69.
ニールからゲオルグたちがやってきたという報告を受けた俺たちはヴィグナとガラテアと共に作戦会議をしていた。ちなみにゲオルグの部隊が来たという情報は人の王のいる街で生活をしてるドワーフたちから情報が流れたらしい。そして、城では歓迎の宴がひらかれて御馳走がならんでいるらしい。
民衆たちは必死に飢えをしのいでいるというのにな……
「私たちの時は塩対応だったていうのに、なんかムカつくわね」
「まあ、しょうがないって。あいつらにとって俺たちは飾りみたいなもんなんだからさ。それよりも……あいつらすっかり勝った気でいやがるな……鉱山アリがどれだけ強力な魔物かもわかっていないだろうに……」
すっかり、勝利ムードのやつらのことを考えて頭を抱えたくなる。確かにゲオルグと、その親衛隊は強力だ。カイルが魔法使いとしての頂点だったようにゲオルグも剣技に関しては常軌を逸した力をもっている。
「マスター、ゲオルグというかたはどれくらい強いのでしょうか?」
「ああ、性格は終わっているが、剣の実力は本物だよ。王国一の剣の使い手といっても過言じゃない。おそらく超ミスリル合金を切り裂くこともできるだろう」
「そうね……悔しいけど昔の私でも剣では一回も勝つことはできなかったわ……」
俺の言葉に昔のことを思い出したのか、ヴィグナが悔しそうに顔をしかめる。もちろん彼女は魔法と剣を使うので純粋な剣技だけで負けても不名誉ではないのだが、それではプライドが許さないらしい。
「大丈夫だ、魔法銃剣を持っている今のお前の方が強いよ」
「あたりまえでしょう……でも、ありがとう」
俺の言葉に嬉しそうに顔を赤くしながらうなづくヴィグナ。そんな俺たちの様子をガラテアが楽しそうににやにやとみているの気づく。
「それで……私たちはどうするのよ。あんたのことだから、どうせ意地の悪い作戦を考えているんでしょう?」
誤魔化すようにヴィグナが咳ばらいをして、俺に訊ねてくる。その瞳には確かな信頼の色がある。そして、それはヴィグナだけでなく、ガラテアからも感じる。
まったく二人とも俺を信用しすぎじゃない?
だけど、誰かに期待されることはいやじゃない。それが親しい二人からならばなおさらだ。
「ゲオルグはあいにく戦いに関しては馬鹿じゃない。せっかく連れてきた大人数の兵士が鉱山という狭い場所では、不利だという事もわかっているだろうし、敵の情報を知ることの大事さも知っている。だからそれをおしえてやるんだ」
「なるほど……偽の情報を教えるってことですね、マスター」
「いやいや、親愛なる兄上にそんな失礼なことはしないさ。ただ……手違いでちょっと情報の足りない地図を渡してしまうからもしれないけどなぁ」
「やっぱりそういう感じなのね……」
「ふふふ、マスターが楽しそうでなによりです」
俺がにやりと笑うとヴィグナが呆れたというように頭を抱える。でも、しょうがないだろう。これが俺の性分なのだから。
そして、ヴィグナももう慣れたとばかりに俺と同じように悪い笑みを浮かべる。
「それでどうやってこの情報を教えるの? まさか、馬鹿正直に教えるわけではないでしょう? あっちも警戒してるわよ」
「ああ、もちろんだ。さいわいうちにはゲオルグを敬愛する兵士が混じってるからなぁ。そいつが勝手にやってくれるだろうさ」
「ああ、だからわざわざ今回の戦にゲオルグの密偵もつれてきたのね」
ヴィグナの言葉に俺はにやりと笑ってうなづいた。俺の『世界図書館』で人間をしらべることもできるというのを奴らは知らない。
完璧に俺達の中に潜り込んだと思っているだろう、だから、それをりようしてやるのだ。
「ヴィグナ、ガラテア、兵士とドワーフに、鉱山アリと決戦の準備をはじめるように伝えてくれ。まるでゲオルグがきたから焦っている様子で頼むぞ」
そうして、最終決戦がはじまる。
やっと戦いがはじまる……




