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ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《六日目》火曜日 *リアルとゲーム内半々

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第七十一話*《六日目》ゲームマスターとの対話という名の脅し

 頑張って残業を回避して、どうにか! 家に帰ってきました!


 麻人さんは手を変え品を変え、私を『お持ち帰り』したがってましたが、私はテイクアウト出来ませんっ!

 ほんと、持ち帰ってどうするつもりなのよ。


 夕飯を食べて、お風呂に入って、寝る準備をしてフィニメモにログイン!


 ……見慣れない天井に疑問符が大量に沸いたのだけど、そうだった、私は今、絶賛家出中でした!


「リィナ、起きた?」

「あ、ドゥオ。おはよう?」

「夜だから、こんばんは」

「そ、そうね」


 部屋の中が明るいのは、ドゥオが明かりをつけているからのようだった。


「今日は私がいない間、なにしてたの?」

「村の周辺で狩りしてた。はい、これ」


 そう言って、ドゥオは大量のドロップ品を渡してきた。


「えっ? でもこれ、ドゥオが狩りしてゲットしたものでしょう?」

「私は要らない。だって、使い道、ないもの。それに、お給料、もらってる」

「そ、それならありがたくいただきます」

「あと、リィナの経験値も稼いだ」

「…………へっ?」

「私と常にパーティ組んでる状態」


 ちょっと待って!

 これ、またもや知らないうちのやらかし案件っ?


「え? それ、おかしいよ!」

「なぜ?」

「だって私、ログインもしてないのに!」

「でも、リィナの身体、ここにあったよ?」

「……な、なぬっ?」


 な、なんだ、そのホラーというかミステリというか、恐ろしい状態はっ!


「それ、洗浄屋で寝ててもなってる?」

「知らない」

「……Deathよねぇ」


 あ、うっかり死んでる。


「……昨日の経験値を覚えてないけど、増えている。……どころではなくて、レベルが上がっている?」


 この間の災厄キノコではキースと組んでいたからなのか、経験値はまったく入っていませんでした!

 それなのにですよ? 今、確認したら、レベルが二も上がっているっ!


「……な、なんかズルしてるみたいでやだな」

「ズルじゃない、手抜き」

「いやそれ、ほとんど変わらないわよね?」

「んー、それなら、らくらくレベルアップ作戦」


 ドゥオさん、どうあってもやらかしを認めない方向でいくようだ。


「それにしても、これはバグ利用になるのかしら?」

「聞けばいい」

「だれに?」

「ゲームマスター」


 ゲームマスターって、ゲームタイトルによるけど、ゲーム内での困りごとなどのサポートをしてくれる人たちのこと、だよね?

 うーん、聞いてみるか。


 んで? 設定の中にヘルプがあって、そこに「ゲームマスターと話す」という項目があるとか聞いたような気が。

 あ、あった。


 ポチッとな。


「お待たせしました」

「はやっ!」


 待ち構えていたのかってくらいの速さで出てきたのは、執事服を着た男性エルフ。


「本日、出勤している(ゲーム)(マスター)全員でクリック合戦をしましてね。私が! 勝ち取ったのです!」


 ゲームマスターさんたち、仕事して!


「……勝ち取った?」

「そうですよ。あなたは運営内で有名ですからね。直接話したいと思っている者は多いのです」

「……ぉ、ぉぅ」


 よく分かんないことになってるのね。


「それで、なにかお困りでしょうか?」

「あー、それがね、昨日、この宿屋でログアウトをして、今、ログインしてきたのですが」

「わたくし、アーウィスと申します」

「はぁ」


 人の話の腰を折るゲームマスター……。駄目じゃね?


「すみません、続けてください」


 大丈夫? という不安を隠して、ドゥオに言われた一連のことを伝えた。


「それでしたら、リィナリティさんに限ってですが、問題ございません」

「はぁ」

「そもそもがそんなこと、普通はできませんから!」


 なんか良く分からないけど、特別待遇状態なの?


「あなたの職である洗濯屋ですが、ゲームの仕様には()()()()()からっ!」

「な、ない?」

「そもそもがユニーク職なんて、設けてません。β版から正式版になるとき、システムが暴走しまして」

「暴走……」

「勝手に組み込まれましてね。食い込んで、分離は無理でしたから、強行したのです」


 それ、一介のプレイヤーにばらしていいのですかっ?


「そうしたのは、システムが勝手に組み込んだものは発生条件がかなり厳しいものでしたから、放置していても問題ないと判断されたからなんですけどね? それをあっさりとあなたはクリアしてくれまして。こうなったら腹をくくるしかないと。なのであなたには早いところレベルをあげて強くなっていただかなくてはならないのですよ。さすがはやらかしの女神!」

「あの。BANされたり、しません?」

「一部の運営や開発者からはバランスを保つためにBANしろという意見がありました」

「あ、あったのね」

「ですが、あなたはシステムに保護されてまして、できないのですよ」


 それって実際にやったってことかよっ! とツッコミたいっ!


「なので、極力、あなたは一般プレイヤーとは関わらないでくださいね」

「え、でも」

「あなたの弟のフーマさん、そのお友だちのキースさん、マリーさん、伊勢さん、甲斐さんは運営としてはあなた側として見張ってます」


 見張ってるって。


「それと、キースさんから運営に提出されていたモンスターおびき寄せシールの一部のことですが」


 そうそう、そんなのもあったね。


「これを利用した者なのですが、巧妙にカモフラージュしてまして、今、運営の威信にかけて真の犯人を捜しているところです。必ず見つけてBANしてやりますので、少々お待ちを」

「が、頑張ってください?」


 思わず疑問符がついてしまった。


「それにしても」

「?」

「問題児のやらかしの女神と、運営からお達しを出さなくてはならないくらいの別ベクトルの問題児のキースさんが出会うとは、私たちとしてはまとめて見張れるので助かります」


 なんというか、いいたい放題ね、この人。

 こんな人たちが運営しているのなら、そりゃあ様々な伝説が残るわよね。


「あ、分かっているとは思いますが、このことは表沙汰になさらぬように」


 動画は撮ってるけど、こんなこと、出せるかいっ!


「そういえば今、キースさんとかくれんぼしているんでしたよね」

「運営さんたち、仕事してます?」

「してますよ。あなたたちの見張りは三人体勢ですからね」

「む、無駄に労力を割いてますね」

「最初は一人だったのですよ。ですがね、見張りが目を離した隙にあなたが災厄キノコを出してしまいましたから、三人になりました」

「あの、見張っていても介入は」

「したくても、システムが邪魔をしてくるのですよ」

「見張っている意味あります?」

「あります。一般プレイヤーに混じって多少のコントロールはできますからね」


 それにしても、災厄キノコはやっぱりやらかしだったのか。


「ほんっと、あなたには困ってますよ」

「はぁ」

「災厄キノコはもう少し進行してから出てくる想定だったのですがね。このタイミングで出すとは」


 それならそういう設定にしておいてよっ! と思わないでもない。


「しかも()()()しまいましたし」

「……やっぱり倒せないようにしてたのねっ!」

「そう簡単に倒されてしまいましたら困りますからね」


 それまで黙っていたドゥオがスッと現れて、一言。


「運営、アウト」

「NPCのくせにっ!」

「アーウィス、ツーアウト!」

「り、リィナリティさんまでっ?」

「スリーアウト、チェンジっ!」


 すると、アーウィスと名乗った(私、よく覚えていた!)ゲームマスターの姿が薄くなり、消えていった。

 ようやく静かになったと思っていたのに、次に現れたのは、女性ふたり。こちらもエルフだ。


「ミルムと」

「フェラムと申します。この度は部下のアーウィスがご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません」

「…………」


 そうして二人は私に頭を下げてきた。


「アーウィスが説明したことは、言葉遣いは大変に悪かったですが、事実でございます」


 事実なんかいっ!


「あの、私」

「このままゲームを継続してお楽しみいただけますと幸いです」

「……だ、大丈夫ですか?」

「システムに登録された者としかパーティを組めなくしましたのは、私たちです」

「運営がやったのではと推測してました」

「そうしたのもですね、運営の一部と開発の一部からあなたをBANするようにと強固な態度を取る人たちがいまして、そこまで言うのならあなたたちが完全に責任を取るようにと念書まで書かせて、目の前でBANしてみせたんです」

「そ、そこまで」

「結果、BANは出来ませんでした」


 アーウィスが証言した内容と一致する。

 にしても、私、BANまでされていたのね。結局は出来なかったみたいだけど。出来なかったからよかったけど、こうまでシステムさんもだけど、運営も必死なのは笑うしかないわ。


「フィニメモは精密に作られているため、リアルだと錯覚しがちですが、ゲームですからね。システムにないものは出てきませんし、スキルとしても成り立ちません。だからあなたが使えているということは、システムに()()のです。ですが、特に開発は納得していないみたいでして、未だにBANしろ派が()()です」


 開発からしてみれば、私の存在が目の敵なんでしょうね。

 大人げないぞ☆


 こんなことをやるから余計にウザッと思われるのかしら。


「結果、BANは出来ませんでした」

「出来てたら私、フィニメモ続けられてない」

「そうです」


 運営を怒らせるな、か。

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