42話 黒崎カゲトラ
今日は寝不足もあって目覚めの良い朝とはならなかった。ストーリーも進み、朝一はやる事が増えた。
まずは大量生産用の畑を確認。1級ポーションの材料となる不死のリンゴと王のリンゴを採取。ポーションを作ってる余裕がないから材料だけがどんどん溜まっていく。
それから夢幻水晶(金白金鉱石)からゴールドプラチナメタルを3個採取。
それが終わったらモンスター育成の状態確認。無事に猫からゴールドアイズホワイトキャットに進化完了。
これで朝の仕事は終了。今日は寝不足だという事もあるから今日の段取りをしっかりと確認しておこう。
マーケットを検索してもサーベルウルフの牙は売り切れ。メリーさんに新しい武器でサーベルウルフを討伐してもらい、サーベルウルフの牙を採取。
その後はサーベルウルフの牙を使ってミスリルのハンマーとポンチを作り、ゴールドアイズホワイトキャットに与えて、モンスター育成の準備完了。これで大体午前中は終わる感じだな。
午後からはアイナさんの武器の材料を採取してきて、そのまま武器作りをする予定。でもアイナさんもアイドル活動の方が忙しい感じだから、武器作りは無理に急がなくてもいいかもしれない。
「よし、今日の段取り確認完了」
ボクはクランハウスに移動。
「おはようございます」
「おはようございます。ハヤトさん、ちょっとお話よろしいでしょうか?」
「はい、何でしょうか?」
「私の知り合いでもある人で、遠距離攻撃では2番手のクランのリーダーが話をしたいとの事だったのですが、大丈夫でしょうか?」
んー、どうしようかな。きっと第3章を進めるためのキーアイテムを欲しいっていう話だと思うんだよなぁ。
今のボクにはそんな余裕があるわけじゃないけど、ここで遠距離攻撃クランの人と繋がりを持つ事は大事な事でもあるんだよな。
それにメリーさんの知り合いって言ってるから、メリーさんの顔を立てるためにも一度会っておいた方がいいかもしれないな。
「大丈夫です。午前中はやりたい事があるので、午後からにしてもらえると助かります」
「それではそのように手配しておきます」
「お願いします。それとこれメリーさんの新しい武器です」
ボクはアイテム袋からアダマンナイトソードを取り出して、メリーさんに渡した。
「ありがとうございます」
「それでですが、第3章を進めるためのキーアイテムを作る際にサーベルウルフの牙が必要になったので、採取のお手伝いを頼みたいんですが、いいですか?」
「はい、大丈夫です」
ボク達はクランハウスを出て、ウサギの丘を抜けて、オオカミエリアに到着。ちなみにだが、ボクのクランは生産クランだから基本的に東の王国を基点として活動している。
「めちゃくちゃ人いますね」
サーベルウルフの牙は生産3種の神器でもあるミスリルのハンマーとポンチを作る材料でもあるため、サーベルウルフのエリアは人で溢れかえっていた。
「1体だけ倒せれば十分なんで、サクッといきましょう」
「かしこまりました」
メリーさんはいつものようにバフ魔法をかけて準備完了。するとそのバフ魔法に呼応するかのようにアダマンナイトソードが光始める。
「ちょっ、これは聞いてないんですけど」
見た事のない光景に多くの人の注目が集まる。でもメリーさんは人から注目される事はあまり好きじゃないみたい。
「一瞬で終わらせて、私は帰らせてもらいますからね」
一瞬で終わらすの言葉と共にメリーさんはサンダーラムの肉を食べて、さらにスピードアップバフを追加。
フッフッフッ、これで近距離攻撃の状態異常の世界は変わるぞ。
ズバッ
サーベルウルフは状態異常にかかる事なく一撃で死亡。
「それでは私は先に帰らせてもらいます」
逃げるように帰っていったメリーさん。一瞬にしていなくなったギャラリー。そして取り残されたボク。
ボクも注目浴びてみたいなぁ。どうしたらカリスマ性って出るんだろ。ってこんな事考えてないで、やる事をやらないと。
サーベルウルフの牙と毛皮を採取して、オオカミエリアを抜けてマイハウスへ。そのままサクッとサーベルウルフの牙とミスリルを使ってミスリルのハンマーとポンチを作成。
そのまま育成中のモンスターにミスリルのハンマーとポンチを与えて、進化の準備完了。
午前中の内に予定通り仕事を終わらせる事が出来た。むしろ少し早いくらいだ。ボクはクランハウスに戻り、遠距離攻撃クランのリーダーを待つ事にした。
「もしかしたら今後もお付き合いがあるかもしれないから遠距離攻撃絡みの知識も入れておくか」
遠距離攻撃の射程距離は30メートル。ロングショットという攻撃をすると距離は倍の60メートルになるが威力半減。
狙撃スキルを持っていると自動追尾で攻撃があたる。ブルーアイズホワイトタイガーの目があれば弱点も見えるみたいだ。
遠距離攻撃は基本的に弓で攻撃する。銃もあるみたいだが、まだ作る事は出来ない。
弓は状態異常特化の人もいれば、属性攻撃特化もいるし、火力特化の人もいるので、その人に合った弓を準備する必要がある。
「ハヤトさん、お待たせいたしました。お客様がお見えです」
「はい、今行きます」
応接室に入ると男性の姿。メリーさんの知り合いって言ってたから、てっきり女の人だと思ってた。
「はじめまして、ブルーオウルのリーダーの三上ハヤトです」
「シャドータイガーのリーダーの黒崎カゲトラです。でもって実は、はじめましてじゃないんだ。覚えてないかな?正式リリース初日に西の王国の酒場で話しかけてるんだよ」
あー、たしかにあの時、話かけてきた人のような気がする。っていうか黒崎っていう名字のこの人は……
「なんとなく覚えてる感じかな?あっ、俺リュウイチのいとこだから。リュウイチは本家で、俺のところは分家。昔から分家は本家を影から支える感じなんだよ」
あっ、そういう感じなんだね。こういうお家柄の事に深く関わると面倒な事になるからスルーしていこう。
「早速ですが、今日の用件というのは第3章のキーアイテムの事ですよね」
「あぁ、そうだ」
「すでにボクの方でも着手してますが、まだまだ時間はかかると思います」
「むしろ、俺はゆっくりの方がありがたい。亀白と争うつもりはないが、常に2番手にはいたいからな」
なんかこの人いろいろ苦労してそうだな。
「そういう事であれば、こちらもありがたいです。正直な話、第1章、第2章と駆け抜けてきて少し落ち着きたいと思っていたので、急かされるようであれば、今回の話は断ろうと思っていました」
「それならお互いにちょうどいい感じになりそうだな」
「そうですね」
「じゃあモノが出来た時はよろしく頼む。ハヤトくんも何か頼みたい事があったら気軽に言ってくれ」
カゲトラさんはスマホを取り出した。
「頼み事以外の事でも別に問題ないぜ。女だらけのクランだと何かと大変な事もあるだろう。相談に乗るぜ」
ボクもスマホを取り出し、カゲトラさんをフレンド登録。
「それじゃあ俺はこれで失礼するよ」
「はい、何かありましたらその時はよろしくお願いいたします」
話もスムーズに進み、カゲトラさんは帰っていった。
「お疲れ様でした。カゲトラさんの印象はどうでしたか?」
「いい人だけど、苦労人だし、何か触れちゃいけない影がある人って感じかな」
「私もそんな印象ですね。いい人ですけど、少し距離を置いておきたい人。ハヤトさんも近づき過ぎないように気をつけて下さいね」
「はい」
「それとですが……」
あっ、なんか雰囲気が……怖くなってきたよ……
「新しい武器ありがとうございました」
言葉と裏腹に怖いオーラ全開なメリーさん。
「あっ、いえ、気に入っていただけたのなら幸いです。あっ、ボクまだやる事あるので、これで失礼いたします。お疲れ様でした」
ボクは逃げるようにしてクランハウスを後にした。




