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69.パーティーの食事

商人のパーティーとはいっても彼らは貴族とも交流がある。孤児院などで行われるパーティーとは違い、皆が皆彼ら風であるが正装をまとっており、下品にならないくらいに華美にされた装飾や、華やかな音楽が流れている会場は貴族たちのそれとは何ら遜色がない。

 むしろアーサーが来るということでいつもより気合がはいったその姿は並みの貴族ならば感嘆の吐息を、平民を見下している貴族ならば悔しそうに顔をゆがめるようなものだったのだが……



「なあ、ケイ……ご飯はまだみたいだな……」

「そうですね……ちょっと残念ですが、とりあえず飲み物だけでも頂いてきますね」



 まだ並んでいない食事にがっかりする花よりも団子なアーサーとケイだった。そばを離れたケイの背中を見送って、特に知り合いもいないし、どうしていようかとあたりを見回していると、何人かは興味深そうに、何人かは気にも留めないで談笑をしているのが目に入る。



 あー、こうやって放っておかれるのも悪くないな……いつもは誰かしらそばにいたからな……せっかくだし、ケイが戻ってきたら誰かに話しかけてみるか……



 そう思ってあたりを観察していると数人の商人がこちらを凝視して目が合うと頭を下げてきた。その商人たちはこのパーティー内でも、特に裕福なのか、装飾品が多い。

 いったいなんなのだろうと疑問に思っていると声をかけられた。



「アーサー様本日はパーティーにいらしてくださりありがとうございます」

「ん……? エルンか。今日はいつもと違ってドレスなんだな。似合っているぞ」



 アーサーに声をかけてきたエルンは当然のことながら、メイド服ではなくドレスである。貴族の着るようなものとは違うが鮮やかな緑色の布を使った美しいドレスである。



「さすがですね、アーサー様、こちらのドレスは外国で流行っている最新式ものなんです。もしもお気に召しましたら、モルガン様にお送りいたしますよ」


 

 アーサーに褒められたのが予想外だったのか大きく目を見開いたエルンだが、即座にドレスの布教に走るのはさすがは商人の娘というところだろう。

 もちろん、世間知らずのアーサーが流行何て知っているわけはなく、トリスタンに習った通りに会話に困ったので服装を褒めただけである。

 トリスタン流モテ術。とりあえず女の子の服やアクセサリーを褒めよ!! である。



「それにしても、なぜアーサー様は本日はそのような服装でいらしたのですか?」

「ん? ああ、それはだな……」



 せっかくだからそちらにあわせてみたんだ……と説明する前に、エリンがまわりをみまわしてからなぜか口を開く。



「ああ、なるほど……さすがはアーサー様です。試験はもう始まっているということですね?」

「は……?」

「誤魔化さなくても大丈夫ですよ。アーサーさまはお忙しいということは知っています。王族であるアーサー様の正体に気づく程度の選別眼や情報網を持っていなかれば、あなたにはついていけない……だから、有力な商人を見つけるためにあえてこの格好をしていた。そういうことでしょう?」

「あ、ああ……そんなところだ」



 なんかよくわからないことを得意げな笑みを浮かべて言っているが、否定するのもかわいそうなのでとりあえず頷くアーサー。どや顔で語っているエリンが恥をかかないようにした優しい皇子なのである。

 そして、何を話そうかと考えているうちにドリンクを持ってきたケイが戻ってきた。流石は専属メイド、アーサーの救世主である。 



「エリンさん。本日は私までご招待ありがとうございますー。本日は何やらご馳走もあるそうですね、アーサー様と一緒に楽しみにしていたんですよ」

「ああ、めずらしいものが食べれるっていうことで期待はしていたが、ケイほどじゃないぞ。さすがにお昼を抜いたりはしていないからな」

「もう、それは内緒だって言ったじゃないですか。アーサー様だっておやつを食べなかったじゃないですか。それに私がたくさん食べれるようにしているのはアーサー様に美味しいものがあったら教えるためなんです。だからこれも大事なお仕事なんですよ!!」



 アーサーの言葉にケイが顔を真っ赤にする。そりゃあ、ケイも外国と交流の多い商人の用意したごちそうを食べられると思って少し……いや、かなり楽しみにしていたのは真実である。

 だけど、アーサーにたくさんの種類の美味しいものを食べてほしいという姉心もあるのだ。それをこんな単なる食いしん坊だと思われてはちょっと心外だとばかりにほほを膨らます。

 実に微笑ましい光景である。



「なるほど……やはり、アーサー様は私たちの意図を見抜いてらしたのですね……私たちが警戒しているブリテンの危機を……」

「は?」



 確かに食料問題に関しては話そうと思っていたが……



 またよくわからないことを言い始めたエリンにどういうことか問いただそうとした時だった。奥の扉が開いて台車にいくつもの料理が運ばれてくる。

 宮廷の料理とも負けない豪華な見慣れた料理と、後半は奇妙な料理だった。白い粒のようなものが大量に炊かれており、そのまわりに調理されたお肉やおさかななどが大量においてあるのだ。

 そして、コック服に身をまとった褐色の男はアーサーと目が合うと白い粒が大量に入った皿とおかずをもってこちらへとやってくる。



「な……、これは話がちが……」

「ああ、あなた様がアーサー皇子ですね。お噂はかねがね聞いております。早速ですが、わが地方の料理を召し上がっては頂けないでしょうか?」



 エリンが何かを言う前に褐色の男は料理をアーサーたちに差し出した。香ばしい匂いと共に「くぅーー」と可愛らしい音がなったが、それはアーサーだったか、ケイだったかはわからない。だけど、それは奇妙で見慣れない料理だったが、エルサレムやドルフで珍しい食べ物や酒を経験しているアーサーにはとても魅力的に映ったのである。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 向こうと言えばリゾットもありますし、わりかし現代だと米は強さのひとつですよね。日本みたいにバカみたいな気候の差がうまれないのも育ちやすさでもある
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