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ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《十一日目》日曜日

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第百十一話*《十一日目》トレースさんのやらかし

 本日は日曜日。

 なので朝からフィニメモしますっ!


 っても、ぎりぎり朝な時間ですけどね?

 こうなったのは麻人さんのせいです!


 フィニメモにログイン、と。


 フーマとマリーも同じようなタイミングだったので、以下略。


 お互い新婚さんですからね!


 それなのにフィニメモするのかよ! と思われるかもだけど、それとこれとは別なのです!


「オハヨウゴザイマス」


 台所に行くと、お昼の用意をしているクイさんがいた。


「おはよう。思ったより早いね」


 ……クイさんの発言がおっさんくさい。


「新しい茶葉を入手したよ」


 そう言って、クイさんは私たちにお茶を出してくれた。少し甘い匂いがするお茶だ。

 一口飲むと、ふんわりと鼻の奥に甘い匂いが抜ける。そして舌に残るのは爽やかな苦味。


「うん、美味しい」

「朝に相応しいお茶だろう」

「うん」


 定位置に座ってチビチビ飲んでいると、困り顔をしたシェリがやってきた。

 久しぶりにシェリを見るような気がしないでもない。


「みなさん、おはようございます。よかった、間に合って」

「? おはようございます。なにかあったの?」


 不思議に思って首を傾げると、なぜかシェリは顔を赤らめた。

 それを見たキースがなぜかムッとした顔をして私とシェリの間に立った。


「ちょっと、キースさん!」

「なぜ顔を赤らめる」

「いえ、その、リィナさんがかわいくて」

「駄目だからなっ!」


 なんでそこでキースがシェリに威嚇してるの?

 その前に、シェリさんや、私がかわいい?


 ……………………。


 えと、ちょ、ちょっと待って?

 キースがやたらと全方位に向けて威嚇してるのって、フーマを伴侶認定してたのと関係ある?

 ……システムさんにも威嚇してるし、無機物でもって、な、なんというか、えと、上級者?


「でも、キースさん。リィナさんは魅力的なのにだれも気がつかないってのはおかしいと思いませんか?」

「ぐぬぬ。そうなんだが! そのことにオレだけが気がついているという優越感に浸りたい……!」


 シェリって大人しいのかと思ってたけど、言うときは言うのね。

 といっても、私のことってのがなんというか、恥ずかしいけど。


 ちなみに、内容に関してはスルーします!


「それで、シェリ。なにが間に合ったの?」

「あ! それがですね。朝一番でトレースさんが村長の屋敷に行ったのですが、まだ帰って来ないんですよ」


 むむ?

 事件の予感?

 それともサボってる?


 うーん、トレースってチャラチャラしてるように見えることがあるけど、根は真面目だと思うのよね。だからサボリの線はないかなぁ?


「……あいつか。そのうち帰ってくるだろう。放っておけば良い」


 キースとトレースって仲悪いものね。

 予想どおりの言葉に思わず苦笑する。


「普段であればキースさんの言うとおりなんですけど、今日はお昼から一緒に出かける約束をしていたのですが」

「帰ってこない、と?」

「はい……」


 そう言って、シェリは長い耳をペタンと伏せた。

 え、なにこれ、超かわいい!


「分かった! トレースはどうでもいいんだけど、シェリちゃんがそんなに悲しむのは見たくないから、行ってくるね」

「おい、リィナ」

「私はいつでも女子の味方なのです!」


 キースにビシッと言ったあと、ふと首を傾げた。


「あの、つかぬことをお伺いしますが」

「はい」

「シェリちゃんはトレースと付き合ってるの?」


 私の不粋すぎる質問に、シェリは真っ赤になった。


「いいいいい、いえっ!」


 あちゃ、違うのか。

 というか、ストレートすぎたのかしら、この質問。


「あの、そのっ! きょ、今日のお出かけはその、仕事で必要なものを買いに行くためでして」

「トレースは荷物持ちってこと?」

「荷物はインベントリがあるので大丈夫なんですけど、ほらわたし、ドジなので、トレースさんが心配してついてきてくれるって」

「なるほど」


 ということは?


「それ、私たちがついていく、では駄目?」

「いいですけど、その」

「それがね、私、まだここで買い物をしたことがないのですよ」

「……え?」


 えっ、て思うよね。

 ゲームを始めて十一日目ですけど、買い物しないでよくやってるなと自分でもびっくりですよ。


「とりあえず、トレースね」

「ほっとけ」

「サボってるのなら叱らないとだし、なにかに巻き込まれてるのなら助けないと」

「あいつは要らないから、クビでいい」

「キースさん、好き嫌いで物事を判断しないでくださいっ」

「…………」


 キースが無言になった。


 ありゃ、言い過ぎた?

 いやでも、間違ったことは言ってないし、好き嫌いの天秤だけだと世の中は回らないわよね。


 別に人類みな兄弟とは思ってないし、私だって嫌いな人や苦手な人はいる。

 空気読めないみたいな、なんとも思ってないのに自ら好感度を下げに来て(いや)がられるって人もいる。そういう人はレアケースだけど。


 あ、でも、好きの反対は無関心っていうから、嫌いという感情でも持たせた時点で勝ってるのだろうか。

 となると、なんとも思わないのが一番なのか、ふむ。


「さすが女神だな」


 フーマのそれ、フォローになってるのかなってないのか分からない。


「キース、リィナは女神だから、独り占めは無理だと思っておくといい」

「くぅ」


 うーむ?


「キース、もうひとつ言っておくが、リィナはパーソナルスペースに人を入れたがらないんだが、おまえは最初から問題なく入れていたから、リィナにとってキースは特別な人だ。それで我慢しろ、贅沢だ」


 さ、さすがフーマ。私のこと、良く分かってる。


 ほんと、それなのよね。

 キースって最初からガンガンとパーソナルスペースに侵入してきていた。いつもなら不快に思ってさりげなく離れるんだけど、不思議とセンサーが働かなかったというか。

 それは家族であるフーマでもセンサーが働くのだから、相当なものだと思う。


「それはフーマには?」

「俺? リィナに一定の距離以上近づくと、さりげなく距離を取られるぞ」

「ほう?」


 フーマはそれを証明するために急に詰め寄って来たのですけどっ!


「うにゃあっ!」


 いつもだとさりげなくなのが、あからさまにフーマから距離を取った。


「にゃ、にゃにをっ!」

「実験」


 そう言って、フーマは何度か私に詰め寄って来た。私は反射的に距離を取る。


「リィナ?」


 今度はキースが詰め寄って来たのだけど。


「……………………」


 センサーさんが仕事しませんっ!

 あっさりとキースに捕まった。


「あっ、あのねっ! 別にフーマが()なわけではなくてっ! センサーを搭載してるので!」

「オレに対しては?」

「センサーさんが仕事しません!」

「なるほど」


 それでようやくキースの機嫌がよくなった。

 ほんともう、手間が掛かるというか。


「とにかく、トレースもやらかしみたいだから、とっとと見つけて連れ帰りますよ!」

「気が乗らないが、仕方がない」


 気が乗らないのなら別についてこなくても、と思うのだけど、また別行動をしたら後が面倒だから連れて行こう。


 うーん、それにしても。

 キースが別方向で駄目になってきてるような気がしないでもないんだけど、私が教育(?)し直さなければいけないのかしら?

 なんというか、残念な方向性が父に似てきているというか、場合によっては父以上に駄目になってるというか。


 それとも、私のせいでキースが駄目になってる?

 そうだとしたら、これ、父の血というより、母の血のせいのような気がする。

 母、恐るべし。

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