~』
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よろしくお願いします。




