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ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《七日目》水曜日 *リアル少なめ

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第七十五話*《七日目》浮気ではありませんっ!

 フィニメモにログインしました。


 そ、それにしても、疲れた……。


 朝のあの騒動は社内にあっという間に知れ渡り、私と麻人さんは明日からしばらくの間、在宅勤務を言い渡された。

 なんというかですね。

 理不尽このかたない!

 別に私たちが悪いことをしたわけではないのに……。


 ということは置いといて!


 さて、今日も乾燥しまくるぞ!


 ……って、フィニメモってそんなゲームでしたっけ?


 しかも「乾燥」って女子には大敵なワードのような気が。

 そ、そっか! 私は女子の敵だったのか!


 違うっ! そうじゃない!


 フィニメモにログインしたものの、実はまだ、グダグダとベッドに横になったままだ。

 帰り間際に麻人さんが「迎えに行くから待っていろ」なんて言ってきたから素直に待っているわけではなくてですね!


 うっすら目を開けて確認してみる。

 天井はあの宿屋のもので間違いない。

 なんだけど、どうにも部屋の中にはドゥオ以外の気配が、しかも複数あるのですよ。とはいえ、プレイヤーではなさそう。


「リィナ」


 ドゥオの声に私がログインしてきたことに気がついたとわかったので諦めて身体を起こそうとした……のですけどね?

 な、なんかその、身体が重たい。


「ほら、リィナの()()()降りて」

「やぁだぁ」

「だめなのですぅ~」


 と悲鳴が。


「あの、さっきから気配がするのだけど、どちらさま?」

「シルヴァの村の水源に住む水の妖精たち」

「水の妖精たち?」


 はて? なんで水の妖精たちが私のところへ?


「ねーちゃん、サラねーちゃんを助けて!」

「サラねーちゃん?」


 声がしたほうに頑張って視線を向けると、水色の髪の毛のオルくらいの大きさの子が私にしがみついて必死に訴えているのだけど、あのですね、寝たままだと喋りにくいのですが。


「あの、身体を起こしてもいいかしら?」

「駄目なのですぅ~」

「な、なぜ?」


 ドゥオが二人を離してくれたので、どうにか身体を起こせたのだけど、リアルより力なくない、私? オルとラウは軽々と抱っこできるのに。謎だ。

 私が起きたのを見た二人はドゥオを振り切って、抱きついてきた。

 ベッドの上に座っているからいいんですけど、なんでこんなにも好かれているのか謎。


「そ、それで?」

「あのね、ぼくたちのすみかに変な触手がね」


 しょ、触手、きたぁぁぁ?

 ゲームの定番である触手ですよ!

 しかし、あれ、なんで定番なんでしょうか? やはり戦いづらいから?


「水の中からどぉーんって出てきたの!」


 私の腕の中で腕を振り回しているこの子は水色の髪が肩に届くくらい。ふわふわの髪が動く度に揺れている。

 そしてもう一人は腰まで届きそうなこちらもやはり水色の髪の毛だけど、ストレートでサラサラしている。

 ふたりとも水色の薄い布が幾重にも重なっているワンピースのような服を着ていて、かわいい。

 私もこんな服、着たいな……。


 って、現実逃避をしている場合ではなくて。


「水の中から?」

「そう。どぉーんって」


 ぅ、これまた、突発クエストなの?


「それでね、その水の中からどぉーんって出てきた触手なんだけど、それが近くにいたサラねーちゃんをさらっていったの!」


 そして予想どおりに


 【突発クエスト】触手はいやん


 を受諾しました。


 と私の意思を無視して強制的に受けたことに。

 いや、それはいいんだけど、クエスト名、自重!


 しっかし、どんどん節操なくなってるような気がするのですが、気のせいですか?

 ツッコんだら負けだし、ツッコむ気にもならないのでスルーしよう、うん。


「それでは、その水源とやらに行きますか!」


 ふたりを抱っこしたまま立とうとして、失敗した。

 ……ぅ、かこわるい!


「えと、あの」


 二人の名前を呼ぼうとしたけど、そもそも名前を聞いていなかった!


「立てないから少し離れて……くれないのね」


 二人はそろって頭をフルフル振ってるのだけど、なんでこんなになつかれてしまったのだろうか。


「や! なのです!」


 ううむ、これは困った。


「そ、そういえばまだ名乗ってなかったわね。私はリィナ」

「ぼくはみんと!」

「あたしはすみれ」


 髪の毛が短くてふわふわな子がみんと、さらさらのストレートで長髪な子がすみれ、のようだ。

 みんととすみれってどこからきてるのかと思ったら、瞳の色からのようだ。


「みんととすみれはサラねーちゃんを助けたいんだよね?」

「うん!」

「はい」

「それなら、私が立ち上がれなかったら助けにいけないよね?」

「う……うん」

「…………」


 すみれ! なぜ無言っ!


「立ち上がるから、ちょっとだけ離れてくれると、とてもうれしいなぁ」


 ようやくふたりは離れてくれる気になったみたいだけど、ローブの端をギュッと握ってきた。いや、そんなことしなくても私は逃げませんって。

 まぁ、離れてくれて立てるようになったからいいけど。


 立ち上がると同時にしがみついてくるのだけど、これ、どうしろと?


「リィナはこどもに好かれてる」

「そ、そうね」

「キースも子ども」

「ぶはっ。キースさんは違うかな」

「でも、やってることは一緒」


 ドゥオさん、相変わらずキースには辛辣(しんらつ)ね。


 さて、今日はここに戻ってこられるのかしら?

 そんなことを思いつつ、左右にふたりを連れてカウンターへ。


「こんばんは」

「あぁ、リィナさんか。今日はどうする?」

「んー。これからこの子たちと一緒に水源に行く予定なんだけど、今日、戻って来られるか微妙なのよね」

「それなら、戻ってきたらまた声をかけて。部屋、空けるから」

「う、うん、ありがと?」


 部屋を空けるってどういうこと?


 疑問に思いつつ、宿屋を後に。

 洗浄屋のベッドほどではなかったけど、ここもよかった。村に戻ってこられたら、またここに来よう。


 右にみんと、左にすみれ。

 両手が塞がれているけど、なんだか幸せな気分だ。

 みんとは私と繋いだ手をぶんぶんと振り回してご機嫌だ。すみれは大人しくて、静かに手を握って歩いている。


 ふたりとも、かわいいなぁ。

 そんなことを思いながら歩いていたのですよ。


 まだそれほど遅い時間帯ではないにもかかわらず、周りにはプレイヤーの姿はない。

 そう、いないはずなのだけど、どうも私たち以外の気配がする。

 昨日もだったけど、今日も昨日と同じ気配。

 こうも続くとそれは気のせいではないような気がするけど、基本、そういうのに疎いので気がついて()()振りをしよう。相手するのも色々面倒だ。


 ドゥオも気がついているようなんだけど、特に言及してこないところをみると、私と同じか、泳がせているだけなのか。


 さて、それよりも重要なことが。


 今、周りにはだれも()()()と言いましたが、向こうから見知った人が歩いてくるのが見えた。


 これは回れ右をして逃げるのが正解なのか、そのまま進むか、止まるか。

 みんとは気がついてないけど、すみれは気がついている。


「ねぇ、リィナ」

「……うん」

「あれ、キース?」

「すみれはキースを知ってるの?」

「うん。フーマも知ってる」


 な、なるほど。

 それでふたりは私のところに来たのね?


 麻人さんは宣言どおりやってきた。

 分かっていたけど、今回は私の()()のようだ。


「リィナ、迎えに……っ! オレがいない間に浮気をして子どもを()()とはいい度胸をしているな? やはりドゥオとふたりにしたのはまずかったか」

「……あの、キースさん?」


 ちょ、ちょっと待って?

 キースが激しく勘違いしているのですが、いや、なんというか、どこからツッコめばいいのか分からないくらいの勢いでボケて……いや、本気で勘違いしてるんだけど。


「まずはドゥオを抹殺することから」

「いやいやいやいや、キースさん、もう、ツッコむところしかないくらいの暴力的な情報量がヤバいのですけど」


 家出をして今日で()()()なのですよ。

 浮気云々の前に、まだ私はキースと付き合ってない!

 家出している三日間でどうやってこんなに大きな子どもを作ることができるのか、聞きたい!

 しかもドゥオは女性だし、NPCだし、ここはフィニス・メモリアというゲームだ。

 ゲームだからと言われたらアレだけど、そもそもフィニメモでは結婚して子どもを作るということは想定されていない。


 ……真面目にツッコむと疲れるけど、どうもツッコまずにはいられなかった。


 しかしキース、本気でそれ思ってたら、教育し直さないと駄目だわ。

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