34.アーサーVSコカトリス
「ふははは、もう少しだぞ、クソ鳥が!!」
「クェェェ!!」
威勢の良い掛け声ともに常人ならば即死するはずの毒沼に入ってきたアーサーにコカトリスが驚愕の鳴き声を上げる。
それも無理はない。それは本来ならばありえない光景なのである。もとは湖だった毒沼の水はもはや完全にコカトリスの血によって支配されていた。
本来ならばコカトリス以外の生き物は入るだけで息絶えるのである。現に毒沼に踏み入れた彼の足はじゅわっという音をたて、靴が溶ける。
だが、アーサーはそれに気づいてすらいない。
アーサーの今の状況を説明するとこんな感じだ。
アーサーは毒に侵された。即座に浄化した。アーサーは毒に侵された。即座に浄化した。それを一秒に五回ほど繰り返しているのである。まさにチートである。
「クエェェ!?」
「すごい……あれだけの毒を受けて何ともないっていうの……? ありえない……それに大丈夫だからってあんな毒の沼地に躊躇なく入り込むとは、なんて勇気なの!! これが聖王の後継者なのね……」
「なんと!! あの猛毒の中勇敢に突き進むとは……これがアーサー様のお力…そして、器なのか……まさに英雄的!!」
想像もしなかった光景への驚きから、やがてその表情が恐怖に染まっていくコカトリスと、勝手にぐんぐんアーサーの評価をあげるエレインとトリスタン。
もちろん、アーサーは何も考えていないだけなのだが、エレインたちにそんなことはわからない。
「クェェェェ!!」
「うおおおおお」
それは想像外の生き物にパニックに陥ったコカトリスの反射的な行動だった。
本来は攻撃手段ではない蛇の尾がアーサーの足を払った結果、走っていたアーサーは凄まじい勢いのままコカトリスにつっこんでいくことになり、何かを掴もうとしたその手が、偶然尻尾の根元を掴んだ。
ぶっちゃけコカトリスが逃げ出せば身体能力は常人に過ぎないアーサーは追いつけないのだが、毒沼を躊躇なく走ってくる彼に、コカトリスが本能的な恐怖を感じ混乱したのである。
「なんかよくわからんけど浄化ぁぁぁぁぁ!!」
そして、一度つかんでしまえばあとはアーサーの得意分野である。とりあえず毒だから浄化すればいいだろという精神の元、コカトリスの全身を治癒の光が包みその毒が消えていく。
「クェェェェェ!!?????」
「ふははははは、お前ごときが俺に勝てると思ったのか!! あとで美味しく食べてやるからな!!」
コカトリスは何とか振りほどこうと暴れるが徐々にその勢いが弱っていく。力の源である毒が消えていき苦しんでいるのである。
何とか体内の毒を復活させようと毒沼にコカトリスが顔を突っ込もうとした時だった。
「アーサー!! あなたにばっかり辛い想いはさせないわ!! 浄化!!」
アーサーが勝利を確信していると、エレインまで浄化を始める。その範囲は彼の者よりも広く、湖の水ごと浄化されていく。
エレインがコカトリスの回復を防いだのである。
くっそ、この女……俺だけに手柄を立てさせないつもりだな!!
だけど、そんなことに一切気づいていないアーサーが睨みつけると、エレインはやりとげたとばかりに満面の笑みで頷いた。悲しいすれ違いである。
エレインが湖を浄化し、アーサーがコカトリスを浄化することによって、あたりに漂っていた毒がどんどん弱くなっていき……
「今ですね!!」
「くえぇぇぇぇぇ……」
毒の影響がなくなったタイミングを見計らいトリスタンの矢が、コカトリスの眉間を見事貫いたのだ。痙攣していたコカトリスは徐々に動きが鈍くなっていき、やがて、動かなくなった。
「よくやった、トリスタン!! ふははは、俺の勝ちのようだな!! 『私なんかよりアーサー様の方が優秀ですと……』ぐぇぇぇ!!」
部下の手柄は俺の手柄というジャイアニズムを持っているアーサーである。これで、この女も負けを認めただろうと、勝ち誇った顔で、エレインに対して笑いかけると、衝撃と共に、柔らかいものに包まれる。
なんと、エレインがアーサーに飛びつくようにして抱きついたのである。むろんひ弱なアーサーではその衝撃を支えることができずにばっしゃんと泉の中で倒れこむ。
「あんなところにつっ込むなんて何を考えているのよ!! いくらあんたでも死んじゃうかもしれないのよ!!」
文句を言おうとするアーサーだったが、やたらと必死の形相のエレインに思わずビビる。
こいつ俺に負けたのが悔しかった……というわけではなさそうだな? どちらかというとケイがかつて向けてくれた心配という感情のような気がする……
前の人生の思い出し、つい、強く言えなくなってしまったアーサー。
「なんだかしらんが、俺がこの程度の毒で死ぬはずがないだろう……」
「だからって……こんな無茶をする必要はないでしょうが!! あなたが勇敢で優しくてすごい人だっていうことはわかってる!! だけど、あんたが死んだりしたら悲しむ人だっているのよ!! 無事で本当によかった……」
「うぐぐぐ……」
力強く抱き締められて、柔らかいものに包まれて息ができなくなる。
この女……負けを認めないからって俺を殺すつもりか!? ふざけんな!! って 力つよ!!
必死に引き離そうとするが、微動だにしない。痛みは感じないが窒息したらどうなるんだかと思っていると、からかうようなトリスタンの言葉が聞こえてきた。
「ふふ、聖女様は積極的なようですね。実にうらやましい……新たな英雄の誕生を喜ぶのもよいですが、とりあえずはコカトリスの後処理をするのが先決では?」
「え……? なっ、別にそういうんじゃないわよ」
「ごはぁ……やっと息ができる」
ばっと、アーサーから距離を取るエレイン。アーサーがぜぇぜぇと息を整えなていると視線を感じた。
エレインは何故か彼を睨んで顔を真っ赤にしながらこう言った。
「べ、べつにあんたの事なんか好きじゃないんだからね!!」
そんなん知ってるわ!! そう思いながら息を整えるのだった。だけど、二人に英雄と呼ばれ不思議と胸がポカポカと暖かくなったのだった。
アーサー君の評価が勝手に上がっていく……
十位の壁があと一歩なのに高い……あと、30ポイント……
頑張ります。
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