表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《十四日目》水曜日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

137/230

第百三十七話*《十四日目》テスターかよっ!




※痛い表現あり。





 手始めにバフを……と思ったのですが、すでに掛かっていたのですよ!


『あれ? バフ……?』

『それは私ですよ』

『ウーヌスがっ?』

『クイさんが来るまでは私が接客から洗濯まですべてこなしていたのですよ』

『マジですか!』


 深く考えていなかったけど、洗浄屋は昔から世界樹の村にあって、その中でだれかが働いていた。

 最初から洗濯屋という職があった訳ではなくて、洗浄屋で働いている、洗濯をしてくれる人がいて、そこで使われていた技がスキルとなり、洗濯屋となった……?


 きっとそんなところなのだろう。


「システムさんなのか、AIなのか分からないけど、なんらかの理由があって、洗浄屋で働いている人たちの技を見て、洗濯屋という職を作った……?」


 気がついたら思ったことが声になっていた。


「リィナリティさんはなかなかいい推測ができますね」


 とはオルド。


「おおむね正解です」

「へっ? そなの?」

「そうなのですよ」


 謎は解けたけど、なるほど、そういう経緯で作られた職だから……。


「も、もしかしなくても、私を使って洗濯屋という職のテスターをやらされてる?」

「正解なのです」

「ぉ、ぉぅ」


 な、なるほど……。


「テスターかよっ!」


 実戦で調整、追加をしていくって……。


「NPCでは分からない細かい部分もプレイヤーなら教えてくれるし。本格的に使える職にしたくて実体化して同行をお願いしたのですよ」


 ということは?


「きちんと職として機能するのが分かったら、他のプレイヤーにも解放して、洗濯屋になれるってこと?」

「そうなるかもしれません」

「今はユニーク職だけど、そうではなくなるってことか……。洗濯屋って楽しいから、他の人ともその楽しさを共有できるのならうれしいな」


 だけどそうなると拠点は最初から付いてくるの? などの疑問が湧いてきた。


「ねぇ、オルド」

「はい」

「洗濯屋が解放されたら、その人たちも最初から拠点持ちになるの?」

「それはなりません」

「どうして?」

「リィナリティさんに拠点を提供したのは、テスターをしてくれるお礼ですからね」

「そ、そういうことね、納得」


 な、なんと言いますか。

 ここでそんなネタバレをされましても、はい。


「あ! そうすると、洗濯屋が解放されたら、フーマに『洗濯屋が解放されるまで』みたいな動画を作ってもらって公開すると面白いかも!」

「あぁ、いいんじゃないか? それにしても、やらかしの正体は分かったが、どうしてリィナが選ばれたのか、だな」

「たぶんだけど、私が使っているフィニメモのコードはもともとがフーマのものだから、のような気がするのです」

「そうなのかもだが……。待て、まさかフーマの海外行きはAIが仕組んだもの……だったりするのか?」

「いやいや、さすがにそれは──ない、と言いたいところですが、あり得るところが」


 もしも楓真が海外勤務にならなかったら、βテストのときのキャラクターを引き継いでプレイしていただろうから、洗濯屋は誕生してなかっただろう。

 ところが楓真はAIのせいで海外勤務にさせられ、このコードが私に渡された。

 そして私がAIの思惑どおりにプレイして、洗濯屋へ。


「どうしてフーマの使っていたコードなのかというと、キースさんと強く結びついているから……。帰結するのは、キースさんのせい!」

「オレかよっ!」

「そうですよ。AIはキースさんになにかを見たのですよ」


 な、なんというか、上手くはめられたと言いますか。


「それはともかく、狩りですよ!」


 私がこうしてぐだぐだと考察をしている間にも、ウーヌスが乾燥で根こそぎモンスターを集め、ドゥオとトレースが倒していく。『癒しの雨』のおかげでMPが回復するので、エンドレスで狩りが続く。


 とそこで、初期の頃を思い出した。

 洗濯屋のデフォルトヘイト値が高いということをウーヌスはなかなか明かさなかったけど、それはウーヌスも洗濯屋だから言いづらかった?


「オルド」

「はい、なんでしょうか」

「洗濯屋のデフォルトヘイト値が高い件なんだけど、これ、もっと下げないとなり手がいなくなるような気がするのよね」

「ふむ。……今は洗濯屋のデータはシステム領域にはなく、AI側にあるのですよ」

「だからAIが切り離されたとき、洗濯屋が消えたのね?」

「そうです」

「システム領域にないから未知のものとして攻撃の優先度が高い、イコールデフォルトヘイト値が高い、ってこと?」

「Death」

「殺すなっ!」


 洗濯屋はとても楽しいと思うのですよ。

 だから私が頑張ってブラッシュアップして、使える職にして他のプレイヤーにも遊べるようにしてほしいのです。


「うむ、わかった! 私も狩りをするっ!」


 ウーヌスたちに混じって、私も狩りを……と思ったのですけどね?


「ぇ? な、なにこの荒野ウサギって! かわいすぎて攻撃できないのですがっ!」


 別の罠が待っていたというね!

 荒野ウサギというモンスターなのだけど、荒野の茶色に擬態するかのような茶色のふわふわの毛に黒い瞳。大きさはリアルのウサギくらいの大きさ。


「リィナ、見た目にだまされないで。かわいいけど、性質はとてもエグイから」

「エグイって……。うわっ! トレースが噛まれてるっ? ぇ、ちょ、ちょっと! 『乾燥』っ!」


 トレースを助けるためにとっさに『乾燥』をかけたのだけど、思っているより荒野ウサギのHPが削れない。なのでトレースに噛みついている荒野ウサギはそのままだ。

 ウサギって草食……だよね?


「ここは乾燥した土地ですから、水属性ほどではないですが、少し強めにかけないと駄目ですね」

「なるほど」

「それと、荒野ウサギは肉食ですから注意してくださいね。油断してるとトレースみたいに噛まれて、皮膚をえぐり取られますよ」

「ひぃ……!」


 肉食ウサギ!


「か、カワイクナイっ!」


 私は噛まれたくない一心で荒野ウサギに『乾燥』を掛けまくった。


「ウサギ肉の干物にはならない?」

「なったとしても、肉食ですから美味しくないと思いますよ」


 ドゥオとウーヌスの会話がなんというか、ほのぼのしてるような、怖いような。


 しかし、よく考えてみると、こんな草一本生えない土地に住んでいるウサギなんだから、草食なわけ、ないわよね。


 ちなみに、先ほど噛まれて肉を(えぐ)られる寸前だったトレースだけど、荒野ウサギのHPがはじけ飛んで消えると、即『癒しの雨』の効果のおかげでHPは回復していた。だけど傷口はふさがれず、どうしようかと思っていると、ウーヌスが傷口に『アイロン仕上げ』を掛けて綺麗に修復していた。

 『アイロン仕上げ』って戦闘ではそうやって使うのか! と知ったのだけど、そういえば前にアイロンの炭で布を焦がした後、『アイロン仕上げ』を使ったら焦げがなくなっていたのだけど、あれって修復してくれていたのね、とここに来て分かった。

 同じ洗濯屋とはいえ、ウーヌスはかなりの先輩。私が知らないスキルの使い方をたくさん知っていそうなので、今日はいろいろ学ぼう!


 ウーヌスからアドバイスをもらいながら、今まで知らなかったスキルの使い方を学んでいく。

 これ、初期に知りたかった! と思うことが多かったので、洗濯屋の職が正規採用されたら、フーマに頼んでこのウーヌスから教えてもらっている動画を編集してアップして欲しいと思うのですよ。


 それにしても、洗濯屋のスキルは有用すぎる。オールマイティと言ってもいいかもだけど、器用貧乏な部分もなきにしもあらず。


「ねぇねぇ、オルド」

「はい、なんでしょうか」

「ウーヌスから洗濯屋のスキルの使い方を学んでるんだけど、洗濯屋が解放されたら、スキルの使い方のチュートリアルを作って欲しいのよね」

「なるほど、チュートリアルですか。どうにもスキルの説明が苦手でして」

「……ちょっと待って? オルド、もしかして洗濯屋のスキル説明って」

「そうです、ボクですよ」

「……ボク?」

「ボクDeath」

「殺すなっ!」

「待て。オルド、おまえオス、なのか?」

「どちらでもあり、どちらでもありません。そもそもシステムですから、性別など存在してません」


 言われてみればそのとおりなんだけど、ボクは意外だった。


「ところでフェリスは?」

「フェリスは女の子にゃあ」


 まさかの女子だった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ