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90.避暑地に行こう

 書籍版の影響でエルサレムをグラストンベリーに変更しています。

やはりエルサレムは色々あかんみたいです。




「暇だな……」

「暇ですねぇ……また、街でお買い物をして孤児院にでも行きましょうか?」



 建国祭も無事終わり、政治的なイベントもひと段落したこともあり、アーサーだけでなく城全体が落ち着いた雰囲気を出していた。

 忙しいのはライスと黄金小麦に興味を持った商人と食料を担当するハーヴェくらいなものだろう。そんな中でアーサーは死に戻る前は何をしていたかなと思いだす。



「そうだ……避暑地だ」



 前の人生では ゴーヨクの案内でどこぞの男爵が統治している海岸へといったものだ。あの時は付き合いだったから仕方なくという感じだったが、今回は違う。

 今のアーサーはグラストンベリーにケイといったこともあり心の許した人間と旅行へ行く楽しさを知っているのだ。



「ケイよ、よかったら一緒に旅行に行かないか? 海があってこの時期はすごしやすんだ」

「海……王都を出るということですか?」


 

 ケイの表情に一瞬迷いが生じたのをアーサーは見逃さなかった。しかし、最近人の心のわかる彼は次の手をすでに考えているのだ。



「ああ、魚がすごい新鮮で美味しいんだよ。そこでしか食べれない料理とかもあるし、一緒に食べたいと思ってさ」

「新鮮な魚にそこでしか食べられない料理……ですか!!



 その言葉にケイが目を輝かせて、幸せそうな顔をする……が、即座不満そうに頬を膨らませる。



「もう!! アーサー様は私が美味しいものの話をすればどこにでもついている区と思っていませんか?」

「え、違うのか?」

「違いますよ、私はアーサー様が命じてくださればどこにでもついていきます。だって、専属メイド(お姉ちゃん)ですからね」



 ふふっとちょっと得意げに胸をはるケイ。その姿にアーサーは胸が暖かいものに包まれるのを感じるが……



「でも、さっき微妙そうな顔をしてなかった?」

「あー、それはですね……実は海っていったことがなくてですね……泳げないんですよ」



 ばつの悪そうに言うケイだったが、平民である彼女は海に行ったことがないのは当たり前だった。商人や冒険者でもない限りこの街から出たことのある人間のほうが珍しいくらいなのである。

 そんな彼女を見て、アーサーはちょっと嬉しそうに言った。



「じゃあ、俺がケイに泳ぎを教えるよ。いつも色々と教えてもらってるからさ」

「ですが……」

「だって、ケイは俺のお姉ちゃんなんだろ? 家族だったらいつも甘えてばかりじゃおかしいからな。たまには俺にも甘えてくれよ。」

「アーサー様……」


 照れながらそんな可愛らしいこと言うアーサーにケイは我慢できずに抱きしめる。アーサーが姉として(姉ではない)認めてくれたことが嬉しいのと、自分のために何かをしようとしてくれたことが本当にうれしかったのだ。

 そして、アーサーも男の子として身近な憧れの女性にかっこいいところをみせれそうでわくわくとしているのだった。






「避暑地に行きたいですって……?」



 勝手に旅行にいってはまずいとアヴァロンにいるモルガンに許可をもらいにいったアーサーだったが、なぜか睨まれる。

 こいつ……こわっ!! と思いつつもアーサーは交渉する。



「あ、ああ……今は仕事も落ち着いているからな。問題はないだろう?」

「ええ、あなたの建国祭での活躍のおかげで、ブリテンの課題のひとつの食料問題は解決に向かっているわ。あとは身分制度や一部の貴族の横暴などはあるけれど短期的では解決しないでしょうから大丈夫だと思うけど……目的地のアイル地方は王都から離れている上に、男爵がおさめている領地で海以外何もないところよ、何をしに行くのかしら?」

「涼みに行くんだよ、避暑地に言ってそれ以外やることあんのか?」



 まるで働かないのとばかりのモルガンに苦笑しながらアーサーが答えると彼女はじーっと見つめてくる。

 それはまるで何かを探るようだ。



「な、なんだ……?」



 アーサーとて、もしかしたらケイの水着がみれるかも!! くらいの下心はあったが本当に後ろめたいことがないので睨み返すとなぜか彼女は視線を逸らす。

 しかもその頬はわずかに赤い。



「ならいいのよ。アイル地方となると片道半日はかかるわね……仕事の引継ぎをするから日程を決めるのは少し待ってくれないかしら?」



 何やら几帳面に並べられた書類を見つめながらそんなことを言うモルガンにアーサーが疑問を口にする。



「え? お前もくるの?」

「当たり前でしょう。だって、私たちは婚約者なのよ? わざわざ別行動なんてしたら不仲だと思われて付け入るスキをあたえるじゃない。それとも……私がいたら何か不都合なことでもあるのかしら?」



 ジロリとモルガンがにらむと室内の温度が比喩でなく何度か下がる。



「い、いや、そんなはずはないだろう。では日程が決まったら教えてくれ」



 そう言い残してアーサーは逃げるようにアヴァロンを立ち去る。



 くっそ、どうせ俺を監視するつもりだな……ケイと美味しいものを食べて自堕落にすごすはずだったのに……


 そう心の中で思いながら……




★★


「じゃあ、私がいない間にこの件を進めておいて。こっちは急ぎじゃないから後回しでいいわ」



 アーサーがやってきて五分で完璧な引継ぎの準備をするモルガン。いつものように無表情だが、付き合いの長い部下は彼女がとても機嫌がいいことに気づく。



「アーサー様がいらしたようですが何かあったのですか?」

「ええ……あの人と一緒に避暑地に行くことになったわ」

「おお、デートのお誘いですね」

「そう……なのかしら?」



 顔をわずかに赤らめてモルガンが嬉しそうにほほ笑む。その笑顔は相変わらず子供が見れば泣きそうになるが、付き合いの長い部下は本気の笑顔だとわかった。



「まあ、それはさておき、二つお願いがあるわ。一つ目はアイル地方についてくわしくしらべておいて。あのアーサー皇子のことだからわざわざ遠出するには理由があるはずよ」

「わかりました。それで、もう一つはなんでしょうか?」

「それは……」



 珍しく歯切れのわるい主に怪訝な顔をする部下だったが、彼女の形の良い唇から紡がれる言葉を聞いて納得する。



「その……男性が好ましく思う水着ってどんなものかしら?」



 年相応の悩みを持つモルガンに部下は思わず笑顔を漏らし、そして、アドバイスをする。あとは恋愛に関しては経験ゼロな彼女が大きなミスをしないように、護衛の人選をかんがえるのだった。

この作品の書籍が明日発売します。


手に取っていただけると嬉しいです。ケイが……でかい……



また、新連載を始めました。

こちらも読んでいただけると嬉しいです。


『せっかく悪役領主に転生したので、ハーレム作って好き勝手生きることにした~なのに、なぜかシナリオぶっ壊してたらしく、主人公よりもヒロインたちに慕われ世界を救っていたんだが……』

https://book1.adouzi.eu.org/n0762jc/1


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