3-7 遊園地(3)
六駅はほんとにすぐだった。
十五分かそこらで目的の駅に着いた僕達は、電車から降りて改札を出る。
久しぶりにこの場所に来たのでお互いに道がわからなかったが、案内の看板や人の波などを利用しながら遊園地にたどり着く。
そしてフリーパスを買って、入口のゲートをくぐる。
そしたらもう、そこは別世界だ。
「わー」
と、楽しそうな絵里ちゃん。
「まさしく遊園地だね」
「はい。この感じ久しぶりです」
絵里ちゃんがその場で一回転して喜びを表す。
すると、フレアのスカートがふんわりと揺れる。
「早く行きましょうよ、先輩」
「はいはい」
絵里ちゃんは僕を先導するように引っ張っていく。
「それで先輩。どうします?」
「ん? 何が?」
「やっぱりしょっぱなからジェットコースターでいきますか?」
にやりと含み笑いをする絵里ちゃん。
「いや、その前に園内を隈なく歩き回ろうよ」
「歩き回る?」
「うん。どんなアトラクションがあるか確認したいからね」
「そっか。それ、いいですね」
納得顔の絵里ちゃんがうんうんとうなずく。
「先輩、頭いいです」
「そう?」
「はい」
「でも、そんなことは言われたこともないけどさ」
「そんなことないですよ。先輩は地味に賢かったりもします」
「地味に賢いとは、またわかりにくい」
僕がそう言うと、絵里ちゃんはくすりと笑う。
「地味っていうところがキモなんですよ」
「そうなの?」
「はい、そうです」
結局、そんな話をしながらも僕達は適当に進んでいく。
道なりに沿って進んだり、好きなところで右に左に曲がったりだ。
左右を見渡せば、いろんな種類の乗り物がある。乗り物だけでなく、おみやげ屋さんやゲームセンターなんかもあった。
「よし! これで私、どこになにがあるかを大体覚えました」
「す、すごい記憶力だね」
「そんなことないですよ」
「いや、すごいよ」
僕は素直に感心する。
「これを勉強に生かせたら完璧かもね」
「そうですね。でも、そんなにうまくはいきませんって」
絵里ちゃんは笑いながら言う。
「それよりも先輩。先輩は受験なんですね」
「あ、うん」
「どこの高校受けるんですか?」
「あ、それはね」
僕は絵里ちゃんに自分の受ける地元の高校の説明をする。
現役女子高生で『ジモティーズ』の一員である岩崎さんの情報では、その高校はかなり自由な校風らしい。部活動はたくさんのクラブが濫立するくらい盛んであり、行事も活発だという。
「じゃあ、私もそこを目指します」
「そんな簡単に決めていいの」
「はい、だって先輩が行くんですよね」
「うん。その予定だけど」
「だったら私も」
「いいの?」
「はい」
「ほんとに?」
「女に二言はありません」
絵里ちゃんは決意新たにそう言い切った。




