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3-6 ジモティーズ(1)





 今日はジモティーズの集まりがある日。

 僕は竹内さんに誘いを受けたのと、岩崎さんが渡したいものがあるというので行くことに決めている。


 なお、今日は大所帯らしいので直は行く気はない。

 とは言っても、直が参加すること自体稀なのでいつもと変わらない。


「直」


「ん?」


「じゃあ行ってくるね」


 僕は夕飯を作っている直に告げる。

 もう、すでに靴を履いている。

 立ち上がろうとしているところだ。


「帰りは何時くらい?」


 聞かれて、僕は考える。


「えっと、打ち上げにはよっていかないから帰りは八時くらいかな。もちろん夕ご飯は食べるから」


「わかった」


 直の返事を聞き、僕はドアを開けて家を飛び出す。

 すこし歩き、なんとなく東風荘を真正面から見つめる。

 東風荘はあいかわらずの貧相さを醸し出している。


 けど、それが趣になっているという不思議さが垣間見えてしまう。

 なので僕はその不思議さに思いをめぐらせながら、徒歩三分の道のりを歩く。そしていつもの坂を登りきったところで、僕達が活動している小学校が見えてきた。


「こんばんは」


「こんばんは」


 警備員のおじさんにあいさつをして体育館に入る。

 体育館にはすでに、竹内さん他十名くらいがアップをしている。

 なかには知らない人もいたりする。


「お、春くんが来たね」


 竹内さんが美声を響かせながら、僕の名前を呼ぶ。

 声が美しい竹内さんからは、癒し成分ばかりを感じる。


「こんばんは」


「はい、こんばんは」


 竹内さんは笑顔で迎えてくれる。


「春くん。調子はどう?」


「調子ですか?」


「うん」


「変わりはないですね」


「そっか。まあ、そんなもんか」


 竹内さんはノビをしながら言う。


「じゃあ、美咲はあいかわらず春くんに迷惑かけてる?」


「はい。そっちも変わりありません」


「そっか。そうだよね」


 うふふと笑う竹内さん。

 あっさり美人なおかげか、上品に笑うのがとても似合う。


 笑う門には福来たり。

 これをそのまま素で行く人なんだろうなと思う。


「とりあえず今日は来てくれてありがとね」


「あ、はい」


「ほら、明美ちゃんと春くんって連絡先交換してなかったでしょ。だからジモティーズの総責任者として、私から連絡させたもらったの。明美ちゃんが春くんに渡したいものがあるっていうから」


 そういえば本題はそこだ。

 すっかり忘れていた。


「で、岩崎さんは僕に何を渡したいんですか?」


「私はわからないよ」


「そうなんですか?」


「そうだよ。私はただの仲介人みたいなもんなんだからね」


「はぁ、そうですか」


「まあ、あっちから切り出すでしょ。ていうか、春くん。早く着替えないと。もうそろそろ始めちゃうよ」


「あ、はい、わかりました。今着替えます」


 慌てて返事をして、僕は着替えをする場所へと向かう。

 そして急いで着替えて体育館に戻ると、絵里ちゃんがここに着いたところだった。


「あ、先輩」


「絵里ちゃん」


「こんばんはです」


「こんばんは。それよりも絵里ちゃん、早く着替えないと」


「あ、そうですね」


 絵里ちゃんは周りの様子を見てうなずく。

 みんなはもう準備運動も終えて、二人組でボール回しをしている。


「先輩、急いでいるなら私の着替え手伝ってください」


「何を言ってるんだか」


 僕は適当に受け流す。

 邪険に扱ったといってもよい。


「先輩~」


 その証拠に絵里ちゃんが、悲しそうな顔でこっちを見つめてくる。


「私の下着姿を見せるという一大決心が、なんとも簡単にあしらわれました」


「いや、当たり前だからね」


「それは遠回しに私の体に魅力がないって言ってるんじゃないんですか?」


「そんなことはないけどさ」


 とは言うけど、正直言ってそんなことはどうでもいい。


「いいですよーだ。いつか先輩に魅力的なスタイルを見せつけてあげますから。って、ちょっとくどすぎましたね。危うく妹キャラを返上しちゃうところでした」


 にこっと笑う絵里ちゃん。

 おちゃめに舌まで出している。


「じゃあ私、着替えてきますね。先輩。あ、後、一緒にアップをしましょう」


「うん。わかった」


 僕は絵里ちゃんに返事をして、準備運動を開始する。


 

 



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