98話
月影の白兎がいるウサギエリアの最奥に到着したボク達。
「みなさん、今晩は。エース級になりたいのであれば、私が出す試練を受けてもらいますがよろしいですか?」
「ボク達がここに来たのはエース級になるためではありません。赤の女王を操っていた隠しボスの月影の白兎を倒すためにここに来ました」
「そうですか、わかりました。それでは場所移動させてもらいますね」
一瞬の暗転。辺り一面真っ白な空間に転移。
「ここは月の裏側の世界。本来であれば、これから私と戦う場面ですが、イースターバニーの宝玉を初めて手にした貴方とお話がしたいです」
突然の提案に戸惑うマリナさん達。イースターバニーの宝玉はカリナさんと一緒に手に入れたアイテム。あの時カリナさんは何も話を聞いていなかったはず。
「こんな展開になると思ってなかったですが、リュウイチさんに勝てる可能性が出てきました。ここはボクに任せて下さい」
「ハヤトくんがそう言うなら私達は口出ししないわ」
「ありがとうございます」
「それでは私とお話しましょう。貴方はチ。という漫画をご存知でしょうか?」
「はい。地球の運動について描かれている漫画ですよね」
「えぇ、そうです。では貴方にお聞きします。今、使われている太陰太陽暦のカレンダーは合理的で美しいですか?」
これはイースターバニーの宝玉を手に入れた時に同じ事を感じていた。
「美しくないと思います。神様はこの世界を7日間で作りました。だから7日間の4週間で1カ月、1年を13カ月にした方が合理的で美しいと思います」
「私もそう思います。では太陽は合理的で美しいですか?」
「太陽ですか………」
「月は太陽の光を鏡写しするもの。満月が見えるのは29.5日周期ですが、月の公転周期は27.32日」
これはボクも知っている事。太陽の何が合理的で美しいのだろうか……
「太陽の自転周期は黒点の動きでわかり、赤道付近で25日といわれています。地球は太陽の周りを公転しているので、黒点は27.27日周期で同じところに見えます。太陽は月の鏡写しで同じ顔を見せているという事です。どうですか?合理的で美しくないでしょうか?」
女性の月経周期も28日周期で、月の公転周期も約28日だという事は知っていたが、太陽も約28日周期で13カ月で1年を示すという事なのか。
「……美しいです」
「この美しさをわかってもらえて私は嬉しいです。こんなにも合理的で美しいモノだからこそ、この秘密は表舞台では隠され、異端とされ、タブーになります」
そうか、そういう事か。
「13番目は気付いてはいけないモノです。12方位にいる12の死獣達。では13番目の死獣はどこにいましたか?」
13番目の猫の死獣・星影の黒猫はマイハウスの裏庭にいた。
「13番目の死獣は貴方の鏡写しの影の存在。13番目の意味を理解出来ましたね。これで貴方は死獣になる資格が出来ました」
「死獣になる資格とはなんでしょうか?」
「貴方ならすぐに気付く事が出来るはずですよ。鏡は真実を映し出すモノです」
ピコン。聞こえてきたシステムメッセージ。
[隠しボスを倒した者が現れました]
ボクがどんな段取りを組んだとしてもリュウイチさんには勝つ事が出来ないのか……
「大事な事なので、もう一度言いますね。鏡は真実を映し出すモノです。それでは私はこれで失礼いたします」
一瞬の暗転。ウサギエリアの最奥に転移。目の前にはリュウイチさん達の姿。
「一足遅かったな。この勝負は俺の勝ちだ。マリナの事は大人しく諦めてもらうからな」
「それではハヤト様、私とお付き合いしましょう」
勝負の事よりも今は月影の白兎の最後の言葉が妙に引っ掛かる。一体、何を言いたかったのだろうか……そうか、そういう事か。わかったぞ!
「ちょっと待ってください。まだ勝負はついていません。それはリュウイチさんもわかっているはずですよね?」
「さて、何の事だ?勝負は隠しボスを先に倒した方が勝ちと言ったはずだ」
「そうです。だからまだ勝負は終わっていません。隠しボスはまだいます」
リュウイチさん以外のみんなは理解が追いついていない様子でポカーンとした顔。
「どういう事?付いていけないんだけど」
「月と太陽はどちらも鏡写しです。月影の白兎が隠しボスなら陽炎の夢羊も隠しボスです。多分、執事の方ではなく、白の女王の方が隠しボスです」
「そこまでわかっているなら、ハヤトくんはこの後どうするかわかってるんだよな?」
「はい、わかっています。マリナさん、すみませんがリュウイチさんと一緒に隠しボスを倒しに行ってきます」
「いや、ちょっと待ってよ。隠しボスが白の女王だという事はわかったけど、リュウイチと一緒に行くのがマジで意味不明なんだけど」
リュウイチさんとの勝負のはずなのに、一緒にリュウイチさんとパーティーを組んで隠しボスを倒しに行く。誰もが困惑している状況。
「……これはリュウイチからしたらいつもの事って事よね。私にはよくわかんないけど、行ってくればいいんじゃない?それでリュウイチに勝てるって事なんでしょ?」
「はい、そうです。それではリュウイチさん、行きましょう」
「おう。それじゃあちょっと行ってくるわ」
ボクとリュウイチさんはパーティーを組んで羊の館へ向かった。




