29.宴会
アーサーが目を覚ますと、真っ先にケイの笑顔が目に入った。
「おはようございます。アーサー様、よく眠れましたか?」
「ああ……ありがとう」
目を覚ますと、ケイの笑顔が見えてちょっとドキドキしてしまったアーサー。まさに思春期である。
「疲れがとれたようで何よりです。ちょっと失礼いたしますね」
そんな彼の心情に気づいていないのか、ケイはアーサーの身体をおこすと、横になってできてしまった服のしわを伸ばして、櫛で彼の髪を整える。
窓から外を見るとすっかり日が落ちているようだ。長い間ケイの膝を借りてしまい大変だっただろうに彼女はそれを微塵も感じさせずにほほ笑んだ。
「準備ができましたよ。では。宴会に行きましょう」
「そうだな……って、主役が寝ているのにもう始まっているのかよ……」
ここからでも騒いでいる声が聞こえてくる。まさか、俺よりもエレインを主役扱いしてやがるのか? そう思い少しイラっとする。実に小物である。
拗ねているアーサーを見て、ケイは優しく宥める。
「まあまあ、それだけ嬉しかったんですよ。それに、村の人々もアーサー様に感謝していると思いますよ」
「本当かね……あいつらは聖女様の方が好きなんじゃないか?」
「そんなことありませんって。それにここでしか食べれない極ウマ鳥の料理もあるそうですよ。私も楽しみなんです。行きま……」
ケイが喋っている途中で、くぅーと可愛らしい音が鳴り響く。アーサーではない。となると……彼女の顔を見ると、見事に真っ赤に染まっていた。
目が合うと彼女は自分の顔を手で覆いながら言い訳する。
「違うんです。これはですね……」
「俺なんて気にしないで先に宴会に行っていてよかったのに……」
「アーサー様が一生懸命頑張って休んでいるのに、そんな事できるはずないじゃないですか、だって、私はあなたの専属メイド(姉)なんですから」
「ケイ……」
そうだよ……彼女は牢獄に入れられた彼をずっと支えてくれていたくらい忠義を重んじるメイドなのだ。ケイにとってはこれが当たり前なのだ。
彼女の優しさを改めて実感して、アーサーは思わず涙を流しそうになる。それを誤魔化すように彼は軽口をたたく。
「待たせて悪かった。料理がなくなる前に行こうか、俺の専属メイドは腹ペコみたいだからな」
「あ、そこは触れないのが優しさですよ、アーサー様!!」
可愛らしく頬を膨らませる彼女に暖かい気持ちになりながら、アーサーは部屋を後にする。だけど……彼には一つの不安があった。
それは前の人生での話だった。今回のように治療をして、同様に宴会に呼ばれたときの話である。彼が入った途端だった。場の空気が重くなったのである。
当時のアーサーにはわからなかったが、あれは彼らが自分に気を遣ったという事なのだろう。別に勝手に気を遣って委縮するのは気にしない。
だけど、宴会を楽しみにしているケイに気を遣わせるようなことになるとしたらいやだな……そんなことを思うのだった。
「おお、アーサー様だ!! ありがとう!!」
「我が村のもう一人の救世主だぁぁぁ!!」
「こら、トリスタン!! いつまで裸踊りをしているんだ!! アーサー様に汚物を見せるつもりか!!」
宴会が開かれているという村長の家に一歩踏み入れると、歓声が響く。
「は……?」
その様子にアーサーが、ポカンとしていると、隣のケイが「私の言った通りでしょう」とばかりにほほ笑んだ。
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