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68.

俺はヴィグナと共にアインとギムリがちょっとした実験をしている場所へと向かう。彼らには世界図書館で得た情報を元に作成した地図を渡してあり、細かい道を通って、色々と試してもらっているのだ。



「二人とも無事だよな、かなり危険な任務なんだけど大丈夫かな……」

「彼らはここの出身の上に、冒険者としてもやってきたのよ。それに彼らの方から志願してきたのよ、それを疑うのは侮辱になるわよ」

「そうだな……ヴィグナの言う通り二人を信じよう」



 そんなことを言っていると、遠目に人目が見えてきた。すっかり薄汚れてしまった鎧を着た細身の女性と、ずんぐりむっくりとしたドワーフが一息ついているのが見えてきた。

 どこか鉱山アリがいるかわからないので、軽く手を振ると彼らも気づいてくれたようだ。二人とも元気そうである。



「危険な任務なのにありがとう……ふたりとも怪我はないようで何よりだ」

「元々私たちが巻き込んだんです。これくらいはやらせてください。グレイス様の指示通り、鉱山アリの巣に近づいて、私たちと、超ミスリル合金のどちらかを優先するかを確かめておきました」

「ふふん、鉱山は儂らドワーフの庭じゃからな。地図さえあればアリなんぞにはまけんわい」



 どや顔をするギムリに苦笑しながら、アインがしるしの書き足された地図を差し出してきた。それは一定の間隔で赤丸がつけられており、巣に近づいていき、とある距離から丸のかわりにバツに変わっている。



「グレイス……これは?」

「ああ、俺の世界図書館では鉱山アリの習性はわかるが、群れの主である女王アリの性格まではわからないからな。どこまで近づけば、鉱山アリたちがえさよりも撃退を優先するか知っておきたかったんだよ。それにしても、流石だな。巣の近くは鉱山アリばかりだっただろ?」

「ふふふ、グレイス様の地図のおかげですよ。久しぶりの冒険者任務ですが、お役に立てたようで何よりです」

「いや、でもここまでいくとは思わなかったぜ。流石だな」



 想定していたよりも巣の近くまで調査してくれた二人に感謝の言葉をいうと、アインが照れくさそうに笑う。実際かなり危険な任務だった。ガラテアたちと様子を見た時には巣の近くは鉱山アリばかりだったというのに、彼女たちはそれよりも深く進んでくれていたのだ。

 これで……どこまで深入りしたらやばいかがわかった。あとは偽の情報を流してゲオルグたちをはめるだけだ。



「それよりも、この馬鈴薯はもっとないのかのう。これを食べるといくらでも働けるようになる気がするんじゃ。あと、無性に酒がほしくなるぞい」

「師匠……さすがにここでお酒は自重してください。ですが、この食べ物は本当に不思議ですね。24時間働けそうです」

「いや……さすがにそこまでは働けな……いや、ボーマンと発明したとき働いていたな……馬鈴薯やっぱりやべえわ」

「ここまですごいと怖くなってくるわよね……」



 馬鈴薯の効果に俺たちが苦笑していると、地図の一部に△が書いてあるのに気づく。巣からだいぶ離れており、この周囲はすべて丸だ。



「アイン……このしるしは……何かイレギュラーがあったのか?」

「はい。街に戻ったら詳しく報告しようと思ったのですが、ここの鉱山アリだけは様子がおかしかったんです。途中までは全員えさにつられていたのですが、ここにひときわミスリルに覆われた鉱山アリがいて、私たちを見つけると、即座に襲ってきたんです」

「しかも、普通の鉱山アリどもよりも素早かったぞい。魔法でなんとか時間を稼いで逃げたがな」

「なるほど……世界図書館にも、時々自我が強いアリがいるってあったな……そいつには警戒しないとな……」



 基本的には鉱山アリたちの習性を利用して戦略を考える予定だが、このイレギュラーがどうなるか……ギムリもアインも決して弱くはない。調査がメインとはいえ彼らが撤退をしたということはそれなりに強敵なのだろう。

 あとでここら辺はガラテアも含めて偵察にいってもらったほうがいいかもな……



「二人ともありがとう。この情報を元に作戦を考えてみるよ」

「わかりました。私はもう少し鉱山アリたちの分布地を調べておきます」

「帰ってきたらうまい馬鈴薯と酒を楽しみにしているぞい」



 二人に別れをつげて、俺とヴィグナは街に戻ると何やら騒がしい。一体どうしたのだろうと思っていると、俺たちに気づいたニールが走ってやってきた。



「グレイス様、ヴィグナさんデートをしている場合じゃないですよ。大変なんです」

「別にデートじゃないわよ!!」

「ひっ……」

「流石に俺達もこんなときにデートはしねえよ。それで何があったんだ?」



 ヴィグナに睨まれて情けない悲鳴をあげるニールに苦笑しながら、要件を訪ねる。



「大変です、ついにゲオルグたちがやってきたんです」

「へぇー、なるほどな」


 ちょうど良すぎるタイミングに俺はその言葉に思わずにやりと笑うのだった。


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