86話
今日は久しぶりに寝起きの良い朝だった。新しくパーティーを組んで久しぶりの冒険。1人でずっと情報屋から情報集めの日々もそれはそれで楽しかったけど、やっぱりパーティーを組んでみんなとワイワイ冒険するのはワクワクする。
今日の段取りとしては鏡の国に行って聖なる子どものアリスと出会い、悪魔ベルゼブブを倒す事。
聖なる子どものアリスはハンプティダンプティがいる場所にいて、ここでハンプティダンプティからなぞなぞが出される。
【ハンプティダンプティの卵が割れた。ハンプティダンプティの卵は元に戻らない。ハンプティダンプティの卵は死んだ】
元々あるハンプティダンプティの謎解きの答えは卵。だがここでは卵の謎解きが出てくる。
情報掲示板にはこの答えがすでに書かれていて、答えは【生命の誕生】。この答えを言えばハンプティダンプティの玉子焼きというアイテムが手に入る。この玉子焼きは非常に美味しい食材で虹色に光る玉子焼き。
でもボクとしては何か引っ掛かる部分がある。このゲームにおいて謎解きがこんな簡単な問題でいいのだろうか。もっと深い考察の先にもっと意味のある答えがあるのではないのだろうか。だけどここで色々考えても答えは出ない。情報掲示板に出ているのは問題とその答えだけ。ハンプティダンプティとどのようなやり取りをするかまでは書かれていない。
「直接自分の目で確かめないと答えは出ないよなぁ」
ボクは準備を整えて、みんなとの待ち合わせ場所でもある羊の館の前へと向かった。
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「おはようございます。お待たせしました」
「おはようございます。私達も今着いたところです」
「それでは早速行きましょう」
「「「はい。今日もよろしくお願いします」」」
羊の館の中に入ると出迎えてくれたのは、羊の死獣でもある羊の執事。
「羊の館へ、ようこそ」
「鏡の国へ行きたいのですが」
「月読の目を全員お持ちのようですね。夢幻の館の奥の扉を開ければ鏡の国へ移動します。夢幻の館は非常に迷いやすい場所でもございますので、私が案内いたします」
左側の扉が開き、中は鏡だらけの夢幻の館。羊の執事の後をついていき、館の奥の扉の前に到着。
「以前はこの扉を開けると入り口まで飛ばされたんだよねぇ」
「あの時は何度も何度もループしてどうしたらいいのか途方にくれましたよね」
「そんな事もあったね」
前の時はリュウイチさんが一緒だった事もあって、ボク達はそれほど苦労する事なく進む事が出来たけど、多くの人はここで足止めくらってたんだな。
「この先は鏡の国になります。マイハウスの裏庭に鏡を設置をしておきますので、今度はそちらからどうぞ。それではお気をつけて」
ボクが扉を開けると、目も開けていられないほどの眩しい光。そのまま中に入り、見えてきた景色は草原が広がりチェスの駒が動き回る姿。
「鏡の国って言ってたけど、想像と違って何か普通の景色だな。なんかこうもっと鏡だらけで夢幻の館のパワーアップバージョンを想像してたわ」
「えっ、スズメって鏡の国のアリスの原作を知らないの?」
「うん」
「ルイスキャロル原作の鏡の国のアリスはチェスがモチーフで、アリスも駒の役割をしながらチェスの駒が鏡写しのように動いたりするんだよ」
「そうなんだ。じゃああの動き回ってる駒達は不思議の国でいうところのトランプの兵隊達って事か」
「そうそう、そんな感じ」
「みんな揃った事ですし、アリスのところに向かいましょう」
「「「はい」」」
草原を少し歩くと、駅のホームが見えてきた。そのまま駅のホームに辿り着くと一瞬の暗転。気付くと列車に乗り込んでいて、どこからか声が聞こえてきた。
「この国には様々な虫達がいるんだ。燃えぶどうトンボ、バタつきパンチョウ、黄金のヒツジバエ」
「えっ!?」
ウサギさんが驚いてていると一瞬の暗転。気付くと列車から降りていて、少し先に聖なる子どもアリスとハンプティダンプティの姿。
「ねぇ、さっき黄金のヒツジバエって聞こえきたけど、原作だと木馬バエだったよね?」
「あっ、それなんですけど現実世界にいるウマバエっていうのとヒツジバエって同じみたいな感じだから、このゲームでは黄金のヒツジバエになったみたいです」
「へー、そうなんだ」
「他にもハンプティダンプティのなぞなぞも原作とはちょっと違う感じになってます」
「へー、そうなんだ。どういう風に変わってるんだろ?楽しみだね。早速行ってみようよ」
「ちょっとウサギ、そんなにはしゃがないでよ」
ウサギさんの後を追うようにボク達はアリスとハンプティダンプティのところに辿り着いた。
「よくぞここまで来たな。ここまで来る事が出来た君の力を認め、君に力を与えよう」
[クラブの9級になったため、反転付与が出来るようになりました]
「反転付与で今際の国の魔物を倒せるようになります。私達が悪魔を留めておくのも、もう限界です。急いで他のアリス達に会って下さい」
「わかりました」
「それとハンプティダンプティから話があります」
【ハンプティダンプティの卵が割れた。ハンプティダンプティの卵は元に戻らない。ハンプティダンプティの卵は死んだ】
「君達にこのなぞなぞが解けるかな?」
「これって原作だとなぞなぞの答えが卵だよね」
「そうですね」
「でもこれは卵の謎解き……なぞなぞも原作と少し違うという事を知っていたなら、ハヤトさんはもちろん答えを知ってるんですよね?」
「えっーと、はい。知ってます。情報掲示板に載っていましたので」
「自分でもちょっと考えてみたいので、答え言うの待ってもらってもいいですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
……………
「なぁ、ウサギ。いつまで経っても答えが出ないなら、もう諦めてハヤトさんに答えてもらおうよ」
「えー、でも……」
「ウサギがアリスの話を好きなのはわかってるんだけど、ずっとこうしてるわけにもいかないだろ」
「………わかった。ハヤトさんお願いします」
悔しそうな表情を浮かべながらウサギさんはボクにお願いしてきた。
「なぞなぞの答えは生命の誕生です」
「お見事だ。君達にはこれをやろう」
[ハンプティダンプティの玉子焼きを手に入れました]
「悪魔の王サタンの子どもはすでに卵から孵っている。悪魔の王サタンの子どもを見つけ出せ。ヤツは殺人鬼だ」
「わかりました」
「じゃあ次は悪魔ベルゼブブを倒しに行こうぜ」
「うん……」
「ウ、ウサギ元気出して」
「うん……いつまでもクヨクヨしてたらダメだもんね」
「よし、じゃあ出発だ」
「あっ、すみません。みなさんの装備であれば悪魔ベルゼブブを倒せると思うので、みなさんで倒してきてもらえますか?ボクは次のなぞなぞを解いていきたいと思います」
「えっ………どういう事ですか?」
みんなが不思議そうな顔をしている。
「悪魔王サタンの子どもを見つけ出せって言ってたのって、なぞなぞだと思うんですよ」
「そう言われればそういう風にも聞こえるけど、ハヤトさんは解けるんですか?」
「多分………自信はないけどやってみようと思う。この答えは情報掲示板にも出てない事だし、最近リーク情報もなくてゲームの進行が停滞してるみたいだから時間はあるかなって思ってるから」
「そうですか……わかりました。そういう事であれば私達だけで悪魔ベルゼブブを倒しに行ってきますね」
「すみません。お願いします」
「よし、じゃあ行くよ!」
「はい」
「は、はい」
ウサギさんに昨日作ったバルスソードを手渡して、3人がいなくなるのを見届けてから、ボクはハンプティダンプティの謎解きを開始。
「悪魔王サタンは黄金の羊のモンスターだから、王の子どもも羊のモンスターって事なんだよなぁ。悪魔ベルゼブブも黄金のヒツジバエにしてるくらいだから、悪魔王の子どもは羊のモンスターって事だと思う」
ボクはスマホを取り出して、メモを書き始める。
【悪魔王の子どもは羊のモンスター】
「王の子どもの存在が鏡の国で明らかになったのにもきっと意味がある事だと思うんだよなぁ。鏡の国のアリスでは白の女王が羊として出てくるって事は……鏡写しで赤の女王も羊って事なのか!」
【赤の女王は羊】
「でもこれだけだと何かまだ物足りない。きっと何か見落としてるはずだ。たしかハンプティダンプティはヤツは殺人鬼だと言っていたな。殺人鬼は英語でMURDER。鏡写しにすればREDRUMでレッドラム。赤い羊だ!!」
【不思議の国の赤の女王が悪魔王サタンの子ども】
「悪魔王サタンの子どもをこれで見つけ出したぞ……でもこんな簡単に見つかっていいもんだろうか。卵の問題っていったらイースターエッグともいわれる隠し要素。ボクはまだ何かを見落としてる」
ボクは再び考え始めた。




