71.
「グレイス、密偵は……ワーグナーは山を下りたようよ」
「そうか、作戦通りだな。これで地図がゲオルグにも伝わるだろう。間違った情報とも知らずになぁ!! ふははは、計画通りだ。あいつらがしばらく進んだタイミングでこちらも出撃するぞ」
夜遅くの俺の部屋で、ワーグナーの部屋を監視していたヴィグナが報告にやってきた。ゲオルグたちがやってきたのでそろそろ動くと思っていたが、予想通りだったようだ。
だけど……できれば、あいつにはアスガルドには好きになってほしかったんだけどな……
そんなことを思っていると俺の手を暖かいものが握りしめる。
「どうしたんだ? ヴィグナ……いきなりいちゃつきたくなったのか?」
「私の前では別に強がらなくていいのよ、グレイス」
彼女はいつもとは違う優しい笑みを浮かべながらわかっているとばかりに俺に語り掛ける。ああ、くっそ。やっぱり勝てないなぁ……
俺は素直に弱音を吐かせてもらう。
「そりゃあさ……計画通りだったよ……だけどさ、ワーグナのやつは訓練とかも結構一生懸命にやってくれてさ……ニールとも結構仲がよかったんだよな……だからさ、ちょっとショックなんだよ……」
怪しまれないようにワーグナーが密偵だという事を知っていたのは俺とヴィグナ、ガラテアだけだった。そして、ヴィグナには監視をしてもらいながらも、俺もちょいちょい様子を見たりして、楽しそうに笑う彼を見て、少し情が移っていたようだ。
俺はそのままヴィグナの胸に顔をうずめると優しく頭をなでてくれる。柔らかい感触を感じていると優しい声が聞こえてくる。
「ショックを受けたなら、こんな風に甘えていいのよ。あんたが普段はかっこつけているのに、実はヘタレだっていうことを知っているもの」
「ああ、そして俺はお前が普段はツンツンしているのに優しいことを知ってるぜ」
「うふふ、ありがとう。それで……これからどうするかもちゃんと考えているのでしょう?」
優しい声色で質問をする彼女に俺は答える。
「ああ、もちろんだ。ゲオルグの事だ。最初は地図の信ぴょう性をさぐるために少数を送るだろう。そして、地図がただしいと判断したら、それぞれのルートから制圧させるはずだ。そして、鉱山アリたちにやつらが注意がいったら俺たちは少数精鋭で女王アリの元へと向かう」
「ふぅん、あいつらをおとりにするってわけね。だけど、そのまま順調に行っちゃう可能性もあるんじゃない?」
「それはないな。鉱山は元々狭いから大人数での制圧にはむいていない、それに、あの地図は前半こそ正しいが奥につれていくにつれて、どんどん鉱山アリが多いところに誘導するようにかいてあるからな」
そう、ばれにくいウソというのは本当の情報も含めることにある。だから、奴らが地図を信じた時に発動する罠を仕掛けておいたのだ。
明日の朝にはゲオルグたちは地図の正しさを試すために、何人かの兵士を鉱山に突入させているだろう。あまり猶予はない。こちらも女王アリを倒すための準備をしなければ……
翌日の話だった。最終打ち合わせのために俺はドワーフたちやヴィグナと打ち合わせるために会議へ向かおうとしている時だった。
「グレイス様、お話があるのですが、いいでしょうか?」
「ん? ああ、まだ会議までの時間があるから大丈夫だぞ」
深刻そうな顔をしているニールの様子に足を止める。一体どうしたというのだろうか?
「ワーグナーがいなくなったのはもう知っていますよね? あいつの部屋を見たらこんなものがあったんです」
「これは……」
彼が差し出したのは手紙だった。その内容はこれからゲオルグの軍がやってきて鉱山を制圧にかかるということ、そして、彼が救援するかわりにドゥエルの宝剣であるオリハルコン製の剣をもらう手はずになっていることが書いてあった。
「オリハルコンだと……」
その鉱石の名前に俺は思わず驚愕の声を漏らす。だって、それは伝説とまで言われる強力なで珍しい鉱石なのだから……そして、そんなものでできた剣を持った『剣聖』であるゲオルグがどれほどまで厄介になるか想像につかないのだ。
やはり金属系でオリハルコンは強そうなイメージなんですよね……
カクヨムにて新連載をはじめました。
不遇冒険者の成り上がりものですー
レベルダウンから始まる召喚無双〜俺だけ使える『マイナス召喚』は経験値を対価にあらゆるものを召喚するチートスキルでした。『英雄』『神獣』『聖剣』『魔王』を召喚し最強へ至る~
https://kakuyomu.jp/works/16817330651384780269
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