33.森の主
しばらく、トリスタンと共に森の奥へと向かっていると、あたりにゴブリンの死体が転がっている。何者かが倒したのだろう。
死体にかけよったトリスタンはゴブリンを観察して一言つぶやく。
「まだ、痙攣していますね……この先で誰かが戦っているようですよ。私から離れないでくださいね」
「ああ、わかった」
彼の言葉通り、しばらく進むとゴブリンと何者かの言い争うような声が聞こえてきた。急いで向かった先は、木々が開かれており、遠くに湖が見える。
そこでは、エレインとゴブリンが対峙していた。
「トリスタン!!」
「いえ、大丈夫そうですよ。攻撃的な聖女というのも美しい……」
アーサーが援護を命じるがなぜか弓を構える様子はない。その結果はすぐにわかった。
エレインは襲ってきたゴブリンの一撃を交わすと、そのまますれ違いざまに、メイスでゴブリンの頭を叩き潰す。
血と共に脳漿が飛び散っているのが見える。
「いや、あの女、無茶苦茶強いな!!」
鮮やかにゴブリンを始末する姿を見て、ちょっとビビるアーサー。一瞬だが対抗心よりも恐怖心が勝ってくるのであった。
「アーサー皇子!? なんでこんなところに……まさか……私を心配して……」
彼の情けない叫び声でこちらに気づいたエレインは驚きで目を見開いたあとに、何かを勘違いしたのか頬を赤らめてほほ笑む。
これが街中ならば、可愛らしく見えるのだが、森の中で、しかも、ゴブリンの返り血と脳漿のついたメイスを手にしていることもあり、何とも言えない迫力があった。
気分は殺人鬼の殺人現場に出会ってしまった感じである。
この女……こっちを見て笑ってやがる。邪魔をしたら次は俺をこうするって事なのか……?
挑発されたと感じ冷や汗を流すアーサーだったが、泉の方を見て思わず表情が固まる。
「アーサー皇子……救援は嬉しいですが、これは我が国の問題です。この先にいるのは五大害獣『コカトリス』であり、あなたでも身の危険が……」
「いいからさっさと倒すぞ!!! ああ、鳥がぁぁぁ!!」
「アーサー様!?」
軽く咳ばらいをしたエレインが何かを言っているがアーサーの耳には入らなかった。彼の目に映ったのは毒沼と化した湖の中心にいる森の主らしき、鳥の頭を持ち、胴と翼はドラゴン、尾は蛇の魔物であった。
そして、周りには森の主の毒にやられたであろう、極ウマ鳥たちが泉の上にぷかぷかと浮いていたのだ。
ケイがあんなに嬉しそうに食べていたんだぞ。俺達がお土産としてもらうんだよ!! こいつ……なんてことを!!
これ以上極ウマ鳥がやられてはたまらないと駆け出すアーサー。
、
「まさか……私を助けるために……、大丈夫よ。アーサー皇子!! 私はあくまで偵察に……」
「これ以上近づくのは危険です、アーサー様!! そんな、私の矢が!!」
何かを勘違いしたエレインの制止を振り切り、焦ったトリスタンがコカトリスに矢を射抜くが……矢はコカトリスに近付く前に腐っていく。
これが五大害獣コカトリスの毒である。ただ近付くだけで全てを殺す。かつて都市一つ滅ぼした五大害獣は伊達ではない。
この化け物を倒すのならば遠距離から強力な魔法で倒すか、その強力な毒を全て無効化するした上で攻撃をするしかないのである。
「クエェェ!!」
怒りに身を任せて駆け出してくるアーサーを見て、コカトリスは愚かな獲物がやってきたとばかりに嘲るように鳴き声をあげる。
普通の人間であれば、足を踏み入れるだけで致死量の毒により息絶える沼地と死んでいるはずだった。しかし、治癒能力に絶対の自信を持つアーサーは気にせずに走り続ける。
実情はともかく、自らの身を顧みずに毒沼地に入り五大害獣と相対するアーサーの姿はエレインとトリスタンには英雄のように見えた。
アーサーVS五大害獣です!!
本来ならば強力な魔物ですが、状態異常無効のアーサーとはどうなるか……?
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