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ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《十八日目》日曜日

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第百五十五話*《十八日目》イワトビペンギンなのねっ

 お姫さま抱っこのまま、サラたちがいるという水源に着いた。


 水源というから、水が湧き出ている泉でもあるのかと思っていたのだけど、パッと見たところは普通の村だ。


「水源ってどこにあるの?」

「この居住区にはないと聞いたな」

「では、どこに?」

「それは秘密なのよ」


 いきなり聞き覚えのある声がしたと思って顔を向けると、サラとみんととすみれもいた。


「ねーちゃん、抱えられてるけどケガでもしたの?」

「ぇ。いや、してないDeathっ!」

「リィナ、殺すな」

「ほら、キースさん。誤解されてますよ、降ろしてください」

「…………()Deathっ」

「私の真似をしないでくださいっ!」


 みんとの問いにこれはチャンスと思って降ろしてもらおうとしたのに、嫌だなんて。


「この間もオレがリィナを捕まえていたのにもかかわらず、アネモネに連れ去られたからな」

「ぅ」


 確かにキースに抱えられていたけど、アネモネ……と思われる触手に絡められて、さらわれた。


「そうだったのね」


 とは、先にさらわれていたサラ。


 とはいえ。


「ここもだけど、シルヴァの村からあの洞窟までかなり距離があったわよね?」

「あるわ。でも、空間を歪める力があれば、そんなものは関係ないの」


 空間を歪める……。

 う、うん、さすがゲームですね。


「それで。来るのがずいぶん遅かったけれど?」

「都合が付かなかった」

「そう」


 そ、そうね。

 都合が付かなかっただけで、忘れていたわけではっ!


 ……すみません、忘れていました!


 という心の声はだれにも聞こえていない。

 と思ったけれど、キースがこちらをチラリと見てきた。

 ぇ? ば、バレてるっ?


「それにしても」

「?」

「キースったら、そんなにその紅髪の子が気に入ってるの?」

「嫁だからな」

「あら、そうだったのね」


 サラはなにかを探るように私とキースを見ていたかと思ったら、大きく頭を振った。


「キースはともかく、あなた」

「私っ?」

「そうよ。あなた、エルフなのよね?」

「えと、そうですけど?」

「なのに、どーして! 火をまとっているのっ?」


 火をまとっている、とは?


「前に少し話しただろう? 種族によって属性があると」

「そんな話をしましたね」

「エルフは木属性だ。そして、水属性とは相性がよく、反対属性である火とは相性が悪い」

「……ということは?」

「エルフは木属性。ゆえに、リィナの紅髪といい、火属性といい、おかしい。オルド、どういうことだ?」


 そんなことは知らないから、現実(リアル)ではない紅髪が選択できたからしただけなんだけど。


 キースはオルドに質問、というより詰問? している。システム的にあり得ない、ということかしら?


「ボクを責めても、そこはボクの担当ではないですからなんとも言えません」

「それでは、分かるヤツを出せ」

「そんなこと、急に言われても無理です!」

「それならばなんでおまえはここにいる?」


 キースが怒るのも分かるけど、それはちょっとかわいそうかも。


「キースさん、待ってください」

「なんだ」

「オルドを責めても仕方がないですよ」

「そうかもだが」

「オルドはたぶんですが、私たちとシステムの橋渡し的な役割なのではないかと」

「それは分かっている。だから出せと言ってるんだ」

「すぐのすぐには無理ですよ」

「なんでだ」

「では、キースさん。上総さんをここに呼んでください」

「……無理だろ」

「それと一緒ですよ」

「……それでは、すぐにとは言わないから、きちんと回答がほしい」

「分かりました。しばらくお時間をいただく……って?」


 え? なんで? とかオルドがブツブツと言ってるのだけど、なにかあった?


「あのぉ」

「どしたの?」

「すぐに来ます、と」

「だれが?」

「えっと? コルといって、システムの核というか、中心……ですかね?」


 そんな説明がオルドからされたのだけど、なにも出てこなくてもいくね? と思ったのだけど、ここで止めるとキースの機嫌が悪くなるし、なによりもオルドが不憫だ。


 というかだ、そもそもがシステムやらAIやらに直接質問が出来るこの環境が異常なわけで。


 な、なるほど。

 無自覚怖いと言われるのはこういうことなのね。

 納得?


 そうこうしていたら、私たちのそばでキュポンッというかわいらしい音がして、白い煙とともになにかが現れた。


「おまたせなのねっ!」


 煙が晴れて出てきたのは。


「……ペンギン?」

「そう! ペンギンはペンギンでも、イワトビペンギンなのねっ!」


 小型なのだけど、少し(いか)つい見た目と、その特徴的な頭の部分の黄色い毛。うん、確かにイワトビペンギンだ。

 なんというか、また癖が強いキャラが出てきたな、と思ったけれど、黙っておくことにした。


「それで、コルはなにを説明してくれるの?」

「説明? オルド? うちはなんで呼ばれたの?」


 コルの一人称はうち。う、うん、濃い。


「あのぉ、リィナリティさんはエルフなのにどうして紅髪を選べたのかという質問が来てまして」

「あぁ、それね? その子は紅が似合ってかわいいと思ったからなのねっ」

「そ、そんな理由っ?」

「うん、そうね。実物を目の前にすると、かわいさに震えるのね」


 いや、かわいいって。


「もしかしなくても、フィニメモに初めてログインする人のキャラクターデータを全部見ているの?」

「見てますのよ。だってシステムですからね。チェックして、問題があれば修正されるまでログインさせないですの」


 な、なるほど?


「だけど、システム自らが仕様を勝手に変えていいの?」

「仕様の範囲ですのよ?」

「なぬっ?」


 これはフェラムも呼んだ方がよい案件?


「フェラムさんを……って。呼ぼうとしたタイミングで現れるとか、見てましたね?」


 いつものことながら、フェラムはいきなり姿を現した。


「ぜぇぜぇ。いえ、監視班から緊急呼び出しを受けて来ました……っ!」

「ぉ、ぉぅ。監視班もおつであります!」

『どうもぉ~』

「監視班、出てこないっ!」


 フェラムの一喝に小さな笑い声が聞こえてきた。


 な、なんというか、ですね。

 外野がゲーム感をことごとく破壊しているような。


「エルフの選択色なのですが、これについては少し前から調べていまして」

「ほう?」

「海外にも展開しますからね、日本でリリースしたものに不具合があれば修正してからリリースしたいですから」

「オレたちはテスターかよっ!」

「キースさんはβテストにご参加くださってましたね」

「……そうだ」

「βテストは最終テストです。テストが終わり、問題があった部分が修正されているのかを確認するのはβテスト参加者にあると思うのですけど?」

「言葉巧みに誤魔化そうとしているな」

「そんなことはないですよ?」

「……まぁ、いい」


 あれ? フェラムって口が立つの?

 あの! キースが黙ったぞ?


「おまえがゲームマスターのまとめ役をしている意味が分かった。それでだ、エルフの選択色の話だ」

「はい。基本はやはり属性に合わせた緑系、それに付随する黄色系と青系でした」

「ふむ」

「ただ、ある条件下でのみ、紅、赤、紫が出るようになっていました」

「その条件下とは?」

「申し訳ございません、ここについてはお話しできません」

「うちが気が向いた……」

「システムさん?」

「……ぅ。ぅ、うむ」


 フェラムのひとにらみでコルは黙ったのだけど、ある条件下とか格好つけて言っているけど、要するにランダムという名の適当ということ?

 ……あり得るからそれもそれで怖いですっ!


「ちなみに、もう紅色は選択肢に出なくしています」

「あれ? それって仕様どおりだったのでは?」

「……正直な話をしますと、違います」

「へっ?」

「だれかがいたずらで付け加えたとしか思えないのです」

「それな、う……。あ、はい」


 再度、フェラムはコルをにらみつけた。

 うーん? システムさんって運営より弱いの?


「とにかく、だれかのいたずらDeathからねっ!」

「こ、殺されたっ?」

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