3-20 決意
あれから三日後、街を悩ませていた男は警察に捕まった。
事件にあった僕達から念入りに聞き込み、犯人の特徴をしっかりと描いた直の似顔絵を警察に渡したのが功を奏したのかはわからない。
ともあれ、ニュースでさんざん賑わせていたあの事件はあっけなく解決。
そして後日、僕は東風荘の前で佇んでいた鳥子さんに僕はお礼をしに行く。
すると鳥子さんはこんなことを言う。
「おかしいですね、春くん。あんなツボ押しは私にしかできないことなんですよ」
「え、そうなんですか?」
「そうですよ。ついでに言うと師範なんて私にはいません。作り話ですね」
「え……」
魔性めいた微笑みでなげかけてくる鳥子さん。
でも、それだと不可解さが拭えない。
どうしてあの男は追ってこなかったのか。
「それは君が本気でどうにかしようと思えたからですよ」
「え? どういう意味ですか?」
「俗にいう気合の差です」
「気合。そんな問題でしょうか?」
「はい、世の中とはそういうものなんです」
鳥子さんがそう言うのならそうかもしれない。
僕は鳥子さんとの回想を思い浮かべながら、街の景色を見渡す。
今、僕達三人は屋上に来ていて、昼休みを満喫中。
直はいつもどおりスケッチ。
綾と僕は富士山の見えるスポットで会話をしている。
「春」
「ん?」
「私さ、思うの」
「何を?」
「私が私であることをわからせようと思うんだ」
「それってお嬢様じゃないってことを示すってこと?」
「そう。家族にもクラスにも」
自信を持って言う綾。
何が綾に変化をもたらしたかはわからない。
「春はどう思う?」
「いいんじゃない。綾の思うままにすれば」
「うん」
綾がこくりとうなずく。
「じゃあ、秘密の遊戯は?」
「そ、それはまだ言えない」
「そっか」
「つまり、春にいっぱい迷惑かけるつもり」
「なら、これからも大変だ」
「そう、大変。だから覚悟していてよね」
この空のように晴れ渡った笑顔で言う綾。
僕はなんとも言えない気持ちでそれを見守る。
いつまでこの秘密の遊戯が続くのか。
それはわからない。
けど、それでこそ僕にとっての幼馴染との付き合い方。
今ではこう思っているのだ。
一応話の区切りとしてここで完結しました。
そしてこの続きを書くかどうかは、実は迷っています。
続きを読みたいというコメント、あるいはメッセージなどがあれば、なんでも良いのでよろしくお願いします。
要望があれば、いきなり続編を始めるかもしれません。
まあ、あればですが(苦笑)
それでは、最後まで『幼馴染の付き合い方』に目を通してくださってありがとうございました。




