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95.アルバートの驚き

どういうことだこれは……」



 急いで海岸にやってきたアルバートは驚愕の声をもらしていた。なぜならば海岸の風景はいつもと変わらず民衆たちが楽しそうにしているからだ。

 いや、正確に言うといつもとは違う。なぜか陽気な音楽が聞こえ、屋台には通常よりも多くのお客が並んでいるのが見えた。

 そう、単純に盛り上がっているのである。疑問に思ったアルバートは顔見知りの商人を見つけたので声をかける。



「おい、やたらと繁盛しているみたいだが、一体何があったんだ?」

「ああ、アルバート様じゃないですか。それがですね。やたらと目立つ観光客が来て海岸を盛り上げてくれているんですよ」

「なんだと……」



 商人が指さす方向を見ると、赤髪の細身だが鍛えられた体躯の青年と地元の吟遊詩人が何かやら演奏をしており、その奥で可愛らしい女性が美味しそうに名産品を口にしている。

 その笑顔はとても幸せそうでアルバートもついつい何かつまみたくなってしまうようだった。



「いや、そんなことを考えている場合ではない」



 そう、アルバートが驚いたのはその二人ではないのだ。金髪の少年と銀髪の少女である。水着姿ではあるが、見間違えるはずはない。

 貴族のパーティーで見たことのあるアーサーとモルガンである。あの二人が民衆に紛れて海岸にいるのとである。そして、モルガンと目が合うと軽く会釈をされ、可愛らしい女性にあーんとされていたアーサーの耳元で二言三言ささやいたかと思うと、二人でこちらへとやってくる。



「本当は明日挨拶に行くつもりだったんだがな、海岸が楽しそうで待ちきれなかったんだ許してくれ。アルバートよ」

「いえ、そんなことはありません。お気になさらず……」



 アーサーに謝られて困惑するアルバート。それも無理はないだろう。彼が知っているアーサーは他人のことを一切気にしないクソ生意気なガキだったのである。



「アーサー皇子」

「ああ、わかってるって」



 そして横にいるモルガンにせっつかれたアーサーは頭を下げる。



「去年は民衆のことも考えないでわがままを言って悪かったな。これからはそういうことはしないし、お詫びにできることならば力にならせてくれ」

「……は、ありがとうございます!!」



 気まずそうに頬をかくアーサーを見て、アルバートは目の前の少年が本気で謝っていることがわかった。王族である彼が男爵にすぎない自分にだ。それはこのブリテンではありえないことで……

 だからこそ、胸に来るものがあった。



 この人は本当に変わったのだなと……



 そして、今の盛り上がっている海岸を見て思う。おそらくはあの赤毛の青年は城の宮廷楽師か何かでここを盛り上げるために連れてきたのではないのかと、もう一人の美味しそうに食べ物を食べている少女も同様だ。彼女の笑顔につられて客が屋台へと引き寄せられていく。つまりはアーサーはすでにアルバートへの詫びとしてこの海岸を盛り上げて見せるとアピールしているのではないのかと……

 もちろんすべてが勘違いでアーサーは完全に楽しむことを目的に来ただけなのだが評価が爆上がり中のアルバートはそうは考えなかった。



「それでは海水浴をお楽しみください」



 そう言って自分の勘違いを後悔したアルバートは帰っていく。後日この件がきっかけで、海岸での音楽祭が開かれるようになった上にそれまで不仲だと思われていたアーサーとモルガンが仲良く海水浴を楽しんだうえに、治療までしていたことがわかり恋人の聖地とよばれアイル領が発展するようになるのは少し先の話である。



書籍発売中です。

よろしくお願いします


また、新連載を始めました。


こちらも読んでいただけると嬉しいです。

『せっかく悪役領主に転生したので、ハーレム作って好き勝手生きることにした~なのに、なぜかシナリオぶっ壊してたらしく、主人公よりもヒロインたちに慕われ世界を救っていたんだが……』


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