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ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《二十二日目》木曜日 *《二十一日目》水曜日は省略!

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第百七十一話*《二十二日目》ふたりで変異種のボスに挑む!

 今までのボス戦は雑魚が無限沸きしていたため、MPの回復に困ることはなかった。

 だけど今回は家族型のため、雑魚が追加で沸くような状況ではないようだ。


『リィナ、後ろに下がって』

『……あいにゃ』


 キースに言われて大人しく後ろへ。

 そしてふと、少し離れたフィールドに通常の荒野ウサギがいるのが視界に入った。

 これらを倒したらMPの回復が出来るんじゃね?

 ……と思ったけれど、そんなに甘くなかった。


 そちらに攻撃を仕掛けようとしたところで親のデバフが切れてしまったようだ。

 もう一度、デバフを掛けたいのだけど、MPが足りないっ!


 いや、待て。

 キースが子を相手に戦っているのだけど、私も応戦すれば倒せるはず!

 そうすればMPが回復するではないですか!

 よしっ!


『『乾燥』っ!』


 四体まとめて『乾燥』をかけると結構削れたけど、さすがボスの子。体力お化けだった。

 キースがスキルで四体に連続攻撃をしている。

 私も負けないで再使用待機時間(ディレイ)が終わり次第、『乾燥』をかけよう。

 うーむ。

 それにしても攻撃手段がひとつしかないとソロでは厳しい。だから一撃必殺でなければならないのだけど、敵が強いとそういうわけにはいかないのよね。

 だからって物理で殴る……は無理だから……。

 どうしたものか。


『『乾燥』!』


 使用可能になったので、『乾燥』を使ったのだけど、思ったより削れない。耐性って辛い。


 キースはディレイを考えてスキルを回しているようで、攻撃が止まることはない。

 あそこまでとは言わないから、せめて『乾燥』のディレイを短くして連続使用を可能にしてくれるか、威力が弱くてもかまわないから、もうひとつくらい攻撃スキルがあってもいいと思うのよね。

 これはオルドとイロンと協議が必要ね。


 いつもであればデフォルトのヘイト値が高い私に向かってくるはずなのに、なぜかキースが狙われている。

 キースはたまに被弾しているけれど、上手い具合に避けている。

 攻撃を受けると痛いしHPも減るのだけど、『癒しの雨』のおかげで減っても回復している。

 『癒しの雨』、チート過ぎる。


 キースはようやく子を一体、倒した。

 私もディレイごとに『乾燥』をかけているのだけど、MPがカツカツです。

 今、ようやく一体倒したので回復したけど、思ったより少ない。

 むぅ。


 『乾燥』の変わっているところは、一体でも複数体でも消費MP量とダメージ量が変わらないのだ。

 とはいえ、複数体といっても何体でもいいわけではない。


 分かりやすい例として、浴室乾燥を思い浮かべて欲しい。

 浴室に洗濯物を入れて乾燥をかけるとする。

 一枚でも複数枚でも乾燥をかける時間は変わらないけど、ある枚数以上になると時間を伸ばさないと完璧に乾かない。

 水分を飛ばすには上限があるということだ。

 これでイメージが出来ない人は水に塩や砂糖を溶かすとき、飽和量に上限があるのを想像すると分かるかもしれない。


 『乾燥』はそれと同じで、一度の使用で乾燥させられる水分量の上限がある。

 スキルレベルや装備、バフの有無などで上限が変わるのだけど、そこは手探りでつかんでいくしかない。


 とはいえ、理系の人なら計算して数字を出しそうだけど、私は残念ながら文系なので、そこは無理である。


 まあそれも通常のモンスターを相手にした場合であり、ボス、レイドボスは違ってくる。


 うーん、もう少しボス、レイドボスと戦ってみたいのよね。

 サンプルが少なくてどうすれば最良なのか分からない。


『『乾燥』っ!』


 親と子にまとめて掛けるのだけど、子のゲージはかなり削れてまたもや一体を倒せたのだけど、親のゲージは減っているように見えない。

 やはりMPマックスでスキルを使わないといけないのかしら。


 そうしたいのは山々なんだけど、一体を倒しても回復量が思っているより微々たるもの。

 自然回復もあるけど、それも大量に回復するわけではない。

 じりじりとMPの残量が減るばかりで、荒野ウサギたちのHPが思うように削れない。

 キースのMPも減っていて、残量が半分くらい。

 私よりマシだけど、戦闘が長引くとこちらが不利になるばかり。

 やはり高火力でガッと削って、残りも相手に反撃を許さない速さで倒さないといけないようだ。


 ……というかだ、フィニメモはいつから脳筋ゲームになったのだろうか。


 いえね、先手必勝でたたみかけるように攻撃をして倒すのが効率的だし、数を稼ぐにはそうしないといくら時間があっても足りないのですよ。

 被弾しないで倒せればそれだけ回復する手間もMPも時間も節約できる。


 ……ぐたぐたと考えたけど、しょせんはこれ、理想論ですけどね!


 とにかく全体攻撃をして子を倒し、親に集中できるようにしよう。


 それはキースも同じように考えているみたいで、範囲スキルで家族を攻撃している。

 あ、今の攻撃でもう一体の子を倒せた。


 残りは親と子一体。

 こうなると範囲スキルを使うのがもったいないなんて思ってしまうのだけど、『乾燥』の場合は単体でも複数体でも消費MPが変わらない。

 なので二体まとめて『乾燥』ですよ、と。

 さすがに残りの子も撃沈してくれた。


 ようやく親のみとなり、集中して攻撃を加えられる。

 キースは攻撃を避けながら、私はヘイト値があまり上がらないように注意しつつディレイごとに『乾燥』を打つ。

 いい感じで攻撃ができていたのだけど、ふっ……と少し力を抜いた瞬間、親と目が合った。

 あ、マズい、と思ったときはすでに遅く、親は立ち止まり、私に狙いを定めて、何度か地面を後ろ足で掻くように動かした。後ろ足を地面に押し付けると、ダッシュで私に近づいてきた。


『リィナっ! 避けろっ!』

『避けるって、え、どうっ?』


 自慢ではないが、運動神経は並みである。

 ぶつかるスレスレで避けるなんてことは出来ないからとりあえず今、立っている場所から動いた。

 すると当たり前だけど、親は微妙に軌道を変えて近寄ってくる。


『ちっ』


 キースの舌打ちが聞こえたけれど、すみません、どうにも出来ませんっ!


 とはいえ、このままボンヤリしていると体当たりを喰らうことは明確なので、必死に避けられるように祈りながら横移動することにした。

 すると親は私が横に移動するのに合わせて斜めに走ってくる。

 ぐぬぬ、無駄に頭いいな!


 私としては精一杯、端からみたらたぶんのろのろとした動きしか出来ていない私。

 左右と前に注意を払いながら親から逃げようと横に移動していたのだけど、急に後ろから身体を抱きしめられた。


『にゃぁっ!』

『リィナ、オレだ』

『キースさん?』

『アイ』

『あいあいさー』


 ふわりと身体が浮いたと思ったら、アイの背中に乗っていた。


『この広場から出ない範囲であの緑色のウサギから逃げられるか?』

『簡単なのだ』

『リィナ、攻撃できるか?』

『にゃ? アイの背中に乗ったまま?』

『そうだ』

『今のスピードなら問題なくできると思います』

『分かった。オレも攻撃するが、当てられるかどうか、あやしいな』


 犬の背に乗ってウサギ狩り……。

 なんだろう、これ?


『リィナ、攻撃するから手を離すぞ』

『にゃっ?』


 ゆっくりと確認するように腕が離れていく。

 アイの背中にだいぶ慣れてきたとはいえ、一人で乗るのは無理で、キースの支えがあるから乗っていられる。

 それが補助がいきなりなくなるなんて、アイの背中から落ちたらどうしよう。


 なので、イロンを腰に差してアイの背中の毛を両手で握りしめた。どうにか落ちないですんでいる。


 キースが私を支えていた段階でアイは親の方向に向いている。

 なので親に視線を定めて、『乾燥』を掛けた。

 ダメージが思ったよりも入ったのだけど、今のはなんで?


『クリティカルが出たな』

『クリティカル……?』


 クリティカルがなにかは知っているけど、スキルにもクリティカルがあるの?


『スキルでもクリティカルが発生することがあるぞ』


 キースはそう言った後、親にスキルで攻撃を加えた。

 親のHPゲージがぐっと減った。


『今のもクリティカルだったようだな』


 私も負けずに『乾燥』を親に叩き込む。残念ながらクリティカルではなかったけど、ダメージは与えられた。

 アイの背中に乗って、親から逃げながら攻撃をしていく。

 アイは器用に私たちを乗せて攻撃を受けないように逃げてくれている。

 荒野ウサギは通常攻撃とスキル攻撃があるけれど、どちらも近接しかないため、近寄らなければこちらから一方的に攻撃をしたい放題である。

 卑怯って言うなっ! これも戦略のうち……っ!


 こちらが有利に見えるけれど、実はMPがカツカツだったりする。

 うーむ、どうしたものか。


 ちなみに私が物理で殴る、あるいは短剣で攻撃するはあり得ないのでそれは却下だ。

 MPがなくなって『乾燥』が使えなくなったとき、『乾燥・解』は使えないのだろうか。

 このスキルは『乾燥』が効かない敵にのみ使えるという制約があるのだけど、MPがなくて使えない場合はどうなのだろうか。

 ……試してみるか。


 『乾燥・解』を使おうとしたのだけど、目の前に大きな赤文字で『使用できません』と表示された。

 むー、やはり駄目か。


 『乾燥』を使うしかないのだけど、あと二発しか打てない。

 二回とも奇跡的にクリティカルが出てくれたらぎりぎりいけそうだけど、どうなんだろう。

 『乾燥』のディレイが終わったので、親を睨みつけながら口を開いた──。

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