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ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《十日目》土曜日 *AIのない世界

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第百五話*《十日目》猫かぶり仲間

 夕飯を食べた後、麻人さんに過剰接触をされ、そのあと、ご機嫌な麻人さんに無理やりお風呂場に連れ込まれ、以下略。


 ねぇ、これ、放置した結果なの?

 楓真に聞いてみよう。

 ……あ、フィニメモしてるかな? ま、してたらそれはそれでいいや。

 ということで、電話、と。


「ねぇねぇ、楓真」

『どうした?』


 通じた、ということは、向こうもまだ、フィニメモをしていない、と。あと、電話に出てくれたということは、……うん、追及したらダメだ!


「麻人さんってほっといたら機嫌悪くなって甘えてくるの?」

『そうだが? なんだ、麻人、もうそんなに莉那に心許してるのか』

「へ?」

『莉那が知ってるかは分からないけど、あいつ、普段はものっそい猫かぶってるからな』

「あれ? 麻人さんも猫かぶりなの?」

『そういやぁ、莉那もか』


 麻人さんは普段、無表情で抑揚のない喋り方をするのは知ってるんだけど、あれって猫かぶりの結果だった?

 麻人さんとこの猫さんって……。

 あ、うちの猫さんと似たようなものか。

 しかし猫かぶり仲間がいると……。あぁ、だからこそ、猫さんたちが意気投合して?


 その様子を想像してみる。

 うちの猫さんと麻人さんの猫さんが猫パンチしたり、ごろごろしたりして、猫まみれ!

 なんかむっちゃ萌え萌えなのですけど!


『というか、そっちもまだフィニメモしてないんだ』

「いやぁ……。まぁ、その、ですね」

『今日の昼、あいつ、かなり機嫌が悪かったからな』

「やっぱり」

『とはいえ、麻人も麻人で自分の変化に戸惑ってるみたいだからな。落ち着くまで、頼んだよ』

「さ、さすが元伴侶。麻人さんのこと、よく分かってる」

『それに触れるな。正直、あれには俺だって戸惑ってるんだから』


 友だちだと思っていたら、それ以上に想われていた、なんて……。ま、まぁ、戸惑うよね、うん。


『尊い回は()()()()()()ではないかって俺の中で疑惑があったんだけど、そうだったときの衝撃』

「あ、そういう気配はあったんだ」

『俺が投稿した動画を見て、「尊い回」なんて言われるくらいだからな。実際は……ま、まぁ、麻人が言っていたように、プラトニックだから!』


 と必死な楓真。

 でも、なんだろう、麻人さんだから不思議はないというか、楓真相手だから、そこは致し方ないのかなぁ、という気持ちが強い。


「両想いでも、片想いでも、私はどっちでもいいし」

『おま……っ! お、俺は陽茉莉一筋だからなっ!』


 ありゃ、麻人さんの片想いなのか。


『陽茉莉が風呂から出てきて用意が出来たら、ログインする。連絡入れた方が……いいのか』

「うん、お願いね」


 ちなみに今、麻人さんは部屋にはいない。こんな時間だけど、電話が掛かってきて、それの対応を隣の麻人さんの部屋でしているらしい。


 やることがない私は、無駄に広いベッドの上をゴロゴロしていた。

 はー、なにもないっていいわ。

 でも、この状況がずっと続くのは止めてほしいけどね。


 ゴロゴロ、ゴロゴロとしていると、麻人さんが隣の部屋からこちらにやってきた。

 ちなみに私がいるのは、私に割り当てられた部屋だ。

 麻人さんは私がベッドの上をゴロゴロしているのを見て、固まっている。


「麻人さん、お帰りなさい」


 ゴロゴロを止めてベッドから降りる。それでもまだ固まったままだったので、首を傾げながら近寄ると、ようやく動いた。


「な、なにをしていた?」

「え? なにってやることがなかったから、ベッドの広さを堪能してました」


 やることが子どもっぽくて呆れてる?


「な、なるほど?」


 なんか無理矢理納得しようとしているっ!


「子どもっぽかった?」

「いや、意外というか」

「意外?」

「そういうことをしそうにないというか」

「あー……。普段ならしません、というか、こんな広いベッドなんてそうそうないですから、できません!」


 麻人さん、この辺りの感覚がズレッズレだからなぁ。


「やはりそうなのか」


 予想どおりだった。


「そもそもフィニメモの宿屋だってこんな大きなの、置いてないじゃないですか!」

「……言われてみれば」

「前から思ってましたけど、そのあたり、ズレてますよね」

「そうかもしれない」


 うっすらと自覚はある?


「おかしかったら指摘してほしい」

「……分かりました」


 ツッコミまくりの未来が見えるけどね!


 このタイミングで楓真からメッセージが来たので、フィニメモにログイン。




 フィニメモにログインしました。


 そういえば、フィニメモのログイン画面のグラフィック、メンテ明けに見たときは劣化? していたような気がしたけど、気のせいではなかったです。スクリーンショットを撮って見比べたんだけど、なんだろう、微妙に画像が粗いというか。

 よく分かんないけど、こんなところにまでAIの手が入っていたのかしら?


 で。

 ログインするなり、イロンが飛びついてきた。


「我が持ち主ぃ」

「な、なにっ? どしたの?」

「わたしだけ置いて行かないでくださいぃぃぃ」


 どうやらここにイロンだけ取り残されてしまった模様。ログアウトするときはイロンはインベントリに仕舞わないといけないってことか。

 ……忘れそう。

 いや、洗浄屋内だったら問題ないけど、ここはセーフゾーンといってもフィールド。心細かったには違いない。


「ごめんね」

「ぅぅぅ」


 涙は出ていない……というか、どこが顔かそういえば分からないけど、イロンは泣いているようだった。柄を持ってヒシャク部分をなでなでしてあげると、だいぶ機嫌は治ったようだ。

 なんだか私、機嫌取りばかりしているような。


 マリーをリーダーにして、パーティを組んだ。


『全員、ログインしていますわよね?』

『してるはずー』


 私はフレンドリストを確認して、返事をした。


『それでは、お兄さまと……って! え、もうわたくしたち、見つかったのですかっ?』

『たぶん、システムさんの仕業』


 世界樹の村にいるはずのキースとフーマが向こうから歩いてくるのが見えた。洗浄屋内の応接室の扉からここに来たのだろう。


 そういえば、ふたりが並んでいるところを初めて見るかも。

 サシャが言っていたけど、確かにふたりいてこそ、だわ。さ、さすが元伴侶同士?


 そういえば結局、キースには昼間の狩りはバレてしまったのだけど、特になにも言われなかった。ということは、あれは問題ないってこと?

 直接聞けばいいじゃないかって言われそうだけど、藪蛇かなぁ、と。 


「ほぅ?」


 そこそこの距離があるけど、キースは私たちがどういう状況でログアウトしたのか、一瞬で察したらしい。


「最初に言っておくっ!」


 先制攻撃だっ!


「ここはセーフゾーンだっ!」

「見れば分かる。それで?」


 うむ、なんと返すのが最善なのか。


「別にいつも宿屋でログアウトしろとは言わんぞ」


 あれ、怒られるかと。


「それとも、オレに怒られたくてわざと外でログアウトしたというのなら話は別だが?」


 そんなマゾなこと、するかぁ!


 と叫ぶのはどうかと思って、グッと唇を噛みしめた。


「そ、それより! キースさんはともかく、なんでフーマまで?」

「リィナ、分かってないな」

「?」

「クイさんに料理を教わるのは、リィナがいるときにと言われて、追い出されてきた」

「フーマはとばっちり?」

「いや。マリーがどうやって戦ってるのか見たくて来た」


 あ、そういえばこのふたり、新婚さんだった。

 って、あれ、私も?


 ……まったくもって実感がないのですけど。


「リィナは特に動き回らないから、と」


 いつの間にかキースが背後にいて、慌てて振り返ろうとしたらガシッと両肩をつかまれた。


「ぅにゃぁっ」


 キースの顔が真横に来た。


「このままログアウトして寝室に直行してもいいんだぞ?」


 ひぃ! そ、そんな色っぽい声でなんてことをっ!


「オレに横抱きされるのと、ログアウト、どっちを選ぶ?」

「ななな、ちょ、その選択肢っ!」


 なんでそんな究極の二択なんですかっ!


「オレはどちらでもいいぞ?」


 そりゃあそうでしょうとも!


「こ、このままで!」

「ふぅん?」


 なにもビクビクしなくていいはずなのに、どうにもビクッてなるのだけど、さて、どうしよう?


「そういえば、リィナ」

「はい?」

「さっきの動画、どうして戦ってない?」

「ぇ」

「乾燥は?」

「……ぁ!」


 忘れてました! なんて言えず。

 新しいスキルを覚えて、そちらに気を取られていたのよね。

 そうだ、『乾燥』も立派に範囲攻撃だ。使おう。


「我が持ち主は、ウッカリなのか」

「なんか、色々といっぱいいっぱい?」


 普段はそんなことないと思うのですよ。だけど最近は主にキースが! そばにいるというだけで、なんというか、テンパる。

 これで横抱きなんかされたら!

 だって、お姫さま抱っこですよ? 憧れ? の、お姫さま抱っこ!

 心臓がバクバクして、戦闘どころではなくなる。

 ま、まさかそれが狙いなのっ?

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